かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合




労働衛生コンサルタント北條先生
平成23年
1月 逆流性食道炎について    
2月 腰部脊柱管狭窄症について
3月 花粉症について
4月 東日本巨大地震について
5月 長期化する避難所生活と「生活不活発病」
6月 O-111による食中毒について
7月 痛風と高尿酸血症について
8月 PTSD(心的外傷後ストレス障害)について
9月 放射線被曝による日常影響
10月 定期健康診断と健診項目について
11月 RSウイルスについて
12月 中年男性のための健康講座(尿トラブル)


平成23年12月

中年男性のための健康講座(尿トラブル)

 「酉の市」が始まりましたが秋らしくない暑い日が続いています。皆さんは夏の猛暑も無事乗り切って元気に働いていることと思います。
 今回は中年男性、特に50歳代〜60歳代の約半数の方が悩んでいる尿トラブルについて書いてみます。男性が50代を過ぎたころから「トイレが頻繁になった」「排尿に時間がかかる」「排尿の勢いがなくなった」「尿のキレが悪くなり、しばらく振っていないとチビ漏れする」「夜間の排尿回数が増えた」「若いころのようなガマンができない」などの訴えが増えます。男性にだけある前立腺が老化とともに肥大してきたために起こる現象です。前立腺は膀胱から尿道に出る場所に尿道の全周囲を取り囲むようにあります。そのため前立腺が肥大しますと尿道を圧迫するため尿道は狭くなり前記のような様々な症状を招きます。
 前立腺肥大症の症状の代表的なものは次の7つに分けられます。
 1)頻尿…一度排尿した後、2時間以内にまた排尿する。
 2)残尿感…排尿しても、まだ尿が残っている感じがする。
 3)尿意切迫感…ガマンできないほど急に排尿したくなる。
 4)排尿の勢いが弱い。
 5)排尿している間に尿が途切れる。
 6)夜間頻尿…排尿のために夜中に何度も起きる。
 7)尿が出にくく排尿の始まりに時間がかかり、排尿のために下腹に力を入れる必要がある。
 尿のトラブルは他人に相談しにくいため年齢のせいとガマンしがちですが放置して進行すると尿閉や腎機能の障害を起こします。前立腺がんですと命にかかわる事態になりますので医師に相談してみることを勧めます。



平成23年11月

RSウイルスについて

 夏の猛暑も終わりインフルエンザの流行する時期となりました。昨年は新型インフルエンザの流行で大騒ぎでしたが、今年は今のところ新型の流行は報じられていません。
 しかし、この季節には様々なウイルスによる上気道感染(一般の風邪)が流行します。
ウイルスの種類は200種とも言われています。
 インフルエンザほどは有名ではありませんが、今年は9月ごろからRSウイルスによる風邪が流行して、調査データのある平成16年以降では患者数が最多を記録しました。第37週(9月12日〜18日)では患者数1,414名で昨年10月とほぼ同じ水準となり、大流行の兆候かと警戒されました。
 RSウイルスによる感染者は毎年2万人ほどが入院しています。RSウイルスに感染すると4〜5日の潜伏期の後に発熱、鼻水、咳などの症状が出ます。   
 乳幼児は肺炎など合併して重症になることもあります。生後4ヶ月未満では感染の機会は低いが、感染すると乳幼児突然死症候群として突然死につながり、無呼吸が起こりやすいといわれています。母親の抗体では感染を防ぐことはできません。
 乳幼児の50〜70%は1歳までに罹患し、2歳までにはほぼ100%が感染すると言われています。  
 RSウイルスの感染力は強く、飛沫と接触の両方で感染します。このウイルスによる免疫のでき方が微弱なために繰り返し感染を起こします。
 感染回数が増えるとともに免疫力をつけていきます。予防法としては手洗い、マスク等で「咳エチケット」の励行をすることであります。
 遺伝子組み換え技術によるモノクロナール抗体製剤(パリビズマブ)が認可されていて、早産児や慢性肺疾患を持つハイリスク児に限定して用いられます。
 インフルエンザに対するタミフルのような、RSウイルスに対する抗ウイルス剤は開発されていません。
 RSウイルス感染症は子供に多い病気ですが風邪を引かないように注意しましょう。



