かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合




産業衛生コンサルタント北條先生(右)と岡部保健師(左)

平成20年
1月 新年明けましておめでとうございます
2月 COPDをご存知ですか?
3月 花粉症について
4月 4月から、いろいろ始まります
5月 B型肝炎・C型肝炎の医療費助成制度について
6月 肺炎について
7月 骨粗鬆症について
8月 患者さんにわかりにくい言葉
9月 「脂肪肝」について
10月 過敏性大腸症候群について
11月 アスベスト(石綿)について
12月 新型インフルエンザについて


平成20年12月

新型インフルエンザについて

 師走に入り寒い日が続いていますが皆様方は元気で仕事に励んでいることと思います。毎日のニュースを見ていると、経済の面でも厳しい寒波が予測されているようです。大田区は中小の製造業の多い地区としてニュースにもしばしば取り上げられて景気が厳しいことを伝えています。寒い季節といえば毎年流行するのが「風邪」です。夏に流行する風邪もありますが「風邪」、特にインフルエンザに罹患する人が圧倒的に多いのがこれからの季節です。「風邪」の大部分、90%以上がウイルスによって感染します。湿度の高い梅雨時や夏にかけて流行するのがコクサッキーウイルスやエンテロウイルスと呼ばれる、湿度の高い季節が好きなウイルスです。これに対して冬に流行するのは湿度の低い、乾燥した時期が好きなウイルスです。代表的なものは皆様ご承知のインフルエンザウイルスです。

 インフルエンザウイルスは古代ギリシャのヒポクラテスの時代にも記録されている呼吸器感染症であり、日本では平安時代に「しわぶきやみ」、江戸時代には「お駒かぜ」と称されて街中に流行する「はやりかぜ」として知られていました。

 20世紀に入ってからは「スペインかぜ」(1918年4000万人死亡)「アジアかぜ」(1957年200万人死亡)「香港かぜ」(1968年100万人死亡)等が当時の新型インフルエンザとして記録されています。最近、トリインフルエンザとも言われる新型インフルエンザが大きな話題となっていますが、政府では新型インフルエンザ対策の行動計画が平成17年11月に取りまとめられ新型インフルエンザに対する「水際対策」および「地域封じ込め対策」が発表されています。

 平成20年11月28日新型インフルエンザウイルスの侵入阻止は不可能という判断から従来の行動計画を改定して@感染拡大の抑制A社会・経済活動の破綻の防止を目指すことに改定しています。新型インフルエンザが日本に流行した場合の被害予測が、アメリカの疾病管理センターの推計モデルによって出されています。それによりますと、わが国の全人口の25%にあたる3200万人が罹患し、医療機関を受診する人は1300万人〜2500万人、死亡率は最大2%として64万人が死亡し、1日の入院数は10万1000人、社会人の欠勤率は40%と予測されています。インフルエンザの治療薬としてタミフル、リレンザを人口の22%分備蓄していたが、人口の45%分まで備蓄量を増やすことに変更されました。平成19年3月に新型インフルエンザ専門家会議が事業場・職場での予防ガイドラインを策定しています。このガイドラインは新型インフルエンザの@発生前の準備A発生直後の対応B感染拡大時の対応に分けて示されています。発生前の準備として@危機管理体制の確認(対策本部設置、連絡体制の構築)A情報収集と周知方法の確立B業務運営体制の検討C感染予防の措置(手洗い、うがいの励行、在宅勤務の業務形態の検討)
D物品の備蓄(マスク、手袋、手指消毒用薬剤)E社会機能維持に関る業務継続の検討が挙げられています。

 新型インフルエンザはまだわが国に侵入していないが、かなり高い確率で近い将来侵入してくると予想されています。特に大田区は空港や埠頭のような海外からの入り口がある地区であり新型インフルエンザについての正しい知識を共有して、過剰な反応に陥ることなく、また過小評価も危険であるが各企業は常に学習をしておく必要があるものと思います。

インフルエンザ予防のポイント

@ 外出から帰ったらうがいと手洗いを励行する。
A 風邪の流行時には人混みに行かない
B 部屋の保温と保湿
C マスクをする
D 十分に睡眠をとる
E 疲れをためない
F 栄養のバランスの良い食事を取る

