かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生

岡部保健師
最新号(平成28年12月)
1月 がんリスク検診について
2月 インフルエンザの症状、治療、予防
3月 最近話題の感染症
4月 治療と職業生活の両立支援について
5月 何故ストレスチェックが導入されたか
6月 ストレスチェックを活用した職場環境への取組み
7月 レイルとサルコペニアと健康寿命
8月 夏真っ盛り、熱中症に気をつけよう!
9月 高尿酸血症と酷暑
10月 女性のがん検診について
11月 高次脳機能障害について
12月 血糖値スパイク〜食後の高血糖にご用心〜



平成28年12月

血糖値スパイク〜食後の高血糖にご用心〜

羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。11月に都内で降雪があったのは、54年ぶりだそうで驚きました。今年は夏の猛暑、冬の酷寒と季節が二極化しているようです。皆さんも体調には十分に気をつけてください。
先日NHKで「血糖値スパイク」というキーワードが取り上げられたようで、あるインターネットの販売サイトでは自己血糖測定器(自分自身で血糖値を測定する機械)がすぐに完売したそうです。今月号は血糖値スパイクとその予防法についてご紹介します。

・血糖値スパイクとは
食べ物や飲み物を摂取すると血糖値が上昇し、体内の血糖を分解するインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて、血糖値は時間の経過とともに下がります。血糖値スパイクは、食後の血糖値が急上昇した状態です。この場合、多くの人では健康診断などで検査している血糖値や過去1〜2ヶ月の血糖値の平均値を評価する指標のHbA1c(読み方:ヘモグロビンエーワンシー)では異常の指摘を受けることは少ないです。しかし一時的に血糖値が高い状態があることは、血液を運ぶ血管に少なからずダメージが生じます。血管へのダメージが蓄積すると、血糖値やHbA1cが正常で、糖尿病と診断されていない人も、血管が硬くなる動脈硬化になりやすく、脳梗塞や心筋梗塞などの脳・循環器疾患を発症するリスクが高まります。

@血糖値上昇を緩やかにする【食事】
血糖値の上昇が緩やかにするために、食事の内容や食べる順番が大切です。


・野菜、海草類、きのこなどの食物繊維があるもの最初に食べる:パンや米などの炭水化物には血糖値を上昇させる糖質が多く含まれています。野菜、海草、きのこに含まれている食物繊維には炭水化物の吸収を阻害するはたらきがあるので、炭水化物からの糖質の吸収が抑えられます。
・よく噛んで、時間をかけて食べる:よく噛んで食べることで、満腹感が得られます。噛まずに食べるとなかなか満腹感を得られなく、量を多く食べてしまいます。よく噛んで、じっくり時間をかけて(お昼ごはんで20分くらい)食べましょう。

A食後の血糖値上昇を抑制する【運動】
・食後に運動をしよう:食事の後は血糖値が上昇します。食後すこし時間をおいてから30分程度の軽い運動をすると、食後の血糖値の上昇を抑えたり、上昇を緩やかにしたりすることができます。運動はウォーキングでも良いですし、すぐに仕事にとりかかる人は立ち作業をするだけでも効果があると言われています。