平成23年10月

定期健康診断と健診項目について

 10月10日は「体育の日」で国民の祝祭日です。例年、各地でスポーツの催しが行われて高齢者の体力測定なども行われるようです。皆さんは毎年、定期健康診断を受けていると思います。健康診断には様々な項目が設けられていて、健診が済んでから送られてくる個人票を見てもよく分からない場合があります。今回は健診項目の内容を簡単に説明したいと思います。まず、問診の項目では自覚症状を聞きます。自覚症状とは自分で感じる症状、すなわち頭痛、腹痛、腰痛などのことです。特に症状は訴えていないが「顔色が悪い」「元気がない」などは他覚症状として記録します。その他、家族暦は身内に糖尿病がいないかなどの遺伝的な病気を考えて質問します。既往歴は今まで罹った大きな病気について聞きます。血圧測定で高血圧だと心臓、腎臓、脳血管に悪影響を及ぼします。BMIですが身長と体重の比率で数値を出しますが18.5〜25.0が正常範囲です。LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも言われ血液ドロドロや血管が詰まる病気の原因になります。中性脂肪はエネルギー源なので大事なものですが多過ぎると脂肪肝や肥満の原因になります。HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とも言われますが、少な過ぎると動脈硬化や心臓病を引き起こします。血糖が高いと糖尿病やすい臓の病気を疑います。ヘモグロビンA1Cは糖尿病の診断になる指標です。GOT(AST)やGPT(ALT)は肝臓病、心臓病の疑いがないか調べる検査です。γGTPの上昇はアルコールの摂りすぎが疑われます。尿酸が高いと痛風を疑います。クレアチニンは腎臓の働きを調べています。主な検査項目とその診断的意味を簡単に書いてみました。健診の結果を受け取ってもよく分からないという方は、第二、第四火曜日の午後12時30分から組合事務所二階で健康相談を行っていますのでご利用下さい。費用はかかりません。



平成23年9月

放射線被曝による日常影響

 東日本大震災による東京電力福島第一原発から漏出、拡散した放射性物質の影響が拡がっています。専門家の先生や政治家、政府高官のコメントをきいても数値基準がブレたり、予想外のことが次々と起きて何を信じていいのか分からない状況です。今なお7万人の方々が放射性物質の恐怖のため避難生活を強いられていると報じられています。市場に流通していた牛肉から厚生労働省の設けた規制値を超えたセシウムが検出され、学童の給食に出されていたと聞くと言葉を失ってしまいます。野菜も肉も果物も危ないと思っていたら、岩手県の被災地から京都の「大文字焼き」に送った木材からもセシウムが検出され、焼くことを中止したと報道されて広範囲に影響がでていることに驚きました。

「ウガイ薬を飲まないで下さい」
 放射線事故があったら安定ヨウ素剤を服用させて甲状腺に放射性ヨウ素が吸収されないようにします。市販品の、のどスプレー、ウガイ薬、ルゴール液、ヨードチンキ、消毒用石鹸等にヨウ素が含まれていることから、これらを飲むといいと言うデマが流れました。これは絶対に止めてください。理由は@これらは飲み薬ではなく、ヨウ素以外の成分も混じっています。A飲んでもヨウ素の含有量が少なく予防効果はありません。ワカメ、昆布もヨウ素は含まれますが、ヨウ素の量が一定でなく消化吸収に時間がかかり効果は不十分です。安定ヨウ素剤は被曝後1時間以内の服用が勧められています。また、40歳以上の方は服用の必要がないと言われています。

