かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生
&
岡部保健師
平成26年
1月 1日45分の活発な運動を毎日続けること
2月 感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス)について
3月 禁煙はストレスのもと?!
4月 新しい概念と用語
5月 健康診断の新しい基準値
6月 偽造医薬品について
7月 熱中症対策!
8月 A型肝炎の流行について
9月 改正!労働安全衛生法―ストレスチェックと受動喫煙対策―
10月 デング熱の流行
11月 お酒を楽しむために
12月 人生最後の場所は?

平成26年12月

人生最後の場所は?

 いよいよ今年も残り少なくなりました。師走のあわただしい時期に似つかわしくないテーマだと思いますが、厚労省が平成24年高齢者における社会保障に関する意識調査の結果を8月29日に発表しました。人生の最後を迎える場所として「自宅(子供の家を含む)」を望む人は43.1%でした。やはり、住み慣れた場所で家族に見守られながら最期を迎えるのが希望のようです。病気の状態、突発的な事故や持病の急変が原因のことも珍しくありませんので希望通りにいかないことも多いと思います。
 第2位は病院(医療機関)を望む人が約30%でした。では実際のところはどうでしょうか。  
厚労省の人口動態統計によりますと病院で亡くなった人は76.3%で診療所が2.3%です。自宅で亡くなった人は12.8%であり、生前の本人の希望とは大きく乖離しています。では、世界的な「在宅死」の傾向はどうなっているか見てみると、フランスが24.2%、オランダ31%であり日本の在宅死(12.8%)が少ないことが分かります。医療制度の相違や国民性の問題、社会保障制度の違いも考慮しなければいけませんので一概に比較することは難しいかもしれません。わが国でも終戦後の数年間は約8割が自宅で死亡していましたが昭和50年頃に在宅死と病院死が逆転して、平成12年頃には8割以上の方が病院で亡くなるようになりました。 
 亡くなる前数日の医療費は高額になることが多く医療経済の面から議論になることもあります。政府は在宅医療を推進しています。国民の高齢化にともない医療供給体制の見直しや、病態の変化、即ち入院しての高度医療が不要な慢性疾患の長期的な治療、回復期の療養、介護保険と併用しての生活支援等が挙げられます。

 また、社会的な背景として少子高齢化が進み、高齢者の単身世帯の増加、老老介護、認認介護も喫緊の問題です。2013年の人口動態統計では出生数が102万9800人で死亡は126万8432人で人口の自然減は23万8632人です。地方の自治体の消滅が現実のものになってくるかもしれません。もう少し高齢化の話を続けますと高齢者人口(65歳以上)は3296万人(総人口の25.9%)、100歳以上の方は58,820人で過去最高を更新中です。厚労省が発表した国民生活基礎調査によれば要介護者の介護をしている者のうち65歳以上の者を介護している65歳以上の者は51,2%でした。老老介護の実態が示されています。「在宅死」が困難なことや、残された者にあまり迷惑を掛けたくないという遠慮もあり入院や老人施設への入所を決意するケースも少なくありません。皆さんはどのような選択をなさいますか。
 どうぞ健やかに、良い年をお迎えください。


平成26年11月

お酒を楽しむために


 羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。11月に入り一段と寒さがまし、冬の訪れを感じる日が多くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。12月の年末が近づくにつれ飲み会が多くなりお酒を飲む機会が増えるのではないでしょうか。古来より「酒は百薬の長」と言われ、適度にお酒を飲むことで死亡率が低くなるともいわれています。今月はお酒の量と体に及ぼす影響についてお話します。

1.アルコール血中濃度と酔いの状態について
 表はアルコール健康医学協会がアルコール血中濃度、お酒の量、酔いの状態、脳への影響をまとめたものです。アルコールの血中濃度によって6段階に分類されます。
1〜2合程度の飲酒の爽快期・ほろ酔い期は、気分がいつもより陽気になったり、さわやかになったり、ほろ酔い気分になります。いつもより饒舌で、コミュニケーションがスムーズになったり、血行が良くなり体が温まったりと、「お酒を楽しむ」程度の飲酒といえます。
 さらに飲酒量が多くなると、酩酊初期、酩酊期、泥酔期、昏睡期とすすんでいきます。酩酊期は千鳥足でフラフラと歩く状態です。泥酔期は記憶がとんでしまって「昨日はどうやって帰ってきたんだっけ・・・?」と昨日のことを思い出せない状態です。昏睡期は最悪の状態で死に至る危険性があります。急性アルコール中毒は血中濃度が0.4%を超えた場合に起こります。
 お酒の量とアルコール血中濃度、酔いの進み方には個人差がありますし、体がアルコールを全く受付けない人もいます。自分の適量を知って、お酒は楽しく飲みましょう。


