かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生

岡部保健師
最新号(令和5年9月)
1月 冬こそ大切!腰痛のケア
2月 たばこは万病のもと 
 3月 第14次労働災害防止計画
4月 労働安全衛生法の法改正について
5月 備えあれば患いなし?!熱中症対策
6月 健診の結果は貴重な財産?
7月 作業中、いつもと様子が違うと思ったら。
8月 1年に1回はストレスチェックで気付きを
 9月  労働現場における歯の健康診断
 10月  
 11月  
12月  

9月

労働現場における歯の健康診断

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。毎日本当に暑い日が続いていますが、皆さまお変わりないでしょうか。「8020運動」という取り組みを耳にしたことはありますか?これは「80歳で20本以上の歯を保とう」という国が実施している歯科口腔保健施策の一環です。

8020達成者は5割以上
8月に厚生労働省が発表した調査結果では、8020達成者は51.6%で、前回調査の平成28年は51.2%でしたので大きな変化はありませんでした。8020運動を開始した1989年は7%でしたので、30年以上が経過し歯科衛生に対する考えが大きく変わってきたようです。いつまでも自分自身の歯で食事がとれることは、心と体の健康に重要な関連があります。しっかりと栄養を摂取できることで身体の健康につながり、美味しい食事や好きな物を食べられることで気持ちも満たされていきます。

定期的に歯科健診を受診していますか?
同調査によると過去1年間に歯科健診を受診した人の割合は58.0%、男性より女性の方が、受診率が高い傾向にあります。定期的に健診を受けることで、虫歯の早期発見、歯石除去、歯周病予防ができ口腔内を清潔に保つことができます。少なくとも1年に1回、理想は3か月に1回の定期健診をお勧めします。

8020のためには、毎日のブラッシング
歯と歯ぐきの間には「歯肉溝(しにくこう)」という溝があります。健康な歯ぐきの場合は、歯肉溝の深さは1〜2mm程度です。しかし、磨き残しや間違ったブラッシングが原因で歯肉溝に歯垢がたまり、細菌により歯ぐきが炎症を起こし、溝が徐々に深くなっていきます。この深くなった歯肉溝のことを「歯周ポケット」と呼びます。
歯周ポケットが4o以上の場合に歯周病と診断をされますが、厚生労働省の調査結果をみると、年代が上がるについて歯周ポケット4mm以上の割合が増加しています。
15〜24歳は2割、25〜34歳では3割を超えています。歯周病が進行すると歯が抜け落ちたり、全身の健康状態に影響が及んだりする可能性があります。若いうちからの歯周病対策が重要です。正しく毎日ブラッシングをすること、歯と歯の間は歯ブラシでは届かないところもあるため、1日1回は歯間ブラシやデンタルフロスも使いケアをすることがポイントです。
労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断
労働安全衛生法第66条第3項では、歯等に有害な業務に従事する労働者に対した、歯科医師による健康診断を実施し、その結果を所轄労働基準監督署長へ報告しなければならないと定められています。
歯等に有害な業務に従事する労働者とは、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りんなど歯または支持組織に有害な物のガス、蒸気、粉じんを発散する場所に常時従事する者をいいます。メッキ工場、バッテリー製造工場、化学工場などで多く見られます。
対象業務に常時従事する労働者がいる場合は、雇い入れ時、配置転換時、対象業務に従事後6カ月以内ごとに1回は、歯科医師による健康診断を実施しなければなりません。皆さんの職場ではこのような物質の取扱う業務はありますか?いま一度、健康診断の必要性を確認し、心や体だけでなく歯の健康も保持増進していきましょう。

引用・参考文献
令和4年歯科疾患実態調査
https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf

有害な業務における歯科医師による健康診断等の実施の徹底について
https://www.mhlw.go.jp/content/000760800.pdf


8月

1年に1回はストレスチェックで気付きを

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。毎日暑い日が続いていますが、皆さまお変わりありませんか?体温と同じもしくはそれ以上に高い気温が続くと、さすがに体も辛いですね。「日中は出来る限り外出を控え…」と熱中症の注意喚起をニュースなどで耳にしますが、できることなら外出したくないと思う今日この頃です。
先日、ある企業が2022年度に実施したストレスチェックのデータを分析した結果がプレスリリースされていました。2022年度にストレスチェックを受験した41万人の結果を分析したところ、身体的負担度や疲労感は前年度に比べて悪化、安定報酬や役割葛藤、情緒的負担は前年度に比べて大きく改善していました。皆さんの感覚と比較して、この結果はいかがでしょうか?2015年12月からストレスチェックの実施が法制化され7年が経過します。すでに実施している事業所も多いかと思いますが、ストレスチェックについて再確認をしていきましょう。

