かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合




産業衛生コンサルタント北條先生(右)と岡部保健師(左)
平成21年
1月 糖尿病について
2月 咳エチケットについて
3月 「脂肪肝」について
4月 便秘について
5月 結核について
6月 新型インフルエンザについて
7月 続 新型インフルエンザについて
8月 熱中症について
9月 若年性認知症について
10月 いよいよインフルエンザの季節です
11月 こころの健康づくり
12月 続!新型インフルエンザ

平成21年12月

続!新型インフルエンザ  

 羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。大田地域産業保健センターの保健師 岡部です。
 今年もいよいよ年の瀬が近づいてきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今月のテーマは続!新型インフルエンザです。1週間毎の定点報告によると、医療機関へのインフルエンザの受診者数が徐々に増加しています。そのほとんどが新型インフルエンザによるものです。既に何らかの対応策をとっていると思いますが、再度確認していきましょう。

<ワクチン接種>
 いよいよワクチン接種が開始しました。今後は基礎疾患を有する方、幼児・児童、高齢者を対象に順々に行われます。ワクチンは受託医療機関(国が委託した医療機関)で接種できますが、基礎疾患がある方は必ずかかりつけ医にご相談の上、接種してください。また、ワクチン接種についてはお住まいの地域により異なる部分も多いようです。それぞれ市区町村の情報をご確認ください。(ホームページや広報に掲載されています。)

<インフルエンザの症状と受診>
 前回、北條先生から症状について説明がありましたように、新型も季節性インフルエンザも症状はほぼ同じです。咳や発熱していても、症状が比較的軽い場合は自宅療養で回復する方もいるようです。症状が長引いたり悪化したりする時は、すぐに医療機関に受診してください。特に表1に示したような症状がある場合は、医療機関への受診をお勧めします。

表1 症状の重症化
小児 大人
・ 呼吸が速い、息苦しそうにしている ・ 呼吸困難または息切れがある
・ 顔色が悪い(土気色、青白いなど) ・ 胸の痛みがつづいている
・ 嘔吐や下痢がつづいている ・ 嘔吐や下痢がつづいている
・ 落ち着きがない、遊ばない、反応が鈍い ・ 3日以上、発熱が続いている
・ 症状が長引いて悪化してきた ・ 症状が長引いて悪化してきた

(厚生労働省 新型インフルエンザ対策関連情報より)

また、基礎疾患をお持ちの方や、妊婦さんは感染すると重症化するリスクが高いです。なるべく早く、かかりつけ医などに相談しましょう。

<発症から外出・復帰まで>
・ 熱が下がってから2日目
 熱がさがっても、インフルエンザの感染力は残っています。このまま出勤や外出をすると、同僚や他の人が感染する可能性があるので、この期間の外出は避けましょう。

・ 症状(発熱や咳、のどの痛みなど)が始まった日の翌日から7日目まで

 現在流行しているインフルエンザは、症状がなくなってからもしばらく感染力が続く可能性があると言われています。あまり長く会社を休むわけにもいきませんが、できる限り、外出は控え様子をみましょう。
年末年始に向け外出や忘・新年会など人の多い場 所に出向く機会が増えると思います。手洗い・うがいの励行、しっかりと栄養・睡眠・休養をとりお体に気をつけてよい年をお迎えください。


平成21年11月

こころの健康づくり -ストレスへの気づき-  保健師 岡部花枝
 羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。大田地域産業保健センターの保健師 岡部です。
 秋が深まり、朝晩めっきり冷え込むようになりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。今月号は心の健康についてのお話です。多くの話題が取り沙汰されている事柄ですので、ご周知のことも多いかと思いますが、改めてストレスへの気づきについて確認してみましょう。

「ストレスはスパイス」
 適度なストレス(良いストレス)は心を引き締めて、仕事や勉強の能率を上げたり、心地よい興奮や緊張を与えてくれたりします。反対に、興奮や緊張が度を超えてしまうと(悪いストレス)、過剰反応を起こし心と体にダメージを与えるとされています。