2.楽しくお酒を飲む時の心得
 楽しくお酒を飲むために、自分自身にとってのお酒の適量や適正な方法を心得ておきましょう。
 ・談笑し、楽しく飲むのが基本。
 ・食べながら、適量範囲でゆっくりと。
 ・週に二日は休肝日。(ノンアルコールデーをつくりましょう。)
 ・きりなく長く飲み続けは控えましょう。(アルコールの分解には思いのほか時間がかかります。)
 ・他人への無理強い、イッキ飲みはしない。(お酒の適量には個人差があります。)
 (引用:アルコール健康医学協会「適正飲酒の10か条」より一部抜粋)



平成26年度10月

デング熱の流行


 猛暑の季節も終わり、今年もあっと言う間に10月になってしまいました。もうすぐ、クリスマスソングが街中に流れ始めます。ふりかえってみると今年の夏ほど異変が多発した年も珍しいと思います。 
 大雨、洪水、土砂崩れでは大きな被害が報じられて多くの人々の同情を誘いました。もうひとつ我々医師にとって青天の霹靂だったのはデング熱です。もう流行も終焉しましたが再確認の意味で書かせてもらいます。発音が天狗と似ていて覚えやすい病名です。過去60年間も国内では発生を見ないデング熱が8月中旬に海外渡航歴のない高校生から見つかったのが発端ですが、実は今年1月10日に厚労省から情報提供の協力依頼が出されていました。内容は昨年6月に日本を周遊して帰国したドイツ人女性が帰国後デング熱を発症して1週間入院しています。東京→フランクフルト直行便で帰国していますので日本での感染が濃厚であるいうことでロベルトコッホ研究所から報告書が日本に送付されています。このドイツ人女性は上田市(長野)笛吹市(山梨)広島、京都東京を周遊されていますが、感染場所は特定されていません。しかし日本で数回、蚊に刺されたと言っています。新聞報道やTVでデング熱のことは十分ご承知でしょうけれども少し復習してみましょう。伝染経路は患者を刺した蚊に刺されることです。患者→蚊→人です。本来は豚を蚊が刺してウイルスは豚の中で増殖して、豚を刺した蚊がヒトを刺すことによって伝播するそうです。
 公園の蚊が絶滅するように池の水を抜き、藪を消毒していますが、一方で海外旅行の帰国者が年間200名以上、帰国後に発病していますのでこの方々も蚊がいると周囲に拡がる可能性があります。首相官邸の前の池も6月に水を抜きましたがデング熱とは無関係だと思います。デング熱は針刺し事故でも感染します。デング熱の存在する国は中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ、グウァム、サイパン、マレーシア、シンガポール、インドネシア等です。これらの国へお出かけの方は虫よけ、長袖、長ズボンで身を固めてお出かけ下さい。世界では年間5000万人〜1億人が感染すると書いてあります。デング熱は風邪、インフルエンザと症状が似ていますので気付かれなかった症例も潜在していると思います。潜伏期間は2〜15日、症状は高熱、関節痛、筋肉痛、発疹です。診断はRT−PCRによるウイルス遺伝子の検出です。一般の検査機関では困難ですので所轄の保健所経由で東京都健康安全検査センターへ送って検査します。医療機関からの依頼によりますので、個人では受け付けてもらえません。デング熱に対するワクチンはありません。その他蚊による感染症はマラリヤ、ウエストナイル熱、日本脳炎、チクングエヤが知られています。9月現在までの情報によると感染者は他県にまで拡がり、感染地とみられる公園も代々木、新宿中央、新宿外苑と増えてきました。これらの点から類推すると我々が気付かないうちにデングウイルスは広く蔓延していたのかもしれません。蚊にも車(CAR)にも気をつけましょう。