1.ストレスチェック制度
2015年12月に労働安全衛生法が改正され、常時雇用する労働者50名以上の事業場では年1回のストレスチェックの実施が義務づけられています。ストレスチェックでは、労働者が「ストレスに気づく」ことを目的に実施され、メンタルヘルス不調の未然防止や自身のストレス状況を振り返りセルフケアに役立てることを目指しています。なお、常時雇用する労働者が50名未満の事業場ではストレスチェックの実施は努力義務となっていますが、社員のメンタルヘルス対策として、実施している事業場も多くあります。

2.ストレスチェックの項目
ストレスチェックの調査項目は、@仕事のストレス要因、A心身のストレス反応、B周囲のサポートの3つの領域が設問項目に含まれている必要があります。
ストレスチェック57項目版もしくは簡略版23項目版を厚生労働省が推奨していますが、最近ではハラスメントや働きがい(ワークエンゲージメント)などの項目を含めた80項目の調査票も主流となっています。
ストレスに関するネガティブな要因以外にも、ポジティブな要因も測ることで前向きなメンタルヘルス対策を検討することができるようになります。
業務の合間でストレスチェックを実施する方も多いと思うと、時間も限られているなかで回答をするため項目数の多さや少なさも大切ですが、どのような項目や指標を測定できるのか定期的に見直していき、ストレスチェックの質を高めることも重要です。

3.職場におけるメンタルヘルス対策
基本的な内容ですが、職場においてメンタルヘルス対策を実施する上で重要な考え方として「4つのケア」があります。
@セルフケア:労働者自身がストレスに気づき対処
する。(例:ストレスチェック)
Aラインケア:管理監督者が職場の具体的なストレ
ス要因を把握し改善すること。(職場環境改善、職場内のコミュニケーションにより課題抽出)
B事業場内資源によるケア:産業医等の産業保健ス
タッフがセルフケア、ラインによるケアの実施を支援するとともに、教育研修の企画・実施、情報収集・提供等を行うこと。
C事業場外資源によるケア:メンタルヘルスケアに
関する専門機関を活用すること。(例:外部EAPや産業保健センター、産業保健総合支援センターなどの活用)

これらの4つのケアを実施する上で、(1)心の健康づくり計画を策定し、(2)4つのケアの分類でどのような事業を実施するか、実施した事業を評価、修正しながらPDCAサイクルを展開することが、職場におけるメンタルヘルス対策には重要です。
すでに実施している事業場も多いと思いますが、ストレスチェック制度が法制化されてから内容の見直しをしていないという場合は、この機会に実施内容を確認し、評価、修正されることをお勧めいたします。

参考資料:職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00002.html



7月

作業中、いつもと様子が違うと思ったら。

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。6月からすでに30度を超える暑い日が続いていますが、皆さまお変わりありませんか?例年では7月中旬頃に梅雨明けとなります。梅雨明け後はますます暑さが心配になるところですが、熱中症への備えは十分にお済みでしょうか?毎年のことですが、熱中症の症状や対処法など今一度ご確認ください。

1.熱中症の発生状況
厚生労働省がまとめた労働災害の発生状況によると、熱中症による月別死傷者数では図に示すとおり7月から死傷者数、死亡者数ともに上昇傾向となります。外気の暑さが厳しくなるにつれて、熱中症の発生頻度も高まります。時間帯別の熱中症の死傷者数では、15時台が最も多く、次いで14時台となっています。朝から作業を開始した場合、疲労の蓄積や暑さのピークによる影響などが考えられます。また、作業中に限らず帰宅後に体調が悪くなり病院に搬送される事例もみられます。作業中に問題がなかったとしても、帰宅後も十分に体調確認に気を付ける必要があります。