「ストレスに気づく」
 ストレスは、様々な出来事がきっかけとなって引き起こされます。
職場で…仕事量・質の変化、重い責任の発生、人間関係のトラブル、仕事のあいまいさ等
職場以外で…自分・自分以外の出来事、住環境や生活の変化、金銭問題等
 ストレスの原因は職場のみならず、個人・家庭など職場以外の問題もあるされています(表1)。気づかないうちにストレスに対する反応が出ていないでしょうか?
 ストレスに気づく方法に、ストレスセルフチェックシートがあります。大田地域産業保健センターでは、団地内一部の事業場様にご協力いただき、ストレスセルフチェックシートを用いた心の健康づくり調査を実施しております。ご参加いただいた事業場の皆さま、ご協力ありがとうございました。職場内の心の健康づくりにご興味のある方、ご連絡ください。
 ストレスに早く気づき、自分に合ったストレス対処法を実践することが大切です。

メンタルヘルスケア推進の留意事項
(厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)より)
@心の健康問題の特性
A労働者の個人情報の保護への配慮
B人事労務管理との関係
C家庭・個人生活等の職場以外の問題

<お知らせ>
☆ 講演会「心とからだの健康相談」を12月5日(土)に開催します。皆様のご参加をお待ちしております。(詳細は同封のチラシをご覧ください。)
☆ 健康相談会(毎月第2火曜日お昼休み),事業場訪問・健康講話など(随時受付け中!)
<連絡先> 大田地域産業保健センター TEL 3772-2402 (岡部)


平成21年10月

いよいよインフルエンザの季節です 
 10月に入り朝夕はめっきり涼しくなりました。
 いよいよ「風邪」のシーズンがやってきますが、今年は例年と異なり新型インフルエンザの流行や新型ワクチンに対するニュースが連日のように報じられています。色々な情報が氾濫していますので、少し整理してみました。

1、新型インフルエンザの症状は?(表1)
 新型インフルエンザはどの様な症状を示すのか、多くの患者から集計されて分析結果が発表されています。表1に示す通りですが発熱が最も多く見られる症状です。朝起きて、普段よりも高い熱があったら出社せずに「かかりつけ医」に受診してから出社するようにすることが肝心です。

表1 新型インフルエンザの症状
症状 発症率(%)
熱 98.7
咳 72.1
鼻水・鼻づまり 34.1
咽頭痛(のどの痛み) 45.0
筋肉痛・関節痛 21.0
倦怠感(体がダルい) 23.6
嘔吐 3.9
下痢 3.9

2、流行のピークはいつですか?
 9月26日の小児入院医療体制確保に係る委員会の資料で「インフルエンザ流行注意報」が東京都内に9月25日に発令されたことが説明されました。「流行注意報」が発令されて4週間以内に大流行が発生されると予測されています。10月5日〜11日頃に入院患者のピークがあるのではないかという予測が発表されています。マスク、手洗い、うがい、人混みに行かない努力が必要でしょう。

3、新型インフルエンザワクチンは?(表2)
 新型インフルエンザのワクチンの予防接種の目的は新型インフルエンザによる死亡者や重症者を出来る限り減少させて医療機関の混乱を防ぐこと、必要な医療体制を維持確保することにあります。新型インフルエンザワクチンはワクチン量が不足なため予防接種の優先順位を決めて接種をすることに決められていて、国の管理下で実行することになっています。10月1日に発表された優先順位は、表2の通りです。接種方法は2回法、料金は6150円ですが1回目と2回目を別々の医療機関で受けた場合は7200円になるようです。費用は自己負担です。1930年(昭和5年)以後に生まれた人の殆どは新型インフルエンザの抗体を持っていないと言われています。

表2 優先接種対象者と接種スケジュールの目安


4、新型インフルエンザ情報の入手と相談先
 冒頭でも述べたように、様々な情報が氾濫していますので、厚生労働省や東京都感染症情報センター、中小企業庁などのホームページを活用して正確かつ最新の情報を確認しましょう。また、かかりつけ医がいないなど、受診する医療機関に心当たりのない方は、新型インフルエンザ相談センター(0570-03-1203)などの相談窓口が利用できます。
 健康に気をつけてこの冬を乗り切りましょう。