平成26年9月

改正!労働安全衛生法―ストレスチェックと受動喫煙対策―

 羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。今夏はとても暑い日や豪雨の日がありましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は夏期休暇中に長野県蓼科を訪問し、普段はあまり耳を傾けることも無くすごしてしまう、鳥や虫の声を聞きながら森林浴をして、心も体もリフレッシュして来ました。皆さんのリフレッシュ方法は何でしょう?思いっきり体を動かして汗をかく、好きなスポーツをする、好きな映画を観る、家族や友達と食事をする、旅行、温泉に入る、読書、ひたすら寝る、もしくは仕事に没頭すること・・・などリフレッシュ方法は様々だと思います。忙しい中でも、短期・長期に関わらず休養をとり、心や体のバランスを健やかに保つことは大切です。同時に、自分自身がどれくらいストレスを抱えているのか、確認することも重要です。
 平成26年6月19日に衆議院本会議において、労働安全衛生法の一部改正が可決・成立し同月25日に交付されました。改正法のうち健康に関連のある二点をご紹介します。詳細は厚生労働省へ。(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049191.html)

@ストレスチェック制度の創設(施行期日:交付から1年6ヶ月)
 労働者の心理的な負担の程度を把握するための医師・保健師などによるストレスチェックの実施を事業者に義務づける(ただし、従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務とする)。また事業者は、ストレスチェックの結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には適切な就業上の措置を講じなければならないこととする。
 日本産業カウンセラー協会が設けている相談室と電話相談(働く人の悩みホットライン)に寄せられた相談件数は2013年度で4,458件(2009年度比1.5倍)でした。相談内容としては相談室、電話相談ともに「職場の問題」が多く、なかでも「仕事のこと」、「人間関係」が多いそうです。仕事の悩みを職場内で解決するための場がなかったり、コミュニケーションが不足していたりする現状があることが伺えます。一時的な悩みや心配で解決することは、そこまで問題ではありませんが、その状況が慢性的に続くと行く行くはストレスが多過ぎて心が疲弊してしまうかもしれません。
今回の法改正で創設されたストレスチェックは、自分自身のストレス度合いを確認するとともに、その後の対応についても明文化されています。健康診断と同様に、受けた後にその結果をどのように自分の健康に活かすのかが大切です。当面の間は、従業員50人未満の事業場については努力義務となっています。50人以上で産業医を選任している場合は、選任産業医にどのような対応をするのかご相談できると思います。

A受動喫煙防止対策の推進(施行期日:交付から1年)
労働者の受動喫煙防止のため、事業者および事業場の実情に応じ適切な措置を講ずることを努力義務とする。二点目は受動喫煙防止についてです。最近は公共施設や飲食店ではすっかりタバコが吸い難くなったと言う話しをよく耳にします。皆さんの会社では分煙や、喫煙所の区分けがされているでしょうか?タバコを吸わない人(非喫煙者)でも、タバコから出る煙を吸う受動喫煙は、タバコを吸うのと同様にタバコの害を受けると言われています。喫煙者のマナー向上、非喫煙者の受動喫煙防止のためにも、事業場内の分煙や喫煙所の設置をおすすめします。喫煙所設置の助成金制度もあるので、ご参考にしてください。
受動喫煙防止対策助成金のご案内(平成26年度版)
厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000031xcl-att/2r98520000031xyx.pdf)


平成26年8月

A型肝炎の流行について

 暑い日が続いていますが元気に頑張っていることと思います。この原稿を書いている7月13日の朝刊には熱中症で搬送された人が350人を超えていること、92歳の女性が熱中症のため自宅で亡くなったことが第1面で報じられています。水分の補給に心がけて下さい。 
今回は最近のニュースから話題になっている感染症を取り上げてみました。