 風邪に負けないように頑張って、良い年を迎えましょう。


平成20年11月

アスベスト(石綿)について

 数年前に尼崎市で石綿を扱う工場周辺の住民に石綿の粉塵吸引による健康被害が報道されて石綿粉塵の危険性にあらためて驚きました。この事件は関西地区の出来事なので東京とは無関係と思っていましたが、平成19年11月、東京労災病院からアスベストの環境暴露によると疑われる複数の症例を認めたと報告が出ました。そして調査の結果、患者の住所の近隣に昭和63年までアスベスト関連の工場が稼動していたことが分かりました。大田区は大森東4〜5丁目、大森南1〜5丁目を対象に昭和63年以前に居住暦のある者を中心に検診を行いました。受診者は916名で、そのうち47名の有所見者が発見されたと報告書に書かれています。そんなわけで今回はアスベストについて書かせてもらいます。

 アスベストは自然界に存在する天然の鉱物で糸や布に織れる繊維状の加工性に富んだ鉱物です。この鉱物は燃えず、腐らず、引っ張りに強く、熱や化学物資にも強い性質を持っていて耐火材、保温材などに広く使われ「魔法の鉱物」といわれていました。古くから人類は石綿を利用していてフインランドでは、石綿を粘土に混ぜて土器を作りひび割れを防ぎ、エジプトではミイラの梱包に使われていました。日本でも奥州藤原氏のミイラ保存に使われていたことが最近わかりました。

 江戸時代には平賀源内が秩父で発見した石綿で布を織り「火浣布」と名づけて世間に広げました。この「火浣布」は京都大学図書館に保存されているそうです。

 アスベストの9割は建材として使われています。耐火用の被覆材として建材に加工されたり、建物に直接吹き付けて使われました。セメント状に固めてスレートボードとして屋根材、壁材、天井材に使われるものもありました。一般家庭では魚焼き網、自転車のブレーキ、トースター、ヘヤードライヤーの断熱材として使われていました。

 アスベストを吸い込むと石綿肺と肺がん、胸膜疾患として中皮腫と良性石綿胸水(アスベスト胸膜炎)、びまん性胸膜肥厚等があります。アスベスト健康被害の特徴は潜伏期が長いことで、潜伏期間の平均はアスベストを吸い込んでから38年もかかります。そのため「静かな時限爆弾」ともいわれます。

アスベスト吸入暦をチェックしよう

以下の場所で働いたことがありますか?
アスベストを扱う工場や倉庫
建物の解体作業
船舶の修理・解体
ボイラー関連工事
ガス、スチームなどの配管工事
自転車修理工場
消防隊員等

住居場所について
アスベスト工場
造船所
建材置き場(石綿関係)の近く
家庭で石綿製品の修理をした
家庭でタルクパウダー(ボデイタルク、顔用タルク)を使った
石綿パイプの取り付けを行った等が上げられています。

 幅が広すぎてよく分からないところもありますが、心配な場合は最寄りの労働基準監督署か東京労働局03(3814)5317で相談が出来ます。


平成20年10月

過敏性大腸症候群について

 猛暑も過ぎて急速に秋めいてまいりましたが、同時に景気のほうも秋風から厳冬に移る気配を感じます。逆風にもめげず皆様は元気に頑張っていることと拝察いたします。政治の世界では火急な問題が山積している時期に総理大臣が急遽、辞職したり、日本人の主食であり酒やお菓子の材料として広く食べられている米が汚染されているというニュースが流れて、私たちの周囲はストレスの多いことばかりです。
 
 本日のテーマである過敏性大腸症候群は慢性的に続く腹痛や腹部膨満感等の「おなかの不快感」と便秘や下痢といった便通異常を伴う病気です。疫学調査によりますと日本人では 1200万人の方がこの病気に悩まされているといわれています。男女比では女性の有病率が高く10万人を対象としたインターネットによる調査では女性15.5%、男性10.7%の方に過敏性大腸症候群の症状がみられました。女性では中高年以後に多くみられるため閉経との関係も考えられています。ストレスによって症状が増悪することが特徴の過敏性大腸症候群には便秘型、下痢型がありますが、その他に下痢と便秘を交互に繰り返す混合型の方もいます。女性には便秘型が多く、男性には下痢型が多いことが分かっています。ストレスや緊張に関係するため、会社への出勤途中で何回も途中下車を繰り返して駅のトイレに駆け込む方も少なくありません。私の患者さんは通勤途上の箇所くらいの各駅のトイレの位置を記憶していて、ホームからの距離やトイレの混雑程度を把握している方がいました。
 