一般人の年間被曝限度
 国はこれまで年間被曝限度を1mSv(シーベルト)としてきました。緊急時ということで限度を20mSvに引き上げました(暫定基準値)。福島の母親達の運動で子供は1mSv以下を目指すことになりました。(そんなんでいいのかなぁ)伊達市や川俣町では年間被曝量が20mSv以上に達すると報道され、その他にもホットスポットが点在します。政府高官が「ただちには健康に影響を及ぼす線量ではない」と繰り返しますが、100〜250mSv以下の低線量被曝ではすぐに目立った健康障害は出ません。放射線被曝の健康障害は急性障害と晩発障害に分けられていて被曝後数年〜数十年を経て出てくる病気もあります。大量の放射線に被曝すると短時間のうちに嘔吐、下血、吐血、脱毛、紫斑、白血球減少などの症状が出ますがこれが急性障害です。晩発障害には白内障、再生不良性貧血、がん等があります。白内障は放射線被曝により目の水晶体の細胞分裂が阻害されるため、高い線量では数ヶ月後、低い線量では数年の潜伏期を経て発症しますが、その機序は明らかでありません。晩発障害で最重要視されるのは「がん」です。細胞の分裂と増殖に関与する遺伝子に突然変異が起きて細胞増殖のコントロールがきかなくなります。「癌は遺伝子の病気である」と言われる所以です。遺伝子の突然変異は被ばく線量に依存して直線的に増加します。したがって低い線量の被曝でも、それに見合った確率でがんの頻度は増加します。現在、低線量被曝についての正確なデータが無いため、世界的に多くの議論がなされているのが現状です。放射線による発病の研究で最も大規模で精緻な疫学研究は、広島・長崎の12万人分の被爆者調査で1950年以来約60年間、現在も続いています。若年者ほど被曝によるがんの頻度が高いことが分かっています。一日も早く福島第一原発事故が終息して欲しいですね。



平成23年8月

PTSD(心的外傷後ストレス障害)について

 猛暑が続いて熱中症で倒れるかたが増加していますが皆さんは元気に頑張っていますか。
数百年に一度といわれる東日本大震災からもう5ヶ月が経ってしまいました。被災された地区の復興も少しずつ進んでいるようですが、長引く避難生活に心身ともに疲労困憊している様子が報道されていて心よりお見舞いを申し上げます。震災から時間が経つにしたがって特に問題になっているのはメンタル面で不調を訴える方が増えていることです。
 PTSD(心的外傷後ストレス障害)というのは極端に恐ろしい体験、生命の危険を感じるような出来事に短時間または持続的に遭遇した後に、それが心のトラウマ(心的外傷)となって数週から約6ヶ月以内に発症する病気です。恐ろしい体験としては自然災害、交通事故、凶悪犯罪の被害者、性的暴行被害者、肉親の突然死、自宅の火事などが代表的です。症状としてはある腫の無感覚、情動の鈍さ、周囲への無関心や鈍感さ(ボーッとして魂の抜けたような状態)となります。よく知られている症状にフラッシュバック(進入的回想)があります。恐ろしい出来事の場面が繰り返し思い出されたり、何回も夢で見たりして、不安、不眠、恐怖、抑うつ状態に陥り、時には興奮状態、攻撃的な態度になる状態です。
 予防としては、恐ろしい体験に似た状況や連想させる物を避けることです。幼児や小学生にも赤ちゃん返りが起き、落ち着きのなさ、集中力の低下、学業不振などが起き、友達関係も問題となります。
 学童期の子供に見られる行動として

@ 体験したことを繰り返し話し、恐怖を示す。
A また同じような体験をするのではないかと不安がる。
B 集中力がなくなり、学力低下する。行動、気分、性格が変わる。
C 赤ちゃん返りをする(指しゃぶり、おもらし、赤ちゃん言葉、一人でトイレに行けない)
D 睡眠障害(悪夢、不眠、夜驚)。無口になる。

 中学生以上の子供はほとんど大人と変わらない反応が見られます。
 訴えや症状が激しい時は、専門家(精神科)へ相談しましょう。
 健康相談日(第二・第四火曜日)をご利用下さい。無料です。