2.熱中症の症状
熱中症は、体の体温が上がり「高体温」になること、水分や塩分のバランスがくずれ「脱水」になることにより生じる様々な健康障害の総称です。めまい、倦怠感、けいれんなどの症状があります。
重症度T:顔面の蒼白、脱水、吐き気、めまい、立ち眩み、筋肉痛、こむら返りなどの症状が出現します。
重症度U:口の渇き、めまい、頭痛、イライラ、倦怠感などの症状があります。
重症度V:意識がない、けいれん発作、身体がとても熱い(それなのに汗をかいていない)。

3.熱中症?と思った時の対応
(1)すぐに涼しい場所に移動する(屋内であれば空調が効く部屋、屋外では日陰)。
(2)衣服を緩め、体を冷やす(腋の下、脚の付け根、頸部など太い血管がある部分)。
冷却グッズが無い場合は、全身に水をかけて急速冷却する方法もあります。
(3)水分と塩分を摂取する。すでに熱中症になっているときは、経口補水液を!
(4)休んでいる間は必ずそばで見守る!
(5)症状が改善しない、もしくは悪化する場合はすぐに救急要請を。

4.熱中症から命を守る行動を!
熱中症対策は仕事中だけではなく、前日や仕事前に確認することも大切です。
(1)前日:飲酒は控えめに。睡眠は十分にとる。
(2)仕事前:睡眠、食事、体調確認(特に二日酔い、下痢の症状)、熱中症警戒アラートやWBGTを確認、汗をかくまえから水分・塩分を摂取する。
(3)水分・塩分の補給、こまめに休憩、独りで作業をしない、体調に問題がないかお互いに声を掛け合う。

熱中症の予防には、個人の体調管理と職場内でのコミュニケーションによる早期発見・早期対応が大切です。「体調は問題ないか?」「休憩はとっているか?」「水分・塩分は足りているか?」など、暑熱環境で作業をする場合は、特に顔を見ながらコミュニケーションをとることを意識してください。
今年の夏も猛暑が予想されます。屋内・屋外どこにいても熱中症の心配がある季節ですが、正しい知識をもって、適切な対策・対処ができるよう準備を整えましょう。

(参考)厚生労働省:働く人の今すぐ使える熱中症ガイド
https://neccyusho.mhlw.go.jp/download/
短い動画による説明もあるので、社内教育にも分かりやすい資料となっています


6月

健診の結果は貴重な財産?

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。沖縄地方・奄美地方では5月18日に梅雨入りが発表されました。昨年と比べると数日遅い梅雨入りだったようです。6月中旬頃には関東でも梅雨入りを迎え、梅雨の晴れ間が待ち遠しいと思うことも増えてくるのかなと思います。
春の時期に定期健康診断を実施する企業が多いようです。皆さんは健康診断の結果が届いたら、すぐに中身を確認していますか?私が以前に出会った社員さんは、過去何十年分の健康診断の結果票をひとつのファイルにまとめて「自分の歴史です。」と大切に保管されていました。健診の結果は、ご自身の健康を掲示的に確認するための貴重な財産ですね。今月は健康診断の結果のなかでも血糖値についてご紹介します。血糖値は糖尿病を診断する指標のひとつです。糖尿病というと太っている人、不規則な生活をしている人がなりやすいという印象があるかもしれません。ですが、見た目は痩せている方、規則的な生活をしていても時として血糖値が上昇することがあります。皆さんも健診結果の「血糖値」の項目を確認してみましょう。

1.糖分(糖質)は大事なエネルギー源
糖分は体や脳のエネルギー源で、人間が生きていくために必要不可欠な栄養素です。糖分が不足していると低血糖症状(冷や汗、動悸、強い空腹感、脱力感、めまいなど)の症状が現れる場合はあります。一方で糖分を過剰に摂取していると血液中の糖が増加し、高血糖状態になります。高血糖状態=糖尿病と診断されるわけではありませんが、高血糖状態がながく続くと糖尿病などのさまざまな病気の発症につながります。

2.血糖値の基準値
血糖値は、食事や糖分を含む飲み物の摂取状況が影響して数値が変動します。例えば午前中に健康診断がある時は「朝食は食べずに来てください」と注意事項があると思いますが、この一つの理由として血糖値の測定が関わってきます。健康診断など空腹状態で血液検査をしたときは「空腹時血糖値」を測定しています。空腹時血糖値の正常値は110mg/dl以下です。110mg/dlを超えると境界型といわれる糖尿病予備軍、126mg/dl以上は糖尿病型と定義されています。空腹時血糖値が126mg/dl以上という方は、早めにかかりつけ医や近隣の内科クリニックなどを受診して精密検査を受けてください。