持病の治療をしている人は、主治医の先生と相談をしましょう。過度な食事制限や運動は長続きさせるのが大変です。日々、無理なくできることを続けることが一番大切です。


平成28年11月

高次脳機能障害について

 厳しかった猛暑もやっと終わって秋めいてまいりましたが皆さまは元気に頑張っていることと思います。
 この原稿を書いている時に鳥取県の大地震のニュースがTVで放映されました。余震が続いていて大勢のひとが車中泊や避難所での生活を送っているようでお見舞い申し上げます。熊本の地震が4月12日で熊本城の石垣の崩落をTVで見たばかりなので驚いています。
 うれしいニュースもありました。大隅良典博士が医学、生理学部門でノーベル賞を授与されたことです。「オートファージー」と呼ばれる、細胞が不要となった蛋白質を自ら分解する仕組みを解明した業績が高い評価を得ての受賞でした。日本人としては3年連続25人目の受賞だそうです。ノーベル賞は有名な化学者でダイナマイトの発明者であるアルフレット・ノーベルの遺産を財源に1901年から始まった制度です。ノーベルは自らの発明品が爆薬や兵器として大量殺戮に使われることに衝撃を受けて人類の役に立つ有益な研究成果に対して、多額の賞金を添えて功績を賞讃しています。世界が注目するノーベル賞には医学に関係する面白いエピソードがあります。ダイナマイト製造工場で働いていた労働者で狭心症患者の多くが勤務中は症状が出ないのに帰宅すると狭心症の症状(胸を締め付けられるような絞扼感、胸痛)が出現することに気づき、ダイナマイトの原料であるニトログリセリンに血管拡張作用があることが判明し、現在でも内服薬(舌下錠など)、テープ(貼付剤)、塗布剤として多くの患者さんの治療に使われています。しかし、まだ解明されていない疾病も沢山あります。高次脳機能障害もその一つです。人間の脳には生命維持に必要な部分、運動、感覚に必要な部分に加えて、物事を記憶したり、物事を判断する高度な機能に関与する高次脳機能が存在して人間らしさを発揮して生きています。高次脳機能障害は画像検査(CT,MRIなど)と一致しないことも多く注意が必要です。この障害は身体障碍が軽度であることが多く、外見的に障害が目立ちにくく、本人も障害を十分に認識していないことがあります。原因として脳血管障害や頭部外傷による脳損傷が多くを占めます。日常生活、社会生活には適応が困難で医療や介護保険による生活支援が必要です。
 数年前ですが、筆者が介護保険の審査委員をしていたころに苦い経験があります。
 70代の独居の男性から介護保険による介護の申請が出されました。調査書には毎日近所の食品店へ歩いて食料を購入に行くと書かれていました。病名が高次脳機能障害だったので筆者は介護することを認めようとしましたが委員の一人である薬剤師の方が自力で歩いて食料を購入していることを指摘して介護保険による支援は却下されました。他の委員の賛同も得られずに生活支援は認められませんでしたが「申し訳ないことをした」と今でも記憶に残っています。高次脳障害の方は食料品店に行っても、自分の判断力が低下していますので毎日同じ物を買って帰り、冷蔵庫は納豆で一杯だったり、卵があふれていたりします。高次脳機能障害にたいする理解を深めるため医療、介護の両面から積極的な啓発、支援活動を行う方針が進められています。


平成28年10月

女性のがん検診について

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。猛暑の夏も終わり、秋の夜長を楽しみながら過ごしている方も多いのでしょうか。今月は最近ニュースなどで取り上げられることも多い女性特有のがんと検診についてのお話です。

1.女性特有のがんの特徴
 日本人女性における主要部位別がんの推定罹患数と罹患率の推移は、乳房が最も多く約12人に1人が生涯のうちに乳がんになるといわれています。また最近では子宮頸がんの低年齢化がすすみ20〜30歳の女性でも発症しています。多くのがんは高齢になるほど発症リスクが高まりますが、女性特有のがんである乳がんや子宮がんは20代、30代の若い女性に多いことが特徴のひとつです。

2.女性のがん検診
 がん検診の目的は、特定の部位・臓器に発生するがんを早期に発見ができ、さらに効果的な治療が確立しているものに対して行われます。女性のがん検診の主な項目に、乳がん検診、子宮がん検診があります。これらの受診率はアメリカでは80%、フランス74%と高いですが、日本は36%と欧米と比較して低い状況です。
 政府が実施している調査ではがん検診を受けない理由として「受ける時間がない」が48.0%と最も高く、「費用の経済的負担」(38.9%)、「がんであると分かるのが怖い」(37.7%)、「健康状態に自信があり、必要性を感じない」(33.1%)など(『平成26年がん対策に関する世論調査』より)がありました。
 大半の方が受けない理由にあげている費用負担については、多くの市区町村ではがん検診の受診券を配布するサービスがあります。対象年齢や費用負担などは市区町村により異なりますが、比較的安価での受診ができます。自己負担の場合は、乳がんと子宮がんの検診で合計3万円前後が多いようです。加入している健康保険組合によっては、独自の検診サービスをしている場合もあります。
女性のがんの特徴として、20〜30歳の若年女性でも発症することがあるので「まだ若いから大丈夫」と言わずに検診を受けましょう。