平成23年7月

痛風と高尿酸血症について

例年行われる会社の定期健康診断が終了して健診の結果を受け取った方も多いと思いますが今年の結果はいかがでしたか。今回は痛風について述べてみます。
痛風は高尿酸血症(尿酸値が高いこと)の状態が数年間続くと激痛をともなう痛風発作を起こします。平均して5年以上続くと発作を起こすといわれています。最初は年に1~2回ですが放置すると頻繁に起こすようになります。定期健康診断等で尿酸値が高い(7mg/dl以上)と指摘された方は、今は無症状であっても放置せずに医師にご相談下さい。放置しますと多くの場合、痛風発作に発展して、足の親指の関節が赤く、熱をもって腫れます。足以外の部分が痛むこともあります。痛風は昔から「帝王病」とか「ぜいたく病」と称されて肉やアルコールなどの贅沢な食事が原因と言われてきました。しかし、現代では昔に比べると食事も生活習慣も「リッチ」に変わってきましたので、ありふれた病気になりました。日本では30万人〜50万人の方が痛風に罹っていて、予備軍である「高尿酸血症」はこの数字の4~5倍いると推定されています。すなわち、成人男子の4~5人に一人は「痛風予備軍」というわけです。痛風発作は激痛で「風が吹いても痛い」というところから名づけられました。「高尿酸血症」は腎障害、高血圧、心臓病などの合併症を引き起こすことが知られています。さらに、糖尿病、脂質異常症(コレステロール等の高いこと)肥満などのメタボリックシンドロームとも密接に関連します。

生活習慣のチェック
1)男である。(痛風の99%が男性)
2)適正体重を10%以上オーバー(肥満)である。(肥満で尿酸の排泄が悪くなる)
3)レバーや干物が好き
4)激しい運動をしている。(短距離走、マシントレーニング等短時間の激しい運動)
5)社交的、活発な性格。(仕事バリバリ、社交的で沢山食べる)
6)大酒飲み、ビールが好き(ビールは特にプリン体が多い)
7)ストレスの多い環境
8)親兄弟に痛風がいる。(体質的な遺伝要因があるようです)
9)足の親指の付け根が痛いことがある
10)健診で尿酸値が高い    *このチェックで6〜8点の人は早めに生活改善を

食品について
尿酸値を下げるには、体内で尿酸の原料になるプリン体を多く含有する食品は避けて栄養バランスのいい食事に心がけましょう。
プリン体・・・肉や肉汁、内臓に多く含まれています。
プリン体の多い食品・・・レバー、あんきも、かにみそ、あじ干物、えび等が代表的です。
アルコールの飲みすぎは尿酸値を上げますが、肥満にもつながりますから適当にしてください。尿酸をスムーズに排泄させるには血液を濃縮させないように水分をタップリ摂る必要があります。



平成23年6月

O-111による食中毒について

 6月に入り暑い日が続いていますが、気温の上昇や入梅の季節にともなって湿度が多くなってくると食中毒に対する注意が必要です。今年は腸管出血性大腸菌(O−111)による食中毒のニュースが4月29日に発表されて大騒ぎとなりました。焼肉店で生肉(ユッケ)を食べた方々のうち富山県礪波市(6歳の男児、40代の女性、70代の女性が死亡)、と福井県福井市(未就学児童が死亡)での死亡事例が報道されました。同一系列の店舗で同じメニューを食べた方が短期間に4名も死亡したことで腸管出血性大腸菌の怖さが再認識されました。今回の事件は関東地区でも発生していて、北陸の事件と同一系列の横浜市旭区上白根店で喫食した女性(19歳)が入院治療中で意識不明の重態と報じられています。
 遠い北陸地方の事件で関東は無関係と油断をしないで下さい。

腸管出血性大腸菌について
 1982年アメリカのミシガン州、オレゴン州でハンバーガーによる集団食中毒事件があり、患者の糞便から大腸菌O-157が食中毒の原因菌として分離されたのが最初です。まだ30年程度しか経っていません。日本では1990年埼玉県の幼稚園で飲料水として使われていた井戸水がO−157に汚染されていて園児2名が死亡、268名に及ぶ集団発生がありました。1996年には関西地方を中心に大規模食中毒が発生し、給食の仕出し弁当が原因とされました。大阪府堺市地方では5,591名の集団発生がありカイワレダイコンが犯人かと話題になりましたが冤罪だったようです。1998年には北海道産のイクラが原因で7都府県49名が発症、2001年には「牛タタキ」が感染源で7都県240名の発症例が報告されています。