平成21年9月

若年性認知症について

 台風11号も大きな被害を出さずに通過してホッとしていることと思います。また、騒がしかった選挙も民主党の歴史的大勝で終了しましたが、これからの政策運営に注目するところです。今回は最近問題となっている若年性認知症について書いてみたいと思います。
 数年前に「明日の記憶」(主演 渡辺 謙)と言う映画で一時話題となりましたが65歳未満で発症する認知症を若年性認知症と言います。厚生労働省老健局や東京都福祉局でも若年性認知症への施策を推進するために実態調査を行っていますが、働き盛りの50歳台から発症することが多く家族や職場での理解も得られません。社内の会議や得意先との契約内容等を全て忘れてしまい、議事録や契約書類を見せても全く思い出しませんので大混乱となります。事例として、元市役所の職員が万引きで捕まり懲戒免職になりましたが、若年性認知症によるものと診断され、処分の撤回を求めて裁判中という事例が報道されました。
 若年性認知症は外見上や職場の健診でも分かりにくいため厄介な問題です。
 うつ病と誤診されて見当違いの薬を内服し続けていた例も報告されています。若年性認知症の方は高齢者向けのデイサービス等の利用も歓迎されません。高齢者と異なり行動が素早く、力も強いし、自分の親ほどの年齢の集団に入っても一緒に過ごすことは苦痛です。
 施設の職員も扱いに戸惑います。厚生労働省社会・援護局の話によると身体・知的障害者と異なり、ハガキの無償配布、旅客運賃の割引、公営住宅の優先入居等の優遇措置が認められないという実態もあります。最近の研究では若年性認知症の原因疾患は脳血管性のものが約4割と言われ、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血を罹った方に多いと言われています。茨城県の調査では発症年齢は53.4±7.9歳で発病率は45〜64歳では10万人当たり83.3人であり欧米と同程度と言われています。日本全国では38,000人程度の方がこの病気で困っています。
 今後の研究が待たれますが皆様もお気をつけ下さい。

大田地域産業保健センターからのお知らせ

 10月3日(土)に講演会『心とからだの健康相談』を開催します。
 今回のテーマは「ストレスと体の反応」「インフルエンザの流行に向けて」です。
 メンタルヘルスや労働衛生の専門家によるわかり易い講演と個別相談会を行います。参加費は無料ですので、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。詳しくは、同封のチラシをご覧ください。


平成21年8月

熱中症について

 猛暑が続いていますが皆様は元気に働いていることと思います。
 8月は熱中症の季節です。熱中症は6月ごろから出始めて、次第に増加して8月にピークを迎えます。熱中症は年々増加の傾向にありますが熱中症と言う概念が浸透してきたこともあります。また、ヒートアイランド現象や 地球温暖化による影響も熱ストレスが増加する一因と考えられています。

熱中症とは・・
 高温環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する様々な障害の総称です。死に至る可能性もあります。
熱中症の原因としては@環境面A身体面B行動面に分けて考えられます。

環境面
 気温が高い、湿度が高い、風が無い、急に暑くなった等の気象条件が考えられます。梅雨明けの急に暑くなった日は身体が暑さに慣れていませんので熱中症に罹りやすいので注意が必要です。

ヒートアイランド現象・・・
 緑地、水面の減少と建築物や舗装面の増加による人工化、空調システム、電気器具、自動車などの人間活動に伴う排熱の増加により気温30度を超える日が増えたこと、夜間の最低温度が25度以上の熱帯夜が増えたことが原因として考えられます。

身体面
 どのような人が罹りやすいかというと高齢者、肥満の人、過度の衣服を着てる人、普段から運動をしていない人、暑さに慣れていない人、病人、二日酔い、高血圧や糖尿の薬を服用している人は気をつけてください。

日常生活の注意
 服装を工夫して風通しのいい、汗を吸収する素材の服装。水はこまめに飲む。寝不足をしない。急に暑くなる日に注意しましょう。

健康相談窓口と事業場訪問  保健師 岡部花枝

 皆様こんにちは、保健師の岡部です。毎日毎日暑い日が続きますが、お変わりありませんか?「夏バテしているみたいだけど、医者に罹るほどじゃないかな…」そんな時は、健康相談窓口へ!毎月第二火曜日のお昼休みに、組合事務所の2階で健康相談を行っています。定期健康診断の結果相談や、ちょっとした体のお悩みや健康づくりなどの相談がございましたら、お気軽にお越しください。窓口に行く時間がないよと言う方は、私たちが事業場にお伺いさせていただく事業場訪問も行っていますので、ご活用ください。
(大田地域産業保健センター03-3772-2402)