3.がん検診の内容
 乳がんの検診には「視診・触診」、「乳房X線検査(マンモグラフィー)」や「乳房超音波検査(エコー)」が代表的です。子宮がんの検診は、「内診」、子宮体部や子宮頸部の粘膜を綿棒などで擦り、採取した細胞を調べる「細胞診」があります。
 乳がんの視診・触診とマンモグラフィー、子宮頸がんの子宮頸部細胞診は、科学的に有効であると厚生労働省が推奨している検査方法です。さらにがんの発生率が高い年齢を背景に、40歳以上で乳がんの検診を2年に1回、20歳以上で子宮頸がんの検診を2年に1回受けることが推奨されています。検査の方法は、年齢によっても異なるので受診される病院の医師と相談して検査方法を決めることをお勧めします。
 検査が怖い、何かが見つかるのが怖い気持ちもあると思いますが、がん検診の目的は、早期発見と早期治療ですので、早め早めの対処をしていきましょう。


平成28年9月

高尿酸血症と酷暑

 残暑お見舞い申し上げます。今年の夏も厳しい暑さでしたが熱射病は大丈夫でしたか。
 夏は発汗などで体内の水分が奪われることが多くなります。その結果血液が濃縮されて血中の成分が上昇することになります。企業では定期健康診断が行われていて皆さんも毎年受けていることと思います。検査項目では生活習慣病の予防に向けて血圧、血糖、コレステロール、中性脂肪などが上げられていますが、もう一つ尿酸が入っています。
 尿酸が高くなると様々な合併症をおこします。足の親指の関節が赤く腫れて激しく痛む「痛風」が有名ですが、その他にも心臓や腎臓に悪影響を与えます。高尿酸血症は高血圧や糖尿病、脂質異常(コレステロール、中性脂肪の異常)などの生活習慣病と密接に関係して脳卒中、心筋梗塞、腎臓病を引き起こす危険を高めます。「痛風」を発症する患者は80万人を超えていて、その予備軍である高尿酸血症の方はこの10倍と推定されています。また、以前と違って最近は40歳以下の若年の方が増加中です。飽食時代となり過食、過飲、食生活の欧米化の浸透、運動不足には要注意で生活スタイルの改善が必要です。高尿酸血症の患者さんは糖尿病や脂質異常症の患者さんと共通点が多く肥満の方が多い傾向にあります。肥満の方は少し減量すると高血圧や高血糖が改善することがよくありますが、肥満で高尿酸血症の方は先ず減量を心がけてください。高尿酸血症のメカニズムとして、血中の尿酸が尿中に排泄されにくい「排泄低下型」と尿酸の生産が過剰な「生産過剰型」と両者の混合型に分けられます。
全体の80%〜90%は「排泄低下型」ですので、水分を多く摂って尿量を増やすことが大事になります。特に夏季は発汗で水分が失われますので血中の尿酸値は上昇してしまいますので水分を多く摂って尿量を確保する必要があります。食事としては動物の内臓(レバー等)、魚の干物などプリン体の多い食品は避けて腹八分目を心がけてください。また、尿が酸性になることで尿酸結晶が出来て痛風発作が起きやすくなるため野菜、海藻類などのアルカリ性食品を十分に摂ることが大事です。アルコール類はアルコール自体が尿酸を増産して尿酸の排泄を妨げる作用があるので大量のアルコール摂取は控えてください。運動としてはウォーキングなど酸素を十分に取り入れながら体を動かす有酸素運動がお勧めです。涼しい秋までもう一息です。

最近の話題から
 厚労省は7月27日、平成27年の簡易生命表を発表しました。それによると平均寿命は男80.7歳、女87.05歳で前年と比べて男0.29歳、女0.22歳伸びました。75歳まで生存する割合は男74.6%、女87.7%、90歳まで生存する割合は男25%、女49%です。日本人の平均寿命は女性が香港に次いで2位、男性は香港、アイスランド、スイスに次いで4位でした。リオのオリンピックも女性が大活躍でした。


平成28年8月

夏真っ盛り、熱中症に気をつけよう!