3.血糖値が上がる原因のひとつは糖質のとりすぎ
糖分の過剰摂取:厚生労働省は日本人の食事摂取基準の指針として1日の総摂取カロリーのうち50-65%を炭水化物(主に糖質)から摂ることを目標量としています。エネルギー源として必要不可欠な糖質は、過剰に摂取すると高血糖の原因になります。炭水化物には、ご飯、麺類、イモ類、砂糖など甘味があります。
丼物や麺類など主食メインの食事に偏っていると食事のたびに血糖値が跳ね上がります(血糖スパイク)。
また、砂糖が入ったお菓子類を時間間隔を空けずに食べ続けていると一日中血糖値が高い状態が続きます。

4.食事以外で高血糖になりやすい生活習慣
@高いストレス
心や体にストレスがかかると、血糖値を上げるホルモンが分泌され、血糖値を下げるホルモン(インスリン)に対する感受性が低下し、インスリンがたくさん分泌されていても血糖値が下がりにくくなります。またストレスを解消する手段として食事やお酒で気持ちを紛らわすことがありますが、これによって糖質の過剰摂取になり高血糖状態になることがあります。
A運動不足
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動をおこなうと、筋肉に取り込まれたブドウ糖や脂肪酸がエネルギー源として使われます。食事の後にウォーキングを行うと食後血糖値の上昇を抑える効果があると言われています。運動をするために、まとまった時間をとることが難しい方は、食後に15分程度体を動かすことをお勧めします。
B睡眠不足
睡眠不足が慢性的に続くと、空腹時血糖値が上昇、インスリンの分泌能力が低下すると言われています。特に睡眠時間が6時間未満の人は、睡眠時間7〜8時間の人と比べて、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクが上昇するという韓国での研究報告がありました。また、睡眠不足により食欲に関するホルモンの分泌に影響が生じ、食欲が増進し、とくに甘いものや糖質の多い食品を食べたくなります。そのため過食傾向になり血糖値の上昇につながります。
血糖値は食事での糖分の過剰摂取の他に、心身のストレスや、運動不足、睡眠不足など不規則な生活も影響します。健診結果で「血糖値・要注意」などのコメントがあった方はこの機会に日頃の生活を見直してみませんか?ほんの少しの積み重ねで、1年後の健診では大きな変化が期待できると思います。


5月

備えあれば患いなし?!熱中症対策

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。春の気候から夏の日差しを感じる日も少しずつ増えてきました。ここ数年、5月の連休明けに暑い日が続き、体がまだ暑さに慣れていない状態で熱中症になりやすいということがあります。2022年度は熱中症による労働災害(速報値)の発生状況をみてみますと死傷者数は805人、そのうち死亡者は28人でした。死亡された方の職場の特徴として、暑さ指数(WBGT)を把握していなかったこと、熱中症予防の教育を十分に実施できていなかったことがあるようです。
毎年のことですが熱中症の症状や対策を改めて確認し、夏本番を迎える前に熱中症対策を行って熱中症による災害を防いでいきましょう。

1.どうして熱中症になるのか?
熱中症は高温・多湿な環境において、@体の水分と塩分のバランスが崩れること、A体温の調整機能が破綻するなどによって起こります。
主な症状は、めまい、筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、意識障害、けいれん、手足の運動障害などがあります。
すぐさま、命の危険に直結することは稀ですが、熱中症が重症化すると亡くなる場合もあります。「あやしいな」という体調の変化を感じた時に、そのまま放置せずに対処することが大切です。

2.職場の準備はお済みですか?
熱中症対策の設備や機械などを用意している職場もあると思いますが、しばらくの間、使っていなかった設備や機械は問題なく稼働しますか?いざ使おうと思ったときに、機器が問題なく使えるように、前もって作動確認をすることをお勧めします。