この病気には腹痛は必発で、会社に出かけようする際や、重要な会議に出席しようとすると腹痛が出てきて、トイレで排便して一旦はおさまります。似たような症状を出す病気に潰瘍性大腸炎、大腸がん、クローン病、その他の病気がありますが、過敏性大腸は大腸カメラ、レントゲンによる注腸造影検査を行っても異常が見当たりません。過敏性大腸症候群の特徴として排便により腹痛が軽快または消失します。また、「夜間、睡眠中に腹痛があるか?」、「腹痛で夜中に眼が覚めてしまったりしないか」ということも目安になります。即ち、睡眠中にはストレスも感じていないので腹痛は出現しないと判断します。
 
 しかし、症状だけから判断して検査も受けないのは大変危険ですので過敏性大腸症候群を疑うような症状がある場合は専門医の診察を受けることを勧めます。
 
 治療法としては生活面の指導、食事内容の指導等を行い腹痛、便通異常の改善(便秘、下痢等)を心掛けます。内服薬も出ていますので一度、専門医にご相談ください。過敏性大腸症候群は腹痛や腹部不快感等の身体的苦痛に加えて、頻回の排便や便意切迫感のために外出を躊躇したりして日常生活に支障を来たす厄介な疾患です。先進国では過敏性大腸症候群による生産能率の低下、経済的損失が問題にされています。


平成20年9月

「脂肪肝」について

 残暑と大雨による洪水のニュースが流れていますが鉄工団地の皆さんはお元気に過ごされていることと拝察申し上げます。
 皆さんは健診や人間ドックで「脂肪肝」と言われたことはありませんか。現在、わが国では健康診断の結果「脂肪肝」と診断される人が全受診者の約 3割に上るといわれています。 脂肪肝は文字通り肝臓の中に脂肪が貯まっている状態で肝細胞全体の30%以上が脂肪化している状態を「脂肪肝」と言います。脂肪肝は自覚症状がほとんどありませんが、最近では動脈硬化の原因となり肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病と並んでメタボリックシンドロームと関係が深いと考えられています。もともと肝臓ではエネルギー源として脂肪を作り、肝細胞の中に貯めていて、必要に応じて活動のエネルギーとして使われます。しかし、使うエネルギーよりも貯まった脂肪の方が多いと肝細胞にどんどん蓄積していき、全肝細胞の30%以上が脂肪化してくると「脂肪肝」と診断されます。BMI が25以上で肥満と指摘された人の28%〜30%に脂肪肝がみられます。脂肪肝になると肝臓の働きが悪くなり脂肪肝→ 脂肪性肝炎→ 肝硬変→ 肝癌へと進行することがあります。
脂肪肝は飲酒が原因となるアルコール性と飲酒の習慣がない人が脂肪肝になる非アルコール性に分類されます。非アルコール性脂肪肝は肥満や運動不足、甘いものの摂りすぎ等が原因となるもので、わが国では約100万人近くいると言われています。非アルコール性でも1割位の人が肝硬変や肝癌に移行するといわれていて、ここ 10年位の間に増加してきています。
 脂肪肝は血液検査(GOT,GPT,γ―GPT等)や超音波検査で診断されます。肝生検と言って針で肝臓の一部を採取して調べる場合もあります。アルコール性肝炎の場合は禁酒が原則であり非アルコール性肝炎の場合はカロリー制限、運動、減量等が必要になります。今回は「脂肪肝」について書いてみました。