 羽田鉄工団地の皆さん、こんにちは。今年は例年にくらべ少し遅い梅雨明けでしたが皆さんも暑さに対処しながらお仕事されていることと思います。
 毎年6月から暑さが増すにつれて、熱中症により医療機関へ救急搬送される方が増加しています。
 熱中症は@体液の不足で起こる障害、A体温上昇で起こる障害の総称です。発汗により体液が失われ、水分不足から電解質の不足が起こります。さらに発汗が続き体液が失われると、身体はそれ以上の体液の喪失を防ぐために、発汗しないようになります。すると発汗で体温が下げられなくなり、体温が上昇していきます。発汗により身体の体温調節機能が維持できなくなると、臓器や脳がダメージを受けて意識障害などが起こることがあります。熱中症は生命にも危機が迫る可能性があるものです。夏場の暑い時期で、既に熱中症対策をして作業している方も多いと思いますが、再確認のために掲載します。

【熱中症がおきやすい環境】
 ・気温が高い、湿度が高い
 ・風が弱い、日差しが強い
 ・照り返しが強い
 ・急に暑くなった(しばらく涼しい日が続いた後の暑い日は要注意)

【熱中症の症状】
以下のような症状がある時は熱中症の可能性があります。
 ・高い体温
 ・顔や身体が赤い、熱い
 ・皮膚が乾いている(全く汗をかかない)
 ・ズキンズキンと頭痛がする
 ・めまい、吐き気がする
 ・意識がない、意識障害がある(返答がおかしい、呼びかけに反応しないなど)

【熱中症が起きた時の対処ポイント】
 1.涼しい場所へ移動
 2.塩分、水分を補給(経口補水液、スポーツドリンクなどの摂取)
 3.体を冷やして体温を下げる(特にクビ、ワキ、マタの3ヶ所)、衣服を脱がす
 4.意識がない、自分で水を飲めない場合は直ちに救急車を要請する

 上記に加えて、糖尿病や高血圧、腎臓病などの持病がある方は、脱水になりやすいので、より厳重な注意が必要です。主治医の先生の指示に従い治療を行い、熱中症対策でできる事がないか相談しましょう。

 総務省消防庁のウェブページに熱中症特集のページがあります。短い啓発用ビデオもあるので事業所内での教育用にお勧めします。


平成28年7月

レイルとサルコペニアと健康寿命

 最近、新聞や多くの出版物に度々でてくる言葉にフレイルとサルコペニアがあります。
フレイル(frailty)とは加齢にともなって全ての内臓の機能低下、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下などの健康障害を起こしやすい脆弱な状態を指します。日常生活が自立していて健康であった高齢者が要介護の予備軍の状態になります。 
 フレイルという概念は1990年代にBuchnerとWagnerが次のように定義したのが最初と言われています。
「体の予備能力が低下し身体移動障害に陥りやすい状態」「日常生活機能障害の前段階(activity of daily living<ADL>障害)」と説明しています。
 一般的に高齢者の虚弱状態は加齢にともなって避けることのできないものと理解されていますが、フレイルに陥った高齢者を早期に発見して運動や栄養について指導を行って生活機能の維持向上を図ることが期待されています。健康寿命の延伸を目指しています。
フレイルの診断としては
 @体重の減少
 A歩行速度の低下
 B握力の低下(男26kg以下、女18kg以下)
 C疲れやすい
 D活動量の低下(散歩などしなくなる) 
などが上げられています。