腸管出血性大腸菌について
 ヒトや家畜の腸内には大腸菌は普通に存在していてヒトの健康維持に欠かせない大事な働きをしています。その中で下痢などを引き起こす病原性大腸菌があります。これは5種類に分類されていますが、その中で病原性の強いベロ毒素を産生するものが腸管出血性大腸菌です。大腸菌はO抗原によって種類が分けられていて181種類あります。O-157と言うのは157番目であることを意味しています。患者から最も多く検出されるのはO−157で次いで今回話題になったO−111、O−026等が原因菌の代表的なものです。

どんな症状ですか
 汚染された食品を食べてから2〜5日の潜伏期をおいて、激しい腹痛、水様のひどい下痢となって、続いて血便が出るようになります。血便は最初のうちは少し混じる程度ですが次第に便全体が血液のようになります。発熱は37度程度と軽い場合が多く見られます。数日の経過で溶血性尿毒症症候群(HUS)となり意識不明になり重篤となります。

予防について
 O-157、O−111、O−026は牛の腸管に棲息しています。生レバー、ユッケ、牛タタキなどの生肉は食べないほうがいいでしょう。6月から9月に多く流行しますが冬季にも食中毒はありますので注意してください。@手を洗うA食品は加熱して(75度以上1分以上)B冷蔵庫を過信しないC下痢したら入浴しないでシャワーにする
 病原性大腸菌の他にも腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、カンピロバクター等による食中毒があります。食品に注意して夏を乗り切りましょう。



平成23年5月

長期化する避難所生活と「生活不活発病」

 早いもので東日本大震災から2ヶ月が経とうとしています。テレビも新聞も連日福島第一原子力発電所からの放射性物質の拡散による被害や住民避難の様子を報じています。住民の汚染も心配ですが、農産物から土壌、酪農の家畜まで幅広い被害が報じられていて、事故による放射性物質の放出がなかなか終息しない現状に全国民がイライラしています。事故の規模も25年前に起きた最悪の原発事故である、チェリノブイリ事故と同等のレベル7になったと報道されていて、東京に居ても野菜や水が汚染されないか心配な状況です。外国人労働者たちは欧米系の人達もアジア系の人達もさっさと本国へ帰ってしまいました。奥さんと子供が帰国して一人取り残された日本人の父親もいるようで、これも震災による「想定外」のことです。震災から2ヶ月近く経過しても、未だに約20万人の方が避難所生活を強いられているようで、誠にお気の毒なことであり衷心よりお見舞い申し上げます。避難所生活が長引くにつれて病気の内容や対策も変わってきて、当初の怪我や救急の問題から慢性的な疾患、いわゆる「持病」に対する治療の問題が大きく浮上してきています。衛生状態の悪化やガレキ除去作業により舞い上がる乾いたヘドロや埃の吸引による肺炎が増加しています。石巻赤十字病院の石井医師の話では水道が使えないので消毒液が備えつけてあっても手を洗えない、下水も流れないし、用便後も手が洗えない状態だそうです。その手で配給される「おにぎり」を食べざるを得ないわけですし、体の不自由な老人を介護するヘルパーも使用後のポータブル便器の処理を素手で行っている悲惨な状態だそうです。もうひとつの問題が避難所の狭い空間で周囲の人に遠慮して生活しているわけですが、食事はボランテアから配られる物を食べるしかなく、洗濯も掃除も入浴もありません。動かない生活が続くことで心身の機能が低下して動けなくなることを「生活不活発病」といいます。筋力低下、筋萎縮、床ずれ、立ちくらみ、便秘、失禁などの症状が出ます。特に高齢者や持病のある人が罹りやすいようで問題になっています。
 同様なことは新潟の中越地震の際にも見られました。頻繁に続発する余震で家屋が倒壊するのではないかと恐れて自動車の中で避難生活をしていた人たちが死亡する事件が相次ぎました。この頃はエコノミークラス症候群、ロングフライト血栓症などと言われました。医学的には静脈血栓塞栓症と呼ばれていて、上肢や下肢等の静脈に血の塊(血栓)ができ、この血栓が血流に乗り肺へ流れて肺動脈が詰まると肺血栓塞栓症となります。血管が詰まって血流を阻害してしまうと死亡の危険性が高いのは当然ですが血栓の大きさや、血栓の詰まる部位によっては即死を来たす疾患です。欧米では循環器関係の死亡原因の第三位に上げられている死亡率の高い疾患です。原因としては脱水、長時間の旅行、長期の臥床等で発症します。適当に動くこと、小まめに水分をとることが予防になると言われます。しかし避難所では水分を摂るとトイレの問題があり、特に高齢者は水分を控えている事情も重なったようです。
 予防のポイントとしては
 1)あまり長時間にわたって横にならずに、時々座位をとったりする。
 2)身の回りの片付けなど、小まめに動く。
 3)気分転換に散歩などの運動をする。
 鉄工団地の皆さんはよく働いていますので「生活不活発病」の心配は無いと思います。元気に頑張っていきましょう。