1)A型肝炎の流行
 国立感染症研究所感染症疫学センターからの発表によると今年の1月中旬頃からA型肝炎の患者が急増しています。5月21日までの発生数が331件で過去3年間の年間報告数を上回ってしまいました。A型肝炎は主として経口感染です。患者の排泄物や汚染した食品や水が感染源となります。2〜3週間の潜伏期間を経て発症します。
 38度以上の発熱で始まり、同時に頭痛、筋肉痛、腹痛、倦怠感、黄疸など肝炎の症状が出現します。高齢者は重症化することもありますが、2006年以降に報告のあった事例での死亡例は報告されていません。このウイルスに感染すると潜伏期間でも患者の糞便からは多量のA型肝炎ウイルスが見つかります。経口感染が強く疑われた227例の原因とされる食品は生ガキ、刺身魚介類の喫食によるものと判明しています。海水がウイルスによって汚染されていたことが原因と考えられます。歴史的には1988年、上海で生ハマグリの喫食で30万人の方が集団感染した記録があります。近年、交通機関の発達や業務の国際化で外国へ行く方も多いと思いますが、中国、インド、東南アジア、中東諸国、南アフリカ諸国、南米諸国はA型肝炎ウイルスが常在していると言われています。
 私の友人はパリで生ガキを食べて帰国後発熱、黄疸が出てA型肝炎と診断されて1カ月以上入院しました。潜伏期間が長いため帰国後に発症するケースも少なくありません。2010年にはフランス、オランダ、オーストリアで400人以上のA型肝炎の流行がありました。 
 渡航前にA型肝炎ワクチンを接種しておくことをお勧めします。特に60歳以下の方にはお勧めします。

2)馬刺しによるO-157の感染
 国立感染症研究所の集計によると馬刺しによるO-157感染例がハイペースで増加しています。4月20日までの集計では昨年は67名でしたが今年はすでに126名の感染報告があります。約4割は馬刺しが原因です。これまで馬は体温が高いのでO-157菌は保有していない動物とみなされていました。牛レバーの提供が禁止され、生肉派から馬刺しが人気を集めた結果ではないかと推定されています。確かに馬肉の出荷量は増えているようです。馬が保有していたのか流通や調理の段階で汚染したのか不明ですが生肉派の方はご用心下さい。


平成26年7月

熱中症対策!

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。昨年同様に、蒸し暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。今回は熱中症対策についてです。毎度毎度の話題提供になりますが、いまいちど熱中症対策や熱中症になった時の対応についてポイントをお伝えします。

1.熱中症とは?
 熱中症とは、高温(30度以上)や湿度が高い(70%以上)などの環境によって、体に脱水症状が起こり、体内の熱をうまく外に出すことができなくなり、体温の急激な上昇によって生じる症状のことを言います。  
 最近は都市部の高温化に加えて、空調設備の普及により汗腺の働きが低下している(汗を分泌する力が衰えている)ため、体温の調整がうまく機能せず、熱中症になりやすいと言われています。

2.熱中症にならないためのポイント
・こまめに水分補給(汗を大量にかいたときは、スポーツドリンクやナトリウムを含む飲料を飲みましょう)
・帽子や日傘を利用(作業中は帽子の着用を!最近は日傘デビューする男性もいるとか)
・なるべく日陰を選ぶ(屋外作業や休憩の時にも日陰を選びましょう)
・涼しい服装を心がける(安全面を考慮しながら涼しい服装を選択しましょう)
・日頃からの体調管理を万全に!(1日3食、睡眠で十分な休養をとりましょう)

3.熱中症になった時の対応ポイント

軽症
・めまい
・たちくらみ
・足の筋肉がつる
・大量に汗が出る
対処法
がまんしないですぐに応急処置!
水分をとり。脇や首筋を冷やし。衣服の風通しを良くして。涼しい場所で横になって休む。

中等度
・頭痛
・吐き気、嘔吐
・体がぐったりする
・力が入らない
対処法
上記の応急処置をしても回復しない場合はすぐに病院へ!

重度
・意識がない
・けいれん
・呼びかけへの反応がおかしい
・まっすぐ歩けない
・体温が高い
対処法
すぐに救急車を呼ぶ!!

4.応急処置(クーリング)のポイント
 熱中症で体が暑くなっているときは、太い血管が通っている場所を冷やすと効果的に体内の熱を下げることができます。

5.補足
 気温が30度を超えると熱中症が起きやすいですが、体が暑さに慣れていないときは、気温がそれ程高くなくても発症することがあります。また、外作業以外にも屋内でもたびたび熱中症が発生していることがあります。屋内外に関わらず、作業中の温度や湿度を気にかけましょう。
 高血圧や糖尿病など持病がある方は、ナトリウムや糖分の摂取量に制限が有る可能性があるので、水分摂取の方法についてかかりつけの医師と前もって相談しておきましょう。体調に気をつけて、日々の業務に取り組んでいきましょう。