(1)WBGT値の把握:JIS規格に適合したWBGT指数計を準備する。
(2)作業計画の策定:WBGT値に応じて作業の中止、休憩時間の確保などができるように余裕を持った作業計画を策定する。
(3)設備対策・休憩場所の確保:冷房設備や通風、ミストシャワーなどの設置や作業場所近くに冷房を備えた休憩場所や屋外であれば日よけを設置し日陰を確保する。
(4)服装:通気性の良い作業着、身体を冷却する機能を持つ服を着用。
(5)教育・研修:熱中症防止対策の教育を実施する。
(6)労働衛生管理体制の確立:事業場の管理体制を整え、必要に応じて予防管理者を選任する。
(7)発症時・緊急時の対応を確認:万が一に備えて、体調不良時の対応、悪化時の病院搬送、緊急時の対応や報告・相談ルートなどを確認し周知する。

3.熱中症対策には日頃の健康管理も大切
体の水分が不足する(脱水)と熱中症の発症リスクが高まります。前日の深酒や朝食を食べないなど、体が脱水傾向のまま作業を始めるなど、熱中症にかかりやすくなります。気温が高くなると冷えたビールやハイボールが進みやすくなるかもしれませんが、前日の飲酒は控えめにして、十分な睡眠をとり、翌朝はしっかり朝食をとりましょう。
高血圧や糖尿病といった生活習慣病などの持病がある方は、熱中症にかかりやすいことがあります。持病がある方は、かかりつけ医の医師に相談し、夏場の熱中症対策で気を付ける点を確認することをお勧めします。

職場の熱中症予防の情報や社内周知用のリーフレット、ポスターなど様々な啓発用資材があります。こちらも併せてご確認ください。(多言語にも対応)
「熱中症予防のための情報・資料サイト | 厚生労働省」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/


4月

労働安全衛生法の法改正について

羽田鉄工団地の皆さま、こんにちは。新しい年度を迎え生活の環境が変わった方も多くいらっしゃると思いますが、皆さまお変わりないでしょうか。私自身はこれまで9年間、保健師として勤めていた民間企業を3月末に退職し、4月から看護大学の教員になり看護師・保健師を目指す学生に産業保健を中心に公衆衛生看護学を教えることになりました。新たな気持ちでより一層に励んでいきたいと思います。

さて、今月号では最近の労働安全衛生法の法改正についてです。現在、日本国内では数万種類以上の化学物質が製造または使用されているそうです。化学物質の中には危険性や有害性がある物質も多く、発がん性を伴う物質もあります。この化学物質による労働災害も年間450件程度発生しています。そのため化学物質による労働災害を防止するため2022年5月31日に労働安全衛生規則等の一部を改正する省令が公布され、2023年4月および2024年4月に施行されます。2023年4月1日に施行される内容は以下の内容です。

1.リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務
労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置として、代替物の使用、発散源を密閉、局所排気装置や全体換気装置を設置し稼働する、作業方法の改善、有効な呼吸用保護具を使用するなど、従来実施している化学物質のばく露低減の対応かと思いますが、改めて対象物ばく露の低減ができているかご確認ください。
また、労働者のばく露の状況を労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し3年間保存しなければなりません。(がん原性物質に定められるものは30年間保存)
2.皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止
3.衛生委員会の付議事項の追加
労働者が化学物質にばく露される程度を最小限にするために講ずる措置に関することを衛生委員会の府議事項に追加し、化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うこと。(衛生委員会の設置義務のない労働者数50人未満の事業場も関係労働者からの意見聴取の機会を設ける。)
4.がん等の遅発性疾病の把握強化
化学物質を製造、または取り扱う事業場で1年以内に複数の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、その罹患が業務に起因する可能性について医師の意見を聴取、業務起因性を疑う場合は所轄の都道府県労働局長に報告しなければなりません。
5.リスクアセスメント結果等に関する記録の作成と保存
6.がん原性物質の作業記録の保存
7.職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
8.SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認と更新
9.化学物質を事業場内で別容器等で保管する際の措置の強化
10.注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大
11.化学物質管理の水準が一定以上の事業場の個別規制の適用除外
12.ばく露の程度が低い場合における健康診断の実施頻度の緩和
有機溶剤、特定化学物質(特別管理物質等を除く)、鉛・四アルキル鉛に関する特殊健康診断の実施頻度について、作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合には、事業者はその実施頻度を通常は6月以内ごとに1回実施のところ、1年以内ごとに1回に緩和できます。
紙面の都合で、すべての項目について記載することが難しいため、法改正の詳細はこちら(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000945523.pdf)をご確認ください。