平成23年4月

東日本巨大地震について

 平成23年3月11日午後2時46分頃三陸沖を震源とするマグニチュード9(以下Mとする)の世界でも最大級の地震が発生して大混乱になりました。皆様の工場や職場は無事でしたでしょうか。
 当日は交通機関が止まり何時間も歩いて帰宅した方も大勢いたようです。また、ガソリン、乾電池、水、米、テッシュペーパーが品不足となり救援活動にも支障が出て被災者の救助を困難にしました。さらに二次災害として東京電力福島第一原発の破壊によって放射性物質の漏出・拡散が発生して半径20kmの住民に避難命令が出されたり、野菜、飲料水の放射能汚染で数種類の野菜と牛乳の出荷停止があったりで被害を拡大しました。
 この原稿を書いている3月27日の新聞報道では死者10,489名、行方不明 16,621名と報じられていますがまだまだ増える予想です。
 世界で報道された2000年以降の大地震は
2003年12月26日 ケルマーン地震(イラン)M6,7死者4万人、
2004年12月26日 スマトラ沖地震(インドネシア)M9,3死者、行方不明22万7000名、
2005年10月8日  パキスタン地震M7,6死者10万人、
2008年5月12日  四川地震(中国)M8,0死者、行方不明8万7000人、
2010年1月12日  ハイチ地震M7,0死者、行方不明22万人
で今回の東日本巨大地震M9,0は最大級の地震であったことが分かります。
 50年前にやはり三陸地方を襲った津波の原因になったチリ地震(1960、5月22日、)はM9,5と記録されています。
 因みに関東大震災(1923,9月1日)はM7,9で死者、行方不明105,385名でした。今回の地震では放射線の漏出が大問題となっていて、ベクレルやシーベルトなどの普段は聞いたことのない単位が頻繁に出てきます。
 3月26日の報道では福島第一原発の近くの海水から放射性ヨウ素131が安全基準の1,850倍の高濃度で検出されたと報じています。放射性ヨウ素131は自然界には存在しない物質ですが半減期は8日で比較的短い期間で半減します。放射性ヨウ素を呼吸による吸入や飲食による経口摂取で体内に取り込むと血液に移行して甲状腺に集まります。
 健康被害として甲状腺機能亢進症という早期影響と甲状腺癌が発生するような晩発性影響があります。これを防止するために「原子力施設等の防災対策」に示された指針では安定ヨウ素剤を予防的に服用するとしています。投与法、投与量、投与時期が定められていますので自己判断での服用は勧めません。40歳未満の方が対象で40歳以上の方は服用の必要はありません。
 25年前(1986、4月26日)に起きた旧ソ連のチェルノブイリ事故でも子供に投与されて予防効果はあったと報告されていますし、同時にポーランドでも子供に投与されました。一日も早く放射性物質の漏出がおさまることを祈ります。
 天災も含めて事故の際の危機管理の重要性を学ばなければいけないと思います。
 この度の巨大地震で亡くなられた方々のご冥福と、被災されてご苦労されている方々に心よりお見舞い申し上げます。私たち医師会も薬剤、医療用品、衣類等を積んで交代で現地へ行き医療ボランティアとして参加しています。

 頑張ろう、日本 !