平成26年6月

偽造医薬品について

 今回はニセモノについてです。日本国内では医薬品は厳格に管理されていて、外国で承認されている薬剤でも臨床データが整わないと承認されないことがあります。昨年、某製薬会社による高血圧治療薬についてデータねつ造が話題となりました。厚生労働省は薬事法違反で刑事告発する方針というニュースが流れました。今年に入ってからも慢性骨髄性白血病治療薬の治験データについてねつ造の疑いが指摘されています。医療関係者や国民の皆様からの信頼を失う行為であり残念なことです。
 厚生労働省は4月10日、偽造医薬品、指定薬物対策推進会議の初会合を行いました。偽造医薬品とは故意に虚偽の記載をした医薬品のことです。偽表示、誤成分、無表示、含量の違いなどがあります。健康被害の危険性は甚大であり深刻な問題になります。我が国では医療機関から発行される処方箋による医療用治療薬や薬店で処方箋無しで購入できる一般用医薬品がありますが偽物が販売されているとは疑いもしません。しかし、日本以外で規制や取り締まりの緩い国、アフリカ、アジアの一部、南米の諸国では偽造医薬品が蔓延し深刻な被害が報告されています。仕事や観光で海外へ出掛ける方も多いと思いますので注意が必要です。
海外で体調不良に陥り現地で購入した医薬品を持参されて相談を受けることもありますが、かなり怪しいものもあります。現地のガイド等から懇切丁寧な説明を叩き込まれて大量に購入して帰国される方も見受けられますがニセモノも多いのでご注意下さい。特に高額所得国には勃起不全(ED)治療薬、抗がん剤、糖尿病治療薬、中低所得国では抗マラリヤ薬、抗菌剤のニセモノが出回っています。高所得国の日本人はターゲットになっています。
 米国医学研究所(IOM)の報告によれば、中低所得国の124カ国以上で偽造医薬品が販売されていて、医薬品流通量の10〜30%がニセモノ医薬品と報告されています。木村和子教授(金沢大学)は「日本も偽造医薬品の被害を免れていない」と警告し、慎重な購入行動を求めています。特に、ED治療薬のネット販売が問題になっています。以前、ED治療薬を密造している中国の製造現場の隠し撮りビデオを見ましたが小型の中古コンクリートミキサーと汚いデコボコのバケツを使って、壁は汚れ放題、床は土間でしたが家畜でも飼っていた場所のように見受けました。偽造医薬品の外観は正規品に類似していて一見して判別困難です。外観を美しくするために包装段階だけ最新の機械で行います。包装だけを外部委託も行われます。話は変わりますが、一般用医薬品のインターネット販売が解禁されます。全国で1157の薬局がネット販売への進出を目指して各自治体に届け出をしています。都道府県別では大阪が最多です。適切な販売と監視は各自治体が担当します。混乱なく適正な薬品の販売に努めていただきたいと思います。
 暑くなってきましたが、これからは熱中症に気をつけてお仕事に頑張って下さい。


平成26年5月

健康診断の新しい基準値

 羽田鉄工団地のみなさん、こんにちは。新年度が始まり、健康診断を実施している事業所も多いかと思います。4月4日に健康保険組合連合会、4月7日に人間ドック学会は、血圧や血糖値、コレステロール値、肥満度などについて、健康診断や人間ドックで「異常なし」と判定する血液検査の新たな基準範囲を策定すると発表しました。新しい基準範囲は約150万人の健診受診者のデータから、性別や年齢を考慮して作成されます。基準値の変更点について簡単にまとめましたので、健康診断や人間ドックの結果を見るときに参考にしてください。なお、新たに策定される基準値は、「健康な人」の検査値であり、高血圧学会や糖尿病学会など専門学会の診断基準の値とは異なります。

【血圧】
収縮期血圧(上の血圧)は従来129mmHg以下を「異常なし」としていましたが、147mmHgでも健康と判定されるようになります。

【肥満度】
肥満度を表す体格指数(BMI)は、現行では25以上は肥満とされていましたが、男性は27.7まで、女性は26.1までは健康とされます。

【LDLコレステロール】
従来は60〜119mgを「異常なし」としていましたが、45〜64歳の男性では72〜178mg、女性では73〜183mgは健康とされます。