平成20年8月

患者さんにわかりにくい言葉

暑中お見舞い申し上げます。
猛暑が続いていますが元気に頑張っていることと拝察いたします。原油や諸物価と同様に気温まで上昇中です。
独立行政法人・国立国語研究所はこのほど患者にわかりにくい言葉100語をアンケートにより選びました。医療の世界でも昔と違ってインフォームドコンセント(説明と同意)が重視されるようになりました。医療上の紛争が増加していますが、この中でも「インフォームドコンセントが十分でない」と裁判官に判示された事例が多く含まれています。十数年前ですが乳がんの手術を受けたご婦人が乳房を残してくれなかったと訴えました。大阪地方であった事件ですが、乳がんの手術は成功して患者さんも健康になったのですが、術前に乳房を全部切除するという説明が無かったということで医師側が敗訴しています。この事件以後、数件の乳がん手術による紛争があり医師側が敗訴しています。
医者の言葉がわかりにくいということを物語るシーンとして、ある大学病院の医療事故の記者会見の様子が語られています。記者会見に多数の記者が集まり質問が始まりましたが「内視鏡手術」の「内視鏡」の説明に約1時間を要し、本論になかなか進まず怒声の飛び交う会見となりました。この種の事件取材は大体が過熱気味ですが取材前に基本的な予備知識は予習しておくべきではないかと思いました。取材記者の傍若無人な態度も度々話題となりますが・・・
私もコンピュータトラブル等になると販売元から来る補修サービスの「専門家」と議論もできません。「専門家」らしい人もあまり詳しくなくて、基盤の取替えとかを行うだけで、ハンダ付けとか小さな部品の補修はしないようで、私には「説明」も「同意」も不要で「おまかせ」するだけです。医療も以前は「パターナリズム」と称して「先生におまかせします」が多かったようです。
前置きが長くなってしまいましたが分かりにくい言葉として上げられている単語を列挙してみます。
悪性腫瘍
癌や肉腫のこと
悪性リンパ腫
全身のリンパ節が腫れる血液病
イレウス
腸が詰まってしまい便やガスが出ない状態、腸閉塞のこと
院内感染
医療施設内で伝染すること、MRSAが有名
川崎病
4歳以下の小児に多い原因不明の急性発熱疾患、発見した川崎医師の名を付けた病気、川崎地区の病気ではない。心臓の合併症があり恐れられる その他
壊死、黄疸、鬱血、間質性肺炎、血栓、膠原病
腫瘍マーカー、尊厳死、ガイドライン
セカンドオピニオン、ターミナルケア、統合失調症
COPD,MRSA,ADL,QOL,EBM
などがありました。
来年3月頃までに分かりやすくまとめて、国立国語研究所が発表してくれるそうです。ご期待ください。
猛暑が続きますので熱中症にご注意ください。


平成20年7月

骨粗鬆症について

国民の高齢化や長寿者の増加に対して生活習慣病(メタボリックシンドローム)対策が進められ、今年からは特定健診・特定保健指導が始まります。  肥満や血管系の病気、糖尿病予防に重点が置かれた健診ですが、その結果に応じて食事や運動についての保健指導が行われます。さらに、飲酒やタバコ等の嗜好品も包括した細かな生活指導が行われることになっています。  一方、生命には直接的には影響を与えないけれども筋肉・骨格系の病気も加齢に伴って増加します。原因は加齢と共に筋肉・骨量の減少が始まることであり、特に腕、脚の筋肉の萎縮・減少が目立ちます。脚の筋肉の減少は日常生活での転倒事故の原因となり、骨量の減少は骨折し易い状況を招きます。  骨折は老後の日常生活に大きな支障をきたし、「寝たきり」になったり、日常の買い物のための外出等が大きく制限されてしまいます。特に大腿骨頚部骨折が「寝たきり高齢者」や「要介護高齢者」を増加させる原因となることが多いことで知られています。大腿骨頚部骨折の発生件数は昭和62年(1987年)に53,200件でしたが15年後の平成14年(2002年)には117,900件と2.2倍に増加しています。これは高齢者人口の増加率よりもずっと高いスピードで増加していることを示しています。大腿骨頚部骨折を減らすことは「寝たきる高齢者」や「要介護高齢者」を減らすことに繋がり当面、喫緊の課題となっています。 骨粗鬆症の患者は1,100万人と推定されていますが、初期には自覚症状が無いため気付きにくく、治療が必要な人の約2割程度しか治療していないと言われています。