平成21年7月

続 新型インフルエンザ情報

 新型インフルエンザ騒動もやっと鎮静化してきたようですが、今でも新型インフルエンザ情報として全国で毎日40〜50名が新たな感染者として報告が続いています。大田区の発熱センターへの電話相談もピーク時には1日200件以上ありましたが現在は20件程度に落ち着いてきたそうです。現在までのところ、大田区内での新型インフルエンザの発生は8件で、そのうち5件は米国からの帰国者、3件は国内感染者です。6月12日WHOはフエーズ6を宣言し、新型インフルエンザは世界的に蔓延している状況であると発表しました。諸外国の感染状況から判断して感染者が日本国内へ流入することを止めることは出来ず、今後も患者発生は持続し秋冬に移行するものと予測されています。

ハイリスクグループについて
 妊婦、幼児、高齢者、慢性呼吸器疾患(喘息、COPD等)、代謝性疾患(糖尿病等)、腎透析を行っている者等は重症化のおそれがありますので特に注意が必要です。

外来受診について
 厚労省は6月19日新型インフルエンザ対策の運用指針を改定しました。今まではインフルエンザ様の症状が出たら発熱センターへ電話して受診医療機関を指示されていましたが、今後は一般医療機関で外来診療を行うこととなりました。患者は入院措置ではなく、外出を自粛し、自宅療養する、基礎疾患のあるハイリスクグループにはタミフル・リレンザ等の抗ウイルス剤を早期投薬する方針となりました。
 6月30日の報道では大阪府で40台の女性教師からタミフルが効かないウイルスが発見され、デンマークに次いで2例目と言われています。リレンザは有効だったそうです。

企業の準備について
 秋冬の大規模流行を予測して現時点が絶好の準備期間と位置づけています。大流行になると4割が欠勤すると言う予測もありますので事前の準備はしておきましょう。
1) 危機管理体制の構築
2) 連絡網の整備(携帯電話、メール、ファックス等)
3) 情報収集(取引先、出張先の地区情報)、社内への周知方法の検討
4) 病気、体調不良で休める体制、欠勤者が出た際の運営体制、(在宅勤務は可能です)
5) 物品の備蓄(マスク、手指消毒用品、飲料水、短期の食料品、薬品)
 不況の時期に出費のかさむことで憂鬱になりますが、準備は怠りなくお願いいたします。


初めまして!!(^-^)/″   大田地域産業保健センター コーディネーター 岡部花枝
 皆さまは、月に一度の健康相談コーナーをご利用されたことはありますか?これからは、私も保健師として健康相談に参加し、皆さまの健康づくりのサポートをしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


平成21年6月

新型インフルエンザについて

 メキシコ共和国から始まった新型インフルエンザ(豚インフルエンザ・swine-origin influenza・ A(H1N1))も大分落ち着いてきたようですが、一時は危険国から飛来した航空機の検疫等が厳重に行われ、市内ではマスクや消毒用アルコール、ポンプ型の手指消毒液が不足したりしました。今回の新型インフルエンザは感染力、伝播力は強いが強毒性ではなく、臨床的には季節型インフルエンザと同程度ではないかと言われています。抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)が有効な点も従来の季節型インフルエンザに類似しています。しかし、弱毒型といっても油断は禁物で、アメリカ、メキシコでは死者も出ていて、基礎疾患として糖尿病や喘息を持っている方や高齢者は注意が必要です。死亡者の大多数は細菌性肺炎が原因で死亡したと言われていて、この点では高齢者は肺炎ワクチンを打って予防するべきかもしれません。予防対策としては特に変わったことはなくうがい、手洗い、マスクの着用、なるべく人混みには行かないこと等で従来の対策と同様です。
わが国へのインフルエンザの侵入に対して航空機を主にして空港を中心に警戒していたところ、渡航暦の無い高校生のグループから発見されて行政側も驚いたようです。出入り口をしっかり戸締りしていたら、犯人は既に室内にいた状況でしたが死者も無く終息しそうで厳しく行われていた検疫体制も緩和されつつあります。

「患者や濃厚接触者が活動した地域等」から帰ってきた者とは?
厚生労働省のホームページに掲載されています。日々変更されますが6月1日現在の記事による地区を上げてみます。出張等で行く場合には注意が必要でしょう。

@ 感染防止地域(主に感染防止に努める地域)滋賀県大津市、京都府京都市、(中京区、下京区)
A 重症化防止地域(主に重症化の防止に重点を置くべき地域)大阪府(大阪市、高槻市、東大阪市)
B その他患者発生の報告のあった自治体・兵庫県(神戸市、尼崎市、西宮市、姫路市)
  埼玉県、東京都(八王子市、大田区)川崎市、静岡市、和歌山市、福岡市