サルコペニア
 加齢とともに体の骨格筋量や筋力が低下して転倒しやすくなり行動がヨタヨタした状態になります。
普通の加齢現象としてみられていましたが、1989年Rosenbergが加齢による骨格筋の減少が起こる状態をサルコペニアと命名しました。一般に70歳までに20代と比較して骨格筋量は25〜30%減少し、その後も骨格筋量は年々1〜2%程度減っていきます。骨格筋量の減少は加齢現象として誰にでも起こりますが、極端に減少するとサルコペニアと診断されて「ふらつき」「転倒」などを起こしやすくなります。
 診断は二重エネルギーX線吸収測定法などがあるようですが日常生活の中で
 @階段が手すりをつかまらないと昇れなくなった。Aペットボトルのキャップが開けにくい
 B重いものが持ち上げられなくなった
などで気づいてもらうのが最善と思います。
 超高齢化社会に入っている我が国は高齢者(65歳以上)が総人口の26%(3,300万人)を占めていて75歳以上の後期高齢者も12.5%(1,592万人)に達しています。社会保障関係の予算は110兆円を超えていて今後も増加に歯止めがかからないと推測されています。政府では年金、医療、介護の部門の赤字が国の財政破綻に繋がると懸念されているようです。健康寿命を延伸して10兆円を超えるといわれている介護保険だけでもなるべくお世話にならないように頑張りたいものです。


平成28年6月

ストレスチェックを活用した職場環境への取組み

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。
 今月号は5月号の北條先生のかけはし掲載記事(「何故ストレスチェックが導入されたか」)に引き続きストレスチェック制度に関連した話題です。ストレスチェック制度を活用した職場環境改善・向上に関する取組みについて紹介します。

・職場のストレス度合いの把握
 厚生労働省が推奨しているストレスチェックの質問票は@仕事の負担度A仕事のコントロール度B仕事での対人コントロール度C仕事の適合性D心理的ストレス反応E身体的ストレス反応F職場の支援度G満足度から構成されています。ストレスチェックは個々の受けているストレスを把握するための質問票ですが、各々のストレスチェックの結果を集団的に分析し、職場のストレス状況を確認することができます。

・なぜ職場のストレス度合いを分析するのか?
 ストレスチェック制度の主目的は、仕事によるメンタルヘルス不調等にならないための一次予防です。 
 そのために個人のストレス対策と同様に職場環境の改善・向上も重要と言われています。自分ひとりでは仕事の精神的負担の軽減は解決できないけれど、職場全体で状況を変えることで一人ひとりの仕事の負担が軽減し職場環境の改善に繋がることがあります。

・集団分析を活用した職場環境改善の活動
 すでにメンタルヘルス対策として職場環境改善活動を行っている会社もあります。活動内容はさまざまですが、職場毎にミーティング等を行い職場内の問題点や困っていることなどを話し合い、改善対策を立案し実行するという活動が多く行われています。改善策を考える際は「無理がないこと」が大切です。これまでのルールを無理に変更したり、費用や工数が極端に多くかかることであったりすると実行できる可能性も低くなります。職場の全員が納得して、負担無くできることを取り上げてスモールステップを重ねていくことが重要です。また、改善策を実行した後は、そのことを評価し振返ることも大事なポイントです。いつまでに、だれが何をするのかを明確にし、それが出来たのかどうかを振返るというPDCAサイクルを回していくと、より良い職場形成に役立つ活動になります。

 「ストレスチェック」や「メンタルヘルス」、「職場環境改善」などいくつかキーワードがありますが、皆さんの職場で日頃から行っている朝礼やミーティングなど社内でコミュニケーションをとる機会に「職場環境改善」の視点を加えて快適な職場づくりと心身の健康づくりへの取組みをお勧めします。