正しい生活習慣で最大骨量を高めましょう。

 骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い疾患で全患者数の約8割を女性が占めています。  原因としては女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量の減少です。「エストロゲン」は丈夫な骨を保つ以外にも様々な働きで女性の体を守っていますが更年期になると分泌が減ってしまうため骨量も減り骨粗鬆症となります。若い頃に骨量(最大骨量)が多い人ほど高齢になっても骨粗鬆症になりにくいといわれていますので成長期のうちにカルシウムを十分摂取して、よく運動して骨量を十分に増やしておくことが肝心です。骨量は20〜30代が最大(最大骨量)になります。この年代で極端なダイエットを行うとカルシウム不足から骨量の増加を妨げる結果になります。

骨量の低下予防には

 いつまでも元気で過ごすために食生活や運動といった良い生活習慣を持続することで骨量の減少を緩やかにするように心がけましょう。皮膚と同じように骨も絶えず作り替えられています。旧い骨を壊して新しい骨を作る「骨代謝」が繰り返されているのです。加齢に伴ってカルシウムの吸収率が低下して、骨量は減り骨折を起こしやすい条件が揃ってきます。骨粗鬆症を防ぐために加齢は防ぎようがありませんが、生活習慣の改善により骨量の減少を予防できるものもあります。先ずはバランスの良い食生活です。主食、主菜、副菜を栄養バランスを考慮して正しい食生活に努めましょう。骨の材料となるカルシウムをしっかり摂るように小魚類、大豆食品、緑黄色野菜を意識して献立を考えましょう。避けたい生活習慣としてアルコール、カフェインの摂り過ぎ、喫煙は骨粗鬆症の要因になります。軽い日光浴、適度な運動は体内のビタミンDやカルシウムが有効に使われて骨量の増加、維持に役立ちます。 転倒しないように気をつけて、骨折を予防しましょう。


平成20年6月
 
肺炎について
 
 入梅に入り毎日うっとうしい日が続いていますが皆様はお元気にお過ごしでしょうか。台風の接近で強風と大雨の悪天候だった6月3日の朝刊の第一面にサッカー2010年W杯南アフリカ大会アジア予選で日本チームがオマーンチームに快勝した記事が掲載されていました。この記事と対照的な記事が社会面に掲載されていて、元日本サッカーチームの五輪監督を務め1968年のメキシコ五輪で日本チームを率いて銅メダルを獲得した長沼 健氏が肺炎のため77歳で死亡したことが報じられていました。現在のようにサッカーにプロチームが出来てJリーグを形成してメジャーなスポーツとして今日の隆盛を迎える基礎を作った方々の一人であり、突然の訃報に驚いたと言う有名人のコメントも出ていました。
そこで今回は肺炎について書かせてもらいます。肺炎とは、肺実質に様々な病原微生物(細菌等)が侵入して炎症を起こすことであり、多くの場合発熱、咳、痰、呼吸困難、胸痛をきたします。血液の検査や胸部レントゲンで診断されますが、肺炎は罹患率の高い(罹る人の多い)上に死亡率も高い疾患です。我が国における肺炎の死亡率は人口10万人対70で死亡順位は第4位でありますが、高齢になるに従って急激に増加します。85歳以上の男性では死因の第2位90歳以上の男性では死因の第1位となります。別の表現では肺炎による死亡者の95%は65歳以上の方で占めます。肺炎による死亡はここ数年上昇傾向にあります。(2005年人口動態統計)肺炎の主な原因は細菌やウイルスの侵入ですが、病原菌の主なものは肺炎球菌、 インフルエンザ菌、マイコプラズマ等です。肺炎の予防はマスク、手洗い、うがい、口腔ケア、誤嚥対策、基礎疾患(糖尿病等)対策、入浴、日光浴、予防注射が上げられています。特に肺炎球菌ワクチンは肺炎予防として推奨されていて、一生に1回の注射で肺炎球菌による肺炎を予防します。
百日咳について
百日咳は小児に多く見られる疾患でしたし、我が国で1981年に開発された百日咳ワクチンの接種によって1997年以降流行は無かったのですが、2002年頃から15歳以上の患者が増加しています。2007年5月、香川大学で医学生を中心に200人以上の集団発生があり、さらに高知大学、青森の消防署、岡山の高校、宇和島市等で集団発生しました。唾液等の飛沫による感染力は麻疹と同様に強力であるといわれています。この時期に東京では大学生の間に麻疹が大流行したことは皆様方もご記憶のことと思います。近年になり小児の疾患が大人に流行する現象が見られるようになりました。咳が2週間以上続くようでしたら近医を受診することをお勧めします。