 目黒区の住民ですが大田区の医療機関に入っていて発見されたので大田区の発生となっています。風邪の症状で医療機関を受診してインフルエンザ迅速診断キットでA型と出た場合は保健所に届け出ることになっています。上記の他に千葉県、愛知県、墨田区も報告がありますがこれから掲載されるものと思われます。
この他に米軍横田飛行場でカルフォルニアから飛来した4ヶ月の乳児が新型インフルエンザを疑われましたが陰性であったようです。この乳児の母親と周囲の座席にいた13人も陰性が確認されて隔離も解除されました。
新型インフルエンザは数年後には季節型インフルエンザとして毎年流行を繰り返すようになるはずです。過去にスペインかぜ、ソ連かぜ、香港かぜも2〜3年の間に流行を繰り返し国民の殆どが罹患して季節型と(seasonal influenza)なっています。スペインかぜに例をとると、スペインかぜは1918年から1920年にかけて日本国内で2回流行していて48万人の死者が出ています。この数字を基に当時の人口から罹患率を出して現在の人口に置き換えると約108万人が死亡することになります。当時はウイルスの検出法、ワクチン、抗ウイルス剤、抗生物質等が無い時代ですので事情は少し異なりますが人や物質の流通は当時とは桁違いに増加しているし、流通速度も桁違いですので伝播のスピードも速くなっています。そのような理由から豚インフルエンザも今冬の流行が懸念されています。若年層を中心に大流行になる可能性があるからです。
企業としても対策を立てておく必要があるかもしれません。


平成21年5月

結核について

 最近の新聞やテレビのニュースで人気お笑い芸人が肺結核に罹り話題になっていました。共演者や友人関係、出演した新宿の劇場に来ていた観客にも感染したおそれがあるとニュースキャスターの方が話していました。たまたま、話題性のある芸能人に感染したために大きなニュースとして扱われていましたが、時々学校や学習塾で先生から感染した例や保育園の保母からの感染例が報告されます。また、病院の看護師は患者からうつされることがあり、これは労災事件としても扱われます。今回は結核について書いてみます。
結核はわが国の「国民病」として戦前から長い間死亡率の第一位を占めてまいりました。わが国の結核対策は明治22年兵庫県須磨浦に結核療養所を作ったのが始まりです。大正8年には旧結核予防法が作られて戦前、戦中の結核予防対策の柱となりました。1950年(昭和50年)の統計では死亡率第一位は結核で121、769名の方が結核で死亡しています。その後、健康診断、予防接種(BCG)、患者管理、結核医療の進歩、公費負担制度によって結核患者の征服に成功し、平成15年の結核による死亡者は2,336名で死亡率は25位まで下がりました。順調に下がってきたかに見えましたが平成9年以後3年連続して結核患者が増加しました。厚生労働省は平成11年に「結核緊急事態宣言」を出して再興感染症として結核の怖さ、予防の重要性を呼びかけるとともに、予防手引きの作成、結核への啓発活動を始めました。

感染のルート

 結核は症状の進んだ患者の咳やくしゃみに含まれる結核菌が小さな粒子(飛沫核)となり空気中に飛び散り浮遊して、これを吸い込むことにより感染します。飛沫が空気中に広がり、汚染された空気を吸い込むことにより感染するため空気感染(飛沫核感染)といわれたりします。私達の経験した例ではカラオケ個室での感染やサウナで宿泊した人の感染例があります。若い人の感染はこのようなケースが多く、ネットカフェ、マンガ喫茶等で夜を過ごす人達は感染リスクが高いと思います。感染者の年齢分布を平成16、17,18年の3年間で見ますと0〜14歳は0.4%、15〜19歳が1%、20〜39歳が18%、40〜59歳は21%、60〜79歳は38,6%、80歳以上は21%です。平成18年度の新しく発病した患者数は26,384名で4人に1人は80歳以上です。免疫力の落ちている幼少児や老人はハイリスクグループです。因みに平成15年は31,638人でした。平成18年の集団発生は253件で学校が69、病院が58、福祉施設が11、その他115箇所でした。結核患者は地域による格差もあり都会では多く、山間部等では少ない、都内でも島嶼部はきわめて少ない傾向があります。人口10万対で見ると大阪57,0神戸32,3東京特別区29,8となり、少ない県は長野県11,8宮城県11,9で、大阪は長野県の4,8倍神戸2,7倍東京2,5倍多いことになります。都内でも山谷地区、大阪ではあいりん地区に多く発生しています。統計で見ますと日本では1日に72人が新たに結核を発病して毎日6人が結核によって死亡しています。世界では毎日900万人が発病して、500万人が結核死しています。エイズ、マラリア、結核が世界の三大感染症として重要視されています。日本では20代の結核が急上昇していますがその背景としてアルバイト労働者の増加(健康診断を受けない)不規則生活(ネットカフエ、フーゾク従業)海外交流等が考えられます。また、公衆衛生未発達、未整備な国(アジア諸国等)からの入国者も結核が多いことが分かっています。