 そのほか、中性脂肪やγ-GTP(アルコールによる肝障害の指標)なども大幅に変更される予定です。  
 人間ドック学会や健康保険組合連合会は、2年間の研究事業(2013年〜14年)を開始し、今後5年間をかけて追跡調査をおこなう予定です。学会では「これまでにない大規模調査の結果で求められる新基準を、健診施設などで統一基準として利用してほしい」と説明しています。
 人間ドックや企業の健康診断では、今回公表された判別値を使う施設もあれば、日本高血圧学会など専門学会が定めた診断基準を利用する施設もあるなど、バラバラな状況です。健康診断や人間ドックの結果を確認する時は、何を基準に判定しているか、気を付けて読むようにしましょう。「要精密検査」や「要受診」と記述がある項目については、かかりつけの医療機関に相談し詳細な検査を受けるようにしてください。
 また、健康診断の結果に気になることがある場合は、無料健康相談をご利用ください。


平成26年4月

新しい概念と用語

 医学の進歩とともに病態に対して新しい発見や、考え方が出てきます。最近出てくるようになった言葉について書いてみます。

サルコペニア
 加齢によって身体の筋肉量が減少すると反比例するように脂肪組織の割合が増加することを言います。内臓脂肪が増えて体重が増加していく単なる肥満ではなく、筋肉量の減少をともなうサルコペニア肥満は、骨格筋の減少による筋力の低下が起こります。転倒や骨折リスクが増し「自立した日常生活」に支障をきたすことが問題です。「要介護状態」を生み出すことですが、高齢化と共にこのような状態の老人が増加中です。サルコペニアは高血圧や糖尿病を起こす危険因子でもあります。サルコペニアの語源はギリシャ語のsarx(肉)とpenia(減少)に由来します。

レビー小体
 急速な高齢化にともない認知症患者の数も激増しています。現在の認知症の患者も10年前の厚労省の予測を大きく上回って約460万人といわれています。2025年には約500万人と予測されていて、認知症にかかるコストも医療、介護と大変な金額です。平成24年の報告によりますと認知症の約68%がアルツハイマー型認知症です。次いで脳血管障害による認知症が約20%です。さらに約5%がレビー小体による認知症といわれています。レビー小体による認知症は幻視、幻聴などが多いのが特徴です。レビー小体は1976年、日本人によって発見されました。パーキンソン病と認知症を合併していた67歳の女性の脳から発見され、1995年に英国で発表しました。その後診断レベルが向上し多く見つかるようになりました。アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、統合失調症と診断されている方にもレビー小体認知症が混在している可能性があるのだそうです。

NASH
 定期健康診断や人間ドックの腹部超音波(エコー)検査で脂肪肝と診断された方もいると思います。脂肪肝は肝臓の細胞の30%以上が脂肪化している状態を言います。肝臓に脂肪が貯まる原因にはアルコール、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、薬剤等があります。脂肪肝は大きくアルコール性と非アルコール性に分類されます。非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalkolic steato hepatitis)をNASHと呼び、内臓肥満に基づくメタボリックシンドローム肝病変を意味します。脂肪肝→脂肪性肝炎→肝硬変へと進行します。我が国では肥満人口の増加を受けてドック等の受診者の20〜30%に脂肪肝が見られます。  
 これに対してアルコール性脂肪肝はASHと言います。日本酒で3合以上を毎日、5年間以上続けるとASHになります。そのまま過剰な飲酒を続けると肝硬変、肝がんになります。生活習慣を改善して運動療法、食事療法を続けると軽快します。


平成26年3月

禁煙はストレスのもと?!