平成20年5月

B型肝炎・C型肝炎の医療費助成制度について

 今年の4月からB型肝炎・C型肝炎のインターフェロン治療にかかる医療費を助成する制度が全国47都道府県で始まります。東京都ではC型肝炎インターフェロン治療に対する医療費助成を19年10月から実施してきたところですが、国が全国の制度として医療費助成制度を創設したことにより現行制度を国の制度に準じて改正しました。このような制度を創設してB型肝炎・C型肝炎の受診、受療を促進させる政策を進める背景には、毎年約35,000人の方が肝がんで死亡していて、その8割がC型肝炎から発生しているというデーターがあること、我が国にはC型肝炎の感染者が約200万人(研究者によっては340万人とも言われる)B型肝炎の感染者が140万人いると推定され「国民病」とまで言われていることがあります。さらには予防接種や血液製剤による感染で国や製薬会社の責任が裁判等で認定されたこともあります。インターフェロン製剤の進歩も貢献しています。


医療費助成はどのようにして受けられますか?

 「肝炎インターフェロン治療受給者証」が必要です。住民票のある都道府県から交付されます。東京都の場合は申請書、診断書等の必要書類を保健所(特別区)、市町村担当窓口(多摩、市町村、島嶼地区)へ提出して「医療券」を受け取ります。医療費の助成は住民税の年額に応じて決まります。全額無料と自己負担上限額が1万円、3万円、5万円に分けられます。電話は03−5320−4472です。


緊急肝炎ウイルス検査事業について

平成19年12月27日、厚生労働省から無料の肝炎検査事業を実施する旨の発表がありました。フイブリノゲン製剤問題を契機に肝炎検査希望者が増加する見込みがあるためと説明されています。これを受けて大田区保健所肝炎ウイルス検査事業が今年の4月から開始されています。対象者は大田区在住の15歳以上の方で、薬剤による感染の可能性のある方です。B型・C型肝炎の検査が無料で受けられます。大田区保健所健康推進課へ申し込み、受診票を受け取って近医で受診してください。期間は21年3月31日までです。
ウイルス肝炎にはどんなものがありますか?
ウイルスによって感染する肝炎にはA型、B型、C型、D型、E型肝炎が確認されています。このうちA型とE型は食べ物により経口で感染します。B,C、D型は血液製剤や注射針によって感染します。一部、性的接触により体液で感染するものもあります。
国は総力を挙げて肝がんの撲滅に努めようとしています。皆様の中で不幸にもB型、C型肝炎に感染している方がいらしたら、早期に受診して下さることを希望します。


平成20年4月

4月から、いろいろ始まります。


桜が満開でいつもの風景にパッと明るい、華やかさが加わっています。「かけはし」4月号がお手元に届く頃はこの満開の絢爛豪華な桜も散って青葉の季節に入りかけていると思います。いよいよ平成2 0年度に突入しますが今年度から始まる制度が沢山あります。その中から皆様に関係の深いものを書いてみたいと思います。

1)特定健診・特定保健指導
今年度からは、従来行われてきた健診に代わって「特定健診」と言われる健診がおこなわれます。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や生活習慣病の予防に注目した健診と言われて、生活習慣病の予防によって健康を維持して年々増崇する医療費を抑制し、同時に財政逼迫する介護保険のお世話にならないように介護予防も視野に入れた健診です。対象者は40歳〜75歳未満の被保険者と被扶養者です。今までの健診は「老人保健法」によって行われてきましたがこれからの健診は「高齢者医療確保法」によって行われて、健診項目も腹囲測定、LDLコレステロールの測定、タバコの喫煙暦の聴取等が加わります。その結果メタボリックシンドロームに該当する方には特定保健指導が加えられます。健診結果の成績にしたがって@情報提供A動機付け指導B積極的指導に層別化した指導が実施されます。積極的指導は6ヶ月間に亘って行われ、6ヶ月後に指導の効果と本人の努力の検証が行われます。勤労者は労働安全衛生法による定期健診が今まで通り行われますが健診項目が変更されます。