諸外国と日本の結核発病率(10万対)
 結核患者数はカナダ4,4アメリカ4,5スウェーデン5,4オーストラリア5,6ドイツ6,1オランダ6,1デンマーク6,1イタリア7,1フランス7,9イギリス13,5日本19,8です。日本は先進国のなかでも際立って結核の多い国として有名です。2週間以上にわたって微熱、咳、たん、倦怠、体重減少等がある場合は風邪かなと軽視することなく早めに医療機関で検査を受けましょう。


平成21年4月

便秘について

 便秘は日常多く見られる症状で悩んでいる方も多いようです。便秘とは排便が障害されて腸内に異常に糞便が貯まった状態を言います。通常は1週間に2回以下の便通になると腹部膨満などの症状が出て不快となり学習効率や産業能率の低下につながります。
 便秘には種類があり一過性の便秘は食生活や生活習慣の変化、精神的ストレス、何らかの薬剤の服用している際に起きます。慢性便秘(常習性便秘)は弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分けられます。整理して分類すると以下のようになります。

1) 一過性便秘・・・食事、生活様式、ストレス、服薬。便秘しやすい薬として、血圧を下げる薬、尿量を増やす薬、咳止め薬、肩こりの薬等があります。
2) 弛緩性便秘・・・老人、長期臥床、パーキンソン病、うつ病、下剤乱用、
3) 痙攣性便秘・・・過敏性大腸、麻痺性腸閉塞、腹部手術後
4) 器質性便秘・・・腫瘍、腸閉塞、胆のう炎
5) 直腸性便秘・・・直腸壁の知覚低下

 また、便秘の種類によって選ぶ薬も異なります。肛門の出口まで便が来ているのに排便出来ない直腸性便秘には飲むタイプの下剤は使わずに、排便時刻になったら肛門を洗浄便座で洗浄水を使って肛門に刺激を与えて頑張ってみたり、浣腸、座薬の使用がお勧めです。また、便意を催さなくても決まった時刻に便座に座って洗浄水で刺激したりして排便のクセを作る努力も必要です。一方、腸の送りが悪い便秘には腸を刺激する下剤が適しています。下剤を服用した翌日に排便を促しますので、トイレにしゃがんで排便をする努力も必要です。便が直ちに出ないからといってあせる必要はありません。下剤は最小限、必要なときに使うようにして、出ないからといって次々に服用することはやめましょう。下剤の力をかりないと排便が出来ない人になってしまいます。

便秘の予防

1) 食事・・・繊維の多い野菜、果物を食べる。海藻類、こんにゃく、バナナ、りんご等、食事量が不足でも便秘になるので、食事は抜かないで規則正しく摂りましょう。
2) リラックス・・・ゆっくりしたトイレ環境、腹式呼吸、時間的余裕。
3) 排便習慣・・・便意がなくともトイレに行く、トイレタイムを十分にとる。便を我慢しない(15分以内にトイレに行く)。
4) 排便姿勢・・・「考える人」ポーズで力みやすい姿勢。
5) 運動・・・運動により腸の動きを良くする。腹部のマッサージ。
出すものは出して、余計なものは溜めないようにして仕事を頑張りましょう。