3月

第14次労働災害防止計画

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。まだ肌寒い日が続いていますが、街中で河津桜や梅の花が咲く様子をみて、春の訪れを感じる季節となりました。皆さまお変わりないでしょうか。
 今月は5年に1度改訂される労働災害防止計画について、現状でのトピックスをご紹介します。

(1)労働災害防止計画
2023年度は5年に1度の労働災害防止計画の改定年度です。向こう5年間の国内における労働災害防止の計画が厚生労働省から発表されます。事業場における安全衛生活動の大きな指標となるものとなり、特に重点活動事項として掲げられている項目は、日本国内の労働者の背景、労働災害防止の活動の目指す指標となります。

(2)労働災害等の現状
作業行動に起因する災害(転倒・腰痛など)、高年齢労働者への安全配慮、中小事業者や第3次産業における安全衛生対策の充実化が喫緊の課題となっています。
また、日本の労働人口の3人に一人が働きながら通院をしており、一般定期健康診断の有所見率は50%を超え、疾病リスクを有する労働者数は増加傾向です。心身の健康では、精神障害等の労災補償認定件数は増加傾向にあります。(2021年度は629件)仕事や職業生活で強い不安やストレスを感じている労働者は53.3%と半数以上を占めており、メンタルヘルス対策の取組みの充実化も大切です。

(3)第14次労働災害防止計画の事項(案)
@労働者の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進
A高年齢労働者の労働災害防止対策の推進
B多様な働き方への対応、外国人労働者等の労働災害防止対策の推進
C業種別の労働災害防止対策の推進
D労働者の健康確保対策の推進
E化学物質等による健康障害防止対策の推進
これまで労働災害防止計画では目標値を設定していましたが、第14次防では上記6項目についてアウトプット指標とアウトカム指標の2項目が設定される予定です。たとえば、D労働者の健康確保対策の推進における指標は下記の通りです。

(4)アウトプット指標
・企業における年次有給休暇の取得率を2025年までに70%以上とする。
・勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を2025年までに15%以上とする。
・メンタルヘルスに取り組む事業者の割合を2027年までに80%以上とする。
・50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年までに50%以上とする。
・必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を2027年までに80%以上とする。

(5)アウトカム指標
・週労働時間40時間以上である雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2025年までに5%以下とする。
・自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を2027年までに50%未満とする。
・労働者の健康障害全般の予防につながり、健康診断有所見者率等が改善することを期待する。
新たにアウトプット指標が定められ、事業者による労働衛生活動の取組みがより一層に重要となります。第14次労働災害防止計画の内容にご注目下さい。



2月

羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。1月は10年に1度の寒波ということで非常に寒い日が続きましたが皆さんはお変わりなくお過ごしでしょうか。毎年2月は全国生活習慣病予防月間です。今年のテーマは一無(無煙・禁煙)たばこは万病のもと〜あなたと地球の健康のために禁煙を〜です。日本人の喫煙者率は17%程度と言われており、毎年低下傾向ですが、男性では27%、4人に一人以上が喫煙していると言われています。今回は喫煙がもたらす万病や禁煙することによる効果についてお伝えします。

(1)喫煙がもたらす身体への影響
喫煙により極めて危険性が高くなるもの:COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんがあります。喫煙により危険性が高くなるもの:動脈硬化、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、大腸がん、歯周病などといわれています。また女性の喫煙は妊娠出産への影響も多く、早産や低出生体重、胎児の発育遅延などのリスクがあります。妊娠中に妊婦本人は喫煙をしていない場合も、受動喫煙により乳幼児突然死症候群の要因になると指摘されています。
 喫煙を始める年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、総死亡率も高くなります。

(2)禁煙することの効果
 「もう長らく喫煙をしているので、今さら禁煙をしても遅いでしょう?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。禁煙をするのに遅すぎることはありません。禁煙をするとその瞬間から、良い効果が得られます。

・8時間以内…血液中の一酸化炭素濃度が正常化
・24時間…心臓発作のリスクが軽減
・2〜3週間…心臓や血管など循環器の機能が改善
・1年後…肺機能の改善が見られる
・2〜4年…虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが軽減
・5〜9年…肺がんのリスクが軽減
・10〜15年…さまざまな疾患を発症するリスクは非喫煙者と同等