 羽田鉄工団地のみなさん、こんにちは!今冬、首都圏は記録的な降雪と積雪に見舞われ交通網の混乱や除雪作業など、各地で非常に大変な事態となりました。予想以上の積雪から各地の混乱に繋がったことと思います。鉄工団地内の事業所や皆さんにおかれましても、いろいろとご苦労があったことと思い、事業所や業務上でのトラブル、事故や傷病などが生じていないか懸念しておりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
 今月のテーマは、禁煙による心理的側面への影響についてです。禁煙補助薬品(チャンピックスやニコレットなど)のコマーシャルを目にしたことはありますか?最近はテレビや電車内の広告など様々な所で、禁煙関連の広告を目にするようになりました。タバコによる身体への影響や、受動喫煙(非喫煙者がタバコ煙を吸込むこと)による二次的な影響については、頻繁に言われていることなので一度は耳にしたことがあるかと思います。そのため、公共の場での喫煙の制限や、飲食店での分煙化、もちろん職場内での禁煙なども広がっているのが現状です。喫煙ができる環境が少なくなったことを契機に、禁煙に取組む方も多いのではないでしょうか。
 現在の日本の喫煙率は男性34.1%、女性9.0%です。男性の喫煙率はここ数年で徐々に減少しています。禁煙にチャレンジし継続している方や今後禁煙したいと思っている方にとって有用な結果が報告されたので紹介します。
 禁煙によって心臓病やがんの発症リスクが上昇することは知られていますが、禁煙はメンタルヘルスにも影響することがあります。イギリスの研究者らの報告によると、喫煙者に禁煙に取組んでもらい、禁煙前・後の不安障害やうつ、ストレス、Quality of Life(QOL:生活の質)を調べた結果、禁煙に成功した人たちは失敗した人たちに比べ、不安障害が37%、うつが25%、ストレスが27%と低下し、22%の人はQOLが向上し日々の生活に積極的に取り組めるようになったと報告しました。禁煙することは、抗うつ薬などの薬物治療と同等かそれ以上の効果をメンタルヘルスにもたらすことになります。
 同様に、アメリカで行われた研究でも、禁煙によってメンタルヘルスに良い効果があることが明らかにされています。3年間にわたり、禁煙した人たちを追跡調査した結果、禁煙を続けた人は喫煙している人に比べ、うつ病、気分障害、パニック障害、アルコール乱用などの精神疾患の罹患率(病気になっている率)が低下していました。
 喫煙をされている方から「禁煙するとストレスになる」「ストレスがあるからタバコはやめられない」などという言葉を聞くことがあります。ですが、今回の研究結果から実は禁煙はメンタルヘルス問題を軽減させ、禁煙によってストレスが減ることが明らかになりました。禁煙はストレス解消にも一役を担う可能性があります。『禁煙』に興味がある方や禁煙に挑戦したけどなかなか長続きができないなどお悩みをお持ちの方は、ぜひ無料健康相談をご活用ください。
 最後に、私事ではございますが、この3月をもって無料健康相談の担当を終了することになりました。微力ながら、羽田鉄工団地で働かれている皆さまのお力添えができていましたら幸いです。引き続き「かけはし」の執筆は継続していきますので今後ともよろしくお願いいたします。また、北條産業医の健康相談は今後も実施致します。


平成26年2月

感染性胃腸炎
(ノロウイルス、ロタウイルス)について

 寒中お見舞い申し上げます。1月中旬より都内や大田区内にインフルエンザが流行していますが皆さんは大丈夫ですか。寒い季節に流行するものにインフルエンザと並んで食中毒があります。食中毒と言えば夏季や入梅時のものと思われがちですが、過去10年間の東京都における月別の食中毒発生件数では12月から1月にかけての冬季が最多です。この時期に食中毒の原因になるのは主としてノロウイルスです。入梅時〜夏季にかけて流行する病原大腸菌、腸管出血性大腸菌(O157等)、サルモネラ菌等と主役が入れ替わります。
 ノロウイルスの感染経路は@ウイルスの付着した食品の摂取、A嘔吐物や糞便に触れた手指から口に入る、B嘔吐物が乾燥して空気中に舞い上がりそれを吸い込む、Cウイルスに汚染された食品、調理器具から口にはいる等の経口感染が考えられます。ノロウイルス胃腸炎の70%以上が調理従事者からと推定されていて、調理従事者の健康管理、作業ごとの手洗い、食品ごとの調理器具の消毒管理の励行、食材の加熱は肝要、必須です。
 冬に美味しくなるカキの生食などは危険だと言われています。ノロ胃腸炎の流行時期は11月〜4月です。大田区でも昨年11月中旬からノロ胃腸炎が増加しています。感染後24時間〜48時間の潜伏期を経て激しい嘔吐、下痢(水様)などの胃腸症状で発症します。ノロと言う名前は日本人には覚えやすい名前ですが、感染力は強く名前に一致しないワルです。治療としてはインフルエンザに対するタミフル、イナビルのような特効薬はありません。通常2〜3日の安静で軽快しますが、嘔吐、下痢で脱水になりますので電解質の入った補水液がお勧めです。乳幼児や高齢者が感染した場合は重症化することがあります。高齢者は嘔吐による誤嚥性肺炎に注意が必要です。感染の拡大防止のために患者の便で行う迅速検査キットがあり臨床診断の補助手段として用います。
 ロタウイルスは主として5歳以下の幼児の感染症です。ロタウイルスについては乳幼児用のワクチンがあり、接種期間が生後24週までのものと32週までのものがあります。
 予防としては手洗いや吐物を処理した後の消毒です。アルコールは無効で次亜塩素酸ナトリウムによる清拭です。ドアノブ等の金属は腐蝕しますので清拭後の水拭きは大事です。
 加熱消毒としては85度以上1分間必要です。入浴は感染者が最後に入りお湯は流してしまいます。下痢している子供と一緒に入らないことです。学校、幼稚園、保育園等は下痢等が軽快して3日後から登園可能です。下痢、嘔吐が軽快しても便中にはまだ排菌していますので十分注意して職場復帰をして下さい。職場での蔓延は避けたいものです。