平成21年3月

「脂肪肝」について

 今年度からメタボリックシンドロームに注目した健診が始まりました。40歳以上の方は腹囲を測られたり、喫煙習慣を聞かれたりして保健指導の対象となるようになりました。
 皆様の中で健康診断や人間ドックを受けた際に「脂肪肝ですね」と指摘された方がいると思います。健診の結果で「脂肪肝」と診断される人は受診者の3割にのぼるといわれます。
 「脂肪肝」は過栄養と大量飲酒が主な原因と言われていて近年増加の傾向にあります。大量飲酒の殆どの方に「脂肪肝」が見られます。日本酒換算で5合程度の飲酒を一週間続けるだけで「脂肪肝」が惹起されるといわれます。肝臓の細胞が脂肪滴に置き換えられて、肝細胞全体の30%以上が脂肪滴化した状態を「脂肪肝」といいます。診断としては腹部超音波(エコー)やCTの検査で肝臓の画像が白っぽく輝いて見えることで診断がつきます。また、肝臓に針を刺して肝細胞の一部を採取して検査する方法(肝生検)もあります。アルコール性脂肪肝はアルコール性肝炎に進みます。「ASH」といいますが、毎日3合以上の日本酒、ビール大瓶3本以上、ウイスキーダブルで3〜4杯以上を飲む方の大部分に認められ、生活習慣病として位置づけられています。一方、肥満者の増加に伴って非アルコール性脂肪肝になる方も増加しています。「NASH」といいますが飲酒の習慣の無い人でも肝炎から肝硬変に進むケースが存在することが分かってきました。やはり、過栄養、飽食の影響が考えられていて、わが国では約100万人の方が「NASH」になっているといわれています。治療ですがアルコール性肝炎(ASH)の場合は何よりも禁酒が鉄則です。非アルコール性肝炎(NASH)の場合は低カロリー食、栄養バランスの良い食事に心掛けて適度な運動を続けることです。
ライフスタイルを今一度見直して「脂肪肝」を防止しましょう。

脂肪肝が疑われる人の生活チェック表(岡上 武先生による)
 @ 毎日お酒を飲んでいる
 A 太っている(腹囲、男85・女90センチ以上)
 B 夜食をとる習慣がある
 C 早食い、まとめ食いをする
 D 好き嫌いが激しい
 E 甘い物や脂っこいものが好き
 F カロリーを摂りすぎている(標準体重×35カロリー以上)
 G 塩分を摂りすぎている(1日10グラム以上)
 H 運動をしていない(8,000〜10、000歩程度)
 I 生活が不規則


平成21年 2月

咳エチケットについて

 厳しい寒さが続いていますが鉄工団地の皆様は元気に仕事に励んでいることと思います。
 また、今年は例年以上にインフルエンザに罹る方が多いと報道されていますので事業場内の感染予防には「うがい」「手洗い」「マスクの着用」に努めてください。
 「咳エチケット」を守りましょうと提唱されていますので各事業場でも努力してみてください。「咳エチッケト」とは風邪やインフルエンザを「うつさない」「うつらない」ためのマナーであります。

@ 咳やくしゃみをする際にはテイシュペーパーなどで口と鼻を押さえて、他人から顔をそむけて1メートル以上離れること。

A 鼻水や痰などを処理したテイシュペーパーは散乱しないようにして、フタつきのゴミ箱に捨てる環境を整えること。

B 他人に感染させないために、症状がある人は必ずマスクの着用を促すこと。

 マスクについては医療現場で使われる透過性の低い「サージカルマスク」が望ましいと言われますが、通常の市販されているマスクでも咳をしている人の飛沫(ウイルスを含む)を拡散させない効果はあると考えられています。ここで、マスクについて述べさせていただきます。
 「サージカルマスク」とは本来、外科手術等の際に術者(医師等)の唾液などが飛沫として患者の臓器などにかかって汚染しないように作られたもので、米国ではFDAと言う機構が定めた検定を通ったものを指します。わが国の製品にもこの検定を合格したものもあります。わが国でこのような検定が可能な機関としては日本化学繊維検査協会があります。
 「N95マスク」N95は米国の国立労働安全衛生研究所の規格でN95のNはNot resistant to oil (耐油性はありません)という意味です。他にはR (resistant to oil ・耐油性あり)やP (Oil proof・耐油性あり)といった規格があります。通常、医療現場では耐油性の必要がないのでNの規格が使われます。95というのはマスクのフイルターが最も捕集しにくい(フイルターを通過してしまう)0,3μmの塩化ナトリウム(Nacl)が95%捕集されるという意味です。インフルエンザの飛沫は5μm程度で結核菌の飛沫は1〜5μmとされていますから通過はできません。
 「DS2規格防塵マスク」国家検定による規格に合格した防塵マスクであり産業現場では通常使用されている名称ですがN95の名称が一般化してしまいDS2はあまり知られていません。しかし、性能的には同一と考えていいものでありDSはdisposable solid のことで、1〜3のグレードが設けられています。欧州ではFFP2という規格でほぼ同じ性能を持っています。ただし、これ等の機能はマスクについてであり実際には顔とマスクの間に隙間がありマスクのフイルターを通過しない空気が漏れて入ることがあり、顔に出来るだけフイットさせることは大事なことであります。動作によってもフイットの程度に差があります、普通の呼吸、深呼吸、顔の上下、左右への動き、顔をしかめる、声を出す、腰を曲げる等でフイットに差が出ます。100%完全なものはありませんが「咳エチケット」として通常のマスクの励行をお勧めします。