平成23年3月

花粉症について

 大分暖かくなってまいりましたが、この季節になると例年のことですが花粉症の方が増えてきます。花粉症は日本人の15〜20%の方が罹ると言われ、その80%はスギ花粉が原因と言われています。花粉症は欧米では枯草熱(Hey fever)と言われているようです。このように呼ばれているのは花粉症の原因が主として草花の花粉にあると考えられていたからです。世界の花粉症の三大原因として、アメリカではブタクサ、英国ではカモガヤ、日本ではスギ花粉が有名です。この三つを世界の三大花粉症と言うそうです。欧米では牧草が多く、日本ではスギ、ヒノキのような樹木が多いと言う違いがあるようです。花粉症は発作的に反復するくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目の痒みなどの症状が代表的で、花粉症の四大症状と呼ばれることもあります。スギ花粉に反応する人の7〜8割の人はヒノキにも反応すると言われます。スギとヒノキは花粉の飛散する時期が少しズレますので両方に反応する人は花粉症に悩まされる期間が長いことになります。鼻詰まりは匂いが分からなくり、口呼吸することで喉が痛くなり、睡眠不足や集中力の低下になることがあります。目の症状では痒み、ゴロゴロした異物感、涙目や結膜炎を引き起こすことがあります。朝の目覚め時に症状が強く出ることが多く、モーニングアタックと呼ばれます。咳喘息のような症状を呈し、咳が続くこともあります。
 環境因子として、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる微粒子やガソリンエンジンから排出される窒素酸化物などが花粉アレルギー反応を増幅するという報告もあります。同じ森林沿いの住民でも幹線道路沿いで、大型トラック等の多い地区に花粉症が多発するという報告もあります。私の気のせいかもしれませんが京浜島、昭和島の方たちにも花粉症が多いように感じます。予防としては花粉との接触を断つことですが、外出時のゴーグル、マスクの着用は有効であると言われています。花粉は窓や隙間から室内にも侵入します。室内の掃除は花粉を舞い上げないように拭き掃除が推奨されています。加湿器は浮遊している花粉を湿気で沈下させる役目をするようです。外出から帰宅した際は花粉を室内に持ち込まない工夫が要ります。花粉の付着しにくい衣類の着用と、帰宅時は玄関前で花粉を払い落としてから入室する必要があります。洗濯物や布団も外に干さない工夫が要ります。
 治療法ですが、病院や薬店で抗アレルギー剤が広く用いられています。効果がある一方で眠気や口の渇きなどの副作用にも注意する必要があります。最近の抗アレルギー剤のなかには眠気の少ないものも開発されています。用途によって点眼、点鼻、内服に分かれていますが、連用すると副作用のあるものもありますので医師に相談の上、使用することをお勧めします。ステロイド薬も使われることがありますが副作用に注意しましょう。その他、減感作療法や鼻粘膜にレーザー光線を照射して焼く手術などがあります。最近では犬や猫などのペットも花粉症に罹ると言われています。人間の場合は、子供は男の子、成人では女性に多いと言われています。花粉症は飲酒や喫煙で悪化すると言われますので生活習慣に気をつけて頑張りましょう。