この他にも、咳やたんなどの呼吸器症状が改善、禁断症状がなくなり、ストレスが軽減、たばこ臭くなくなる、たばこ休憩の時間を削減、喫煙場所を探す必要が無い、食事が美味しくなる、禁煙したことで自信がつく、たばこ代が浮くなど。

図:喫煙によるがんのリスク(男性)
引用:日本医師会 https://www.med.or.jp/forest/kinen/damage/

たばこに関する心身への影響、環境についてより詳しく知りたい方は、全国生活習慣病予防月間2023 市民公開講演会(Web講演会)もご覧ください。
https://seikatsusyukanbyo.com/monthly/



1月

体内時計と食事、運動

羽田鉄工団地の皆さん、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。皆さんは元日の初日の出を見ることはできましたか?朝日を浴びると、眠気が覚めたり気持ちがスッキリしたりという経験をされたことがある方、多いかと思います。なぜ朝日を浴びると心身の調子が整うのでしょうか。それは人間や動物など全ての生物がもっていると言われる「体内時計」に関係があります。体内時計と食事や運動の関係を知ることで、体調が整ったり、ダイエットが成功したり、精神的にも安定したりと心身に良い効果が期待できます。

(1)体内時計のはたらき
1日は24時間ですが、人間の体内時計の周期は24時間より少し長い周期です。様々な説がありますが、1日のリズムは24時間10分や25時間程度と言われています。いずれにしても地球の自転リズムよりも少し長いのが、人間の概日リズム(サーカディアンリズム)です。体内時計は昼夜の変化に合わせて体内の環境を整える機能があり、自律神経や副交感神経のバランス、ホルモン分泌、免疫力、内臓の働きなどに影響します。

(2)体内時計のズレを整える
体内時計のリズムは地球の自転リズムより少し長いため、1日にわずかな時間ですがズレが生じます。体内時計がズレていくと自律神経や副交感神経の乱れ、体の不調に繋がることがあります。このズレを解消するために、どこかのタイミングで調整をする必要があります。最もズレを調整するのに良いタイミングは「朝」です。
≪毎日決まった時間に起きる≫
体内時計は起きた時にリセットされるので、毎日できるだけ同じ時間に起床することで、体内時計のズレを調整することができます。前日遅めの就寝となっても、なるべく起きる時間は一定にしましょう。
≪朝食をとる≫
朝ごはんを食べると血糖値が上昇し、血糖値を下げるために血中にインスリンというホルモンが上昇します。インスリンが増えることで、体内時計を調整する遺伝子が活性化します。できれば朝食では糖質(米、パンなどの炭水化物)、たんぱく質(肉、魚、大豆など)を取ることをお勧めします。
≪朝食後に軽い運動をする≫
朝食後から昼にかけて、ウォーキングなどの軽い運動をする血液中のブドウ糖の代謝が促されます。ダイエット中や血糖値が高い方には特にオススメです。朝食をとり、朝の通勤では階段利用や徒歩を増やすなど意識的に活動量を増やしていただくと効果的です。
≪夕方に有酸素運動や筋トレをする≫
15〜19時頃は肺や心臓の働きが活発です。筋肉も柔軟性が高い状態のため、ランニングやジョギング、筋力トレーニングなどスポーツをするのに最適な時間です。ケガをしにくく安全に、効率的にトレーニングの効果を期待できます。
≪眠る時の環境≫
就寝前にスマートフォンやパソコン、テレビなどの液晶画面から発生する強い光を浴びると、いつまでも脳が覚醒状態になり、睡眠の質が低下します。またスマホやPCで調べ物や仕事をすることでも、考えごとをして眠り難くなります。就寝前1〜2時間からスマホやテレビなどの光刺激は控えるようにしましょう。
≪就寝のリズム≫
体内時計によって、人間の身体は朝日を浴びてから15〜16時間が経過すると自然と眠くなります。朝6時に起きる方の場合は、22時や23時頃には自然と眠気が生じます。このタイミングで就寝ができると、質も良く満足感の高い睡眠を得ることができます。

日頃の仕事やプライベート等の出来事があると、毎日を規則正しく生活するのは、なかなか難しいかもしれません。実践できることを一つ、二つと増やして日常生活に取り入れて、心身の健康状態の改善、向上を目指してみませんか。