糖尿病についての追加

 前回糖尿病について書かせてもらいました。年末であったため原稿の締め切りが通常よりも早くなっていましたが、原稿を提出した翌日12月26日に厚生労働省から糖尿病調査結果の発表がありました。それによりますと、糖尿病の疑いのある成人は2210万人に上りこの10年間で1,6倍となり前年の調査よりも340万人の増加となりました。
 年代別では70歳代では37,6%60歳代では35,5%50歳代で27,3%40歳代15,3%となっています。背景として食生活の乱れ(野菜の摂取不足)運動不足(男女共7割以上の方が不足)が指摘されています。前回も糖尿病の増加傾向について述べたところですが今回の発表では糖尿病の増加ペースが一段と加速されていることが示されました。食生活、運動に気をつけましょう。


平成21年 1月

糖尿病について

 新年明けましておめでとうございます。昨年の後半はアメリカの金融機関の破綻が発端となった経済不況の嵐が全世界に波及して大混乱を起こしてしまい大変な年になりました。
 今年も厳しい状況が続くと予想されていますが頑張っていきましょう。
 年末から年初にかけて美味しいご馳走や飲酒の機会が増えますが、今回は糖尿病について書かせてもらいます。

増えている糖尿病
 糖尿病は日本だけでなく全世界で増加している病気です。今後はアジアを中心に増えていくだろうと予測されている病気です。わが国における糖尿病患者数は平成14年に行った厚生労働省の調査で「糖尿病が強く疑われる人」が740万人、「糖尿病が否定できない人」が880万人で両者を合わせると1,620万人でしたが、その後の平成18年の調査では「糖尿病が強く疑われる人」820万人、予備軍が1,050万人、合計1,870万人、5年間で250万人も増加していました。増加率は15,4%になりますが予想以上のハイペースです。日本人の40歳〜74歳の男子で27,1%、女子では23,7%が糖尿病か、その予備軍に相当します。国民の40歳以上で6人に1人、60歳以上の3人に1人が糖尿病または予備軍に該当します。世界では糖尿病の多い国として1位がインド(1,940万人)
2位中国(1,600万人)3位アメリカ(1,390万人)4位ロシア5位日本となっています。
 この統計は1995年のものですが、数字は予備軍を除外しています。2025年の予測では日本は10位に後退していて1位インド、2位中国、3位アメリカは変わりません。4位にパキスタン、5位インドネシア等が予測されています。
 糖尿病が増加した背景には食生活の欧米化によるカロリーの摂りすぎ、自動車や電化製品の普及による運動不足、肥満の増加等が挙げられます。生活習慣病(メタボリックシンドローム)の代表選手として、昨年から始まった特定検診・保健指導の重点項目となっています。糖尿病関係の医療費は年間1兆円以上といわれていますが、合併症により足を切断する人が年間3,000人、失明が3,500人、腎透析になる人が14,000人と報告されています。医療費をたくさん消費する疾患として注目されている理由です。

糖尿病には1型と2型があります。
 1型糖尿病はインスリン依存型糖尿病とも呼ばれて、すい臓からインスリンが分泌されない型で小児や若年者に多いタイプです。糖尿病の約5%がこの型でインスリンによる治療が必要です。糖尿病の約95%は2型糖尿病で遺伝的な要因や生活習慣が原因となる糖尿病です。過食、運動不足、肥満、アルコール過飲、ストレス、加齢等の要因が指摘されています。生活習慣の改善、内服薬、インスリン等の治療があります。

世界糖尿病デー
 11月14日は国連の決議によって決められた、「世界糖尿病デー」です。インスリンを発見したフレデリック・バンテイングの誕生日にあたります。東京タワーや鎌倉の大仏等がブルーにライトアップされます。世界各国で記念碑的建造物がブルーにライトアップされます。