平成23年2月

腰部脊柱管狭窄症について

 寒い毎日が続き、インフルエンザが蔓延中の注意報が流れていますが皆様におかれましては元気に勤務していることと思います。また、各地で鳥インフルエンザが見つかったニュースで、大変な情況の地区もあるようですが、幸い人間には患者が発生していないようです。「うがい」「手洗い」「マスク」を励行して予防に努めてください。
 本日は腰痛について述べたいと思います。勤労者の訴えの中でも「腰痛」は各職種に共通して最も多い症状です。二足歩行の人間の宿命であると言われていますが、私たちの背骨は椎骨といわれる骨体が24個繋がって背骨として体を支えています。24個の骨の内容は上のほうから頚椎が7個、これは頸の部分を構成しています。車に追突された際に「ムチ打ち」(頚椎捻挫)を起こし手のしびれや握力の低下などの種々の症状を呈します。
 次が胸椎で左右12対の肋骨と繋がっている部分です。その下に5個の腰椎があります。さらに下に仙骨、尾骨があって脊柱を構成しています。24個の椎骨は椎間板や椎間関節によって連結されて、横から見ると「S」字状にゆるやかなカーブを描いています。今回のテーマの腰痛は主として5個の腰椎の部分に病変があることによって発生します。過重な重量物を持ち上げた時や、「ひねり」や「打撲」などの強い衝撃を受けると腰痛が出ます。その他、加齢による変化で筋肉の減退や軟骨の萎縮、骨粗鬆症なども腰痛の原因になります。労働で重量物を運ぶときは男性では体重の30%以下、女性では体重の20%以下にして気をつけたほうがいいと言われています。
 さて、腰部脊柱管狭窄症ですが、背骨の中には大事な神経が入っています。腰椎の部分になると「馬尾」(ばび)と言われる馬の尻尾のような細長い神経が束になって入っています。この神経が加齢によって狭くなってきた脊柱管に圧迫されて腰部や下肢に「痛み」「しびれ」を発生します。70歳以上では30〜40%の方に脊柱管狭窄症があると報告されています。安静にしている時には症状はありませんが歩き始めると「痛み」や「しびれ」で歩けなくなります。少し休憩すると症状は消えて再び歩けるようになりますが、歩くと数分で再び同じ症状を繰り返します。これを「間歇は行」といいます。前かがみの姿勢で歩くと少し楽になります。
 治療法には薬による薬物療法、運動療法、コルセット装着、牽引、温熱などの理学療法、手術療法があります。予防としては腰に負担のかかる肥満を避けて、適度な運動習慣が大切です。



平成23年1月

逆流性食道炎について

 新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
 年末年始はお酒を飲む機会も多かったと思います。そこで今回は逆流性食道炎について書かせてもらいます。逆流性食道炎は昔あまり聞いたことの無い病名ですが、最近はテレビのコマーシャルに出てきますので、ご存知の方も多いと思います。逆流性食道炎は最近増えてきています。逆流性食道炎とは、胃で分泌される胃液が食道に逆流して種々の症状を出現させる病気です。強い酸性を示す胃液は通常は食道の中には存在しませんが食道と胃の境界である食道・胃接合部が色々な原因で緩んでくると胃液の逆流が起こります。
 原因としては食事の欧米化により食物中の脂肪が増えたことやチョコレートのような甘味を摂る機会が増えたこと、ヘリコバクターピロリ菌の感染者の減少等が指摘されています。さらには内視鏡の普及により診断が容易になったこと、高齢者が増えて食道が横隔膜を貫通して胃につながる部分、即ち食道胃接合部を固定している横隔膜食道靭帯が緩んで食道裂孔ヘルニアを発生して逆流性食道となることが多いことが上げられています。特に骨粗鬆症等で姿勢が前方に屈曲して胃の部分を圧迫する方は食道裂孔ヘルニアになり易いそうです。生活習慣の問題としては早食い、食べすぎ、高脂肪食、大量の飲酒、喫煙は逆流性食道の原因となります。体型としては肥満、骨粗鬆症で前かがみの人は要注意です。ピロリ菌に感染していると胃の粘膜が荒れて慢性胃炎を引き起こして胃酸の分泌を低下させるので逆流性食道炎になりにくいと言われていますが、ピロリ菌はいないほうが理想です。ピロリ菌に感染していると慢性胃炎、胃潰瘍、胃がんに罹りやすいことが分かっています。若い人はピロリ感染者が少ないので逆流食道の症状を訴える人が多いといわれています。

逆流性食道炎の症状

 食道の症状・・・胸焼け、呑酸の他に物を飲み込んだ時つかえる感じを訴える人もいます。胸痛を訴えている人には狭心症や心筋梗塞と区別する必要があり心電図等の検査をする場合もあります。食道へ胃酸が逆流するため咳の原因となることもあり、また胸焼けで夜間に熟睡できない場合もあります。

 逆流性食道炎の治療
・・・酸分泌抑制剤といわれるプロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカーと言われる制酸剤が使われます。症状のある方はかかりつけの医師にご相談下さい。早食い、食べ過ぎ、大量の飲酒、タバコには気をつけて今年も頑張りましょう。



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