2)後期高齢者医療制度
満75歳以上の方は今まで所属していた健康保険から外れて新たに都道府県別に設置された広域連合の保険に入ることになります。保険証は既に発行されていて該当者のお手元に届いていることでしょう。医療費は高齢者を中心に伸びていて外来受診率も入院受療率も 75歳〜80歳を境に増加していきます。さらには、都道府県別で一人当たり医療費に差があり、後期高齢者の保険料は都道府県別に設定されています。経済財政諮問会議が平成13年に創設されて(委員長は当時の小泉総理大臣です)多くの議論がなされた結果、持続可能な社会保障制度を構築するために平成18年6月に医療制度改革法が成立し、その中で特定健診・特定保健指導、後期高齢者医療制度が浮上しました。チルドレンのお好きな総理は老人が大嫌いだったかもしれません。(イヤな世の中だナァ〜)

3)長時間労働者に対する医師の面接指導
「労働安全衛生法」第66条の改正により平成18年4月から長時間労働者には医師による面接指導が事業者に義務付けられました。労働者が50人未満の小規模事業所には2 年間の猶予がありましたが平成20年4月からは50人未満の小規模事業所にも月100時間を越える時間外労働を行った労働者には事業者が医師による面接指導を行わせる義務があります。労働者の過労による健康障害が増加の一途にあり、労災の申請件数も年々増加しています。平成 20年度から始まる第11次労働災害防止計画の中にも重要目標として取り上げられています。 以上の3項目の外にも労働契約法が3月から施行されています。 今回は20年度から始まる制度について書かせてもらいました。


平成20年3月

花粉症について

 只今花粉症のシーズン真最中ですが、敏感な方は2月下旬頃からくしゃみ、鼻水、鼻閉に悩まされているようです。アレルギー性結膜炎を引き起こして眼が痒くなったり、涙眼になってしまう方もいます。
 花粉症の患者さんはここ10数年で急激に増加していて、全国では700万〜800万人が花粉症に悩まされているといわれています  今の季節はスギ、ヒノキ等の花粉によるものが大多数ですが、スギ、ヒノキ以外の花粉でも花粉症を引き起こします。
 桜の花粉により発症する方もいて、この人はゆっくりお花見もできません。アレルギー性鼻炎と喘息は同一患者にしばしば合併することが知られていて、アレルギー性鼻炎の約30%に喘息を合併します。このことからOne airway,one diseaseといわれたりします。 花粉症から身を守る10のポイントをご紹介します。
1) 外出時にはマスクとメガネ(厚手のマスク、大きめのメガネの着用)
2) 外出から帰ったときは家に入る前に服をはたく。洗濯物の取り込みも同じです。
  (花粉の落ちやすい生地の服を着る、ウール等は花粉が落ちにくい)
3) 花粉の多い日は窓を閉める。
4) 花粉情報に注意しておく。
5) スギだけではなく雑草にも注意。(雑草は今のうち抜いておく、ブタクサ等)
6) 風邪をひくと鼻の粘膜が弱り花粉症を発症 したり、悪化させたりします。
7) タバコは鼻の粘膜を刺激し、アルコールは血管を拡張させて症状を悪化させます。
8) ストレスと睡眠不足はアレルギー症状を悪化させます。
9) 気温の変化に気をつけよう。(気温の変化でアレルギー性鼻炎を誘発します。暖房の利かせす  ぎに注意)
10) ひどい人は仕事に支障をきたしたりしますので抗アレルギー剤を医師に処方してもらって治療しましょう。
   (眠気の少ないものもあります。)


平成20年2月

COPDをご存知ですか?