平成26年1月

1日45分の活発な運動を毎日続けること


 羽田鉄工団地の皆さん、新年あけましておめでとうございます。本年も「かけはし」に健康コラムを掲載していきますので、どうぞよろしくお願い致します。
 年末年始の休暇について食べ過ぎてしまったという人は多いでしょうか?忘年会や新年会、久しぶりに再会した家族や友だちと、楽しい時間を過ごしたいと考える人は多いと思います。その場の楽しい雰囲気で、食べたり飲んだりしたくなり、ついつい食べ過ぎや飲み過ぎて「ちょっと体が重くなったかな?」「ズボンがきつくなったかな?」となることもあるでしょう。そんな「ごちそうシーズン」を乗り切るためのシンプルな方法をご紹介します。それは【1日45分の活発な運動を毎日続けること】です。適度な運動を続けると体のエネルギー代謝は改善します。
 イギリスの研究者は、適度な運動を毎日続けていれば血糖値の変動が安定し、体の代謝にも良い影響があらわれることを実験で確かめました。この研究チームは、26人の男性(平均年齢25歳)を対象に、通常の食事よりカロリーが50%多い食事を7日間続けてとってもらいました。参加者を全く運動せずに7日間を過ごすグループと、1日45分のエアロバイクなどの活発な有酸素運動に取り組むグループの2つのグループに分けました。実験の結果、運動に取り組んだグループは血糖値の上昇が抑えられていることがわかりました。
 ついつい食べ過ぎてしまい体重が増えても、運動を続けていると、体のエネルギー代謝は向上することが明らかになりました。さらに、運動はある程度まとまった時間の運動を毎日続けることが効果的といわれています。
 体重60kgの人が普通の速さでウォーキング(息がはずみ軽く汗をかく程度)を1時間行った場合、消費されるカロリーは約200kcalです。運動中にエネルギー源として使われる糖と脂肪の割合は、運動の強度によって変化し、強度が低いと脂肪を使う割合が増え、強度が高いと糖を使う割合が増えます。運動の強度によっても脂肪を消費するか、糖を消費するのかが異なります。
 もちろん食べ過ぎないことが理想的ですが、普段から運動を続けて筋肉を減らさないことが食べ過ぎに対する効果的な対策となります。もっとも多くカロリーを消費するのは筋肉です。運動をすることで、筋肉の量を落とさないことが大切と言われています。なので、運動を続けて「体重が減らない」「見た目は何も変わらない」と効果をすぐに実感できなくても、1日45分のまとまった運動を続けることが重要です。最初から45分を目標にするのは大変かもしれないので、1日10分、そこから10分追加するなど自分の体力とも相談していきましょう。スポーツ施設の利用や屋外で運動する場合は、施設が休みのときや天候が悪い時などの運動ができない時の代替案も考えておくことが毎日続けるコツかもしれません。また急激な減量はその後のリバウンドの可能性もあるので、減量は徐々に行うことを心がけましょう。
 食生活や運動習慣を変えたい、今のままで良いのかなどお悩みがありましたら、毎月の健康相談をご活用ください。お待ちしております。