COPD(閉塞性肺疾患)とは肺の機能が低下して少し動いても呼吸困難(息切れ)の起こる病気です。中高年層に多く、呼吸器の生活習慣病と言われています。長年の喫煙習慣によって発症してゆっくりと進行する病気です。長寿社会となってきて、この病気で死亡する方が増えてまいりました。
 WHOの統計によりますと各種の癌、心筋梗塞、脳卒中に続いて死亡原因の第4位占めていて、今後益々増加すると予測されています。2020年には第3位になるだろうと言われています。平成20年度から始まる特定健診にも喫煙習慣の有無がチェックされることになっています。今までは肺気腫と慢性気管支炎は別々の病気として扱われ、診断基準や治療方針が定められていましたが、現在はこの二つの病気を総称してCOPDと呼ぶようになり、治療も同一のガイドラインによって行われるようになりました。
COPDの発症年齢は比較的高齢で60歳代での発症が多く、20年以上の喫煙暦や有害物質の吸入が原因と推測されています。
 厚生労働省の統計によれば、COPDの治療を受けている患者は全国で22万人と言われています。
 2001年に行われた疫学調査ではCOPDと診断を受けている人と、その予備群で530万人に上ると推定されていて、タバコによる呼吸器の生活習慣病として重要視されています。また、喫煙者の約2割の方がCOPDに罹るとも言われています。
 ちょっとした動作で息切れがしたり、普段から咳や痰が続いている方は注意が必要です。
 呼吸機能が低下するCOPDは風邪等の感染症で症状が普通の人よりも重症化しやすく、場合によっては生命に影響することもあります
 治療については、一旦壊れてしまった肺機能(肺胞等)は回復不能ですが治療を開始することにより病状の進行を抑制し、呼吸困難の改善が期待できます。
 症状のある方や心配な方は「かかりつけ医」を受診して検査を受けることをお勧めします。
 大事なことは早期診断、早期治療です。COPDの程度により薬物療法や在宅酸素療法を行います。在宅酸素療法を受けている方は全国で12万人?13万人いると言われています。
 禁煙に努めて元気に仕事に励みましょう。

COPDの自己チェック
 年齢・・・49歳以下 0点  50〜59歳 4点    60〜69歳 8点   70歳以上 10点  (1日のたばこ本数÷20)×喫煙年数   14以下・0点 15〜24・2点 25〜49・3点  50以上・7点



平成20年1月

新年明けましておめでとうございます。

 今年も健康に関することを書かせてもらいますので宜しくお願いします。今年は医療保険や労働安全衛生関係に変更がありますので少々注意が必要かもしれません。

1)後期高齢者医療
第164回国会で健康保険法が一部改正され成立しました。これによって、平成20年度から後期高齢者医療制度が創設されることとなりました。75歳以上の方は全てこの保険制度に入ることとなります。背景として医療制度改革法が 18年6月に成立したことがあります。将来に亘り持続可能な社会保障制度を目指して医療制度改革が行われることとなりました。経済財政諮問会議では医療費を経済の伸びに合わせて総枠管理できないかという議論があり、国民の生活習慣を改善することにより受診を抑えて医療費の適正化を図ることとなりました。即ち、入院期間の短縮、多受診、多重受診の改善による検査や投薬の無駄の排除、在宅医療の推進等が上げられました。特に高齢者の医療費が問題視されました。 17年度の医療費について見てみると国民の総医療費は33.1兆円で前年比3.3%増です。中味ですが、人口の2割に相当する65歳以上の医療費が約51%で17兆円、70歳以上は人口の約1割ですが41%で13.6兆円となっています。因みに総医療費の51%が病院で使われます。人口は 17年から減少に転じていて16年を22000人下回り、戦後初の減少局面に入りました。但し、生産年齢人口(15歳〜65歳)は平成8年から減少局面に入っています。経済の専門家で進められた感じがありますが、高齢世帯が増えている現状で「寝たきり」の病人を退院させて在宅医療にしろと言われても困るのではないでしょうか。

2)特定健診・特定保健指導
これまでの職場の定期健診や地域の住民健診に代わって「高齢者医療確保法」による健診が導入されます。メタボリックシンドロームの予防に注目した健診と保健指導で医療費の抑制に役立つと言われています。職域の健診は健診項目が少し変わりますが大きな変更はありません。費用も事業者負担で事後措置についても従前通りです。特定保健指導に関しては保険者から指示があるものと思います。

3)長時間労働と医師の面接指導
平成17年の労働安全衛生法の改正により平成18年度から従業員50人以上の事業所では既に実施されていましたが、平成20年度からは従業員が50人未満の事業所にも義務付けられます。時間外労働が月 100時間を越えた労働者には医師の面接指導を受けさせなければいけません。労働安全衛生法66条によりますが事業者の義務となっています。 今年も健康に留意しておおいに頑張りましょう。


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