平成28年5月

何故ストレスチェックが導入されたか

 すでに多くの方々はご承知のことと思いますが、職場環境の改善を目指して各事業場にストレスチェックが義務化されました。(従業員50人未満の事業場は当分の間努力義務です。)近年、仕事内容や職場にいて強い不安やストレスを感じる労働者が6割を超えているという厚労省の調査結果があります。このような状況を改善するために、より積極的に心の健康の保持増進が求められ「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日)が厚労省から示されました。 
 また、第12次労働災害防止計画(平成25年〜29年)の中でも受動喫煙防止対策、熱中症対策、過重労働対策とならんでメンタルヘルス対策が重点目標に上げられています。東京労働局も「Safe Work Tokyo」をキャッチフレーズにメンタルヘルスの重要性を取り上げています。ストレス対策が重要になってきた背景に仕事上の強いストレスが原因で精神障害を発病し労災認定を受けた労働者が平成18年度以降も増加傾向にあり、脳心臓疾患による労災認定数を大きく上回っています。このような状況を改善するため労働安全衛生法の改正が行われ(平成26年6月25日公布)仕事上の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)が平成27年12月1日から実施されることになりました。従来行われていた定期健康診断と同じく1年に1回行うことが義務付けられました。

個人のストレス度を把握する難しさ
1)測定方法が単純でなく、心の負担程度を測るのは簡単ではありません。例えば血圧、血糖、尿検査のような単純でわかりやすい測定法が確立されていません。
2)ストレスの感じ方に大きな個人差があります。同じ作業に従事していてもメンタル不調になる人とならない人がいます。
3)周囲の人たちに理解されにくい。「ヤル気がない」とか「怠け者」とみられることもあります。
4)対処できる専門家が少ない。精神科受診を考えますが精神科の医師は少ない現状です。メンタル不調は長期間の療養が必要で精神科受診だけですべて解決というわけでもありません。
5)人格を否定する傾向があり「ダメ人間」と評価される場合もあります。

健康とは
単に身体に病気がないとか身体が弱くないと言うだけでなく身体的、精神的、社会的にも完全に調和のとれた状態のことである。(WHO憲章、1945年)優れた技術をもち、素晴らしい頭脳の持ち主でも反社会的な薬物の使用や賭博行為は健康とは言えません。

健康職場と健康経営
我が国では労働者の高齢化や労働人口の減少が続いています。従業員が健康で働くことが個々の生産性を高め、企業としての競争力につながると言う考え方です。このような考え方に賛同して社員の健康の維持向上に力をいれている企業も出てきました。優れた成果を上げた企業を表彰する団体もあります。健康経営とは米国の経営心理学者ロバート・ローゼンが提唱した概念です。企業の持続的な成長を目指し従業員の健康に配慮した経営を健康経営といいます。

ストレスチェック簡易質問票について
個々の受けているストレスを把握するために質問票に記入していただきます。
厚労省で推奨している質問票は23問と57問があります。健診業者の開発したものでは150問というのもあるそうですが、一般には57問の質問票が多く使われるようです。質問の内容は@仕事の負担度A仕事のコントロール度B仕事での対人コントロール度C仕事の適合性D心理的ストレス反応E身体的ストレス反応F職場の支援度G満足度と分かれています。大きく分けて仕事の過重度、それによる身体への影響度、職場の対人関係について質問しています。健康な職場形成に努めましょう。


平成28年4月

治療と職業生活の両立支援について

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。保健師の岡部です。
 現在、日本において労働者の2人に1人が脳・心臓疾患につながるリスクのある血圧や血中脂質などの項目で所見を有しています。また仕事をもちながら、がんで通院治療をしている人は約32.5万人います。
 2016年2月に厚生労働省より「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が公表されました。このガイドラインには治療が必要な疾病(がん、脳卒中、心疾患、生活習慣病、メンタルヘルス疾患など多岐にわたり、反復・継続して治療が必要な病気)を抱える労働者が、業務によって疾病を増悪させることがないよう、事業場において適切な就業上の措置を行いつつ、治療に対する配慮が行われるようにするために、関係者の役割、事業場における環境整備、労働者への支援の進め方を含めた、事業場における取り組みをまとめたものです。皆さんの事業場にも、参考になればと思いガイドラインに示されている両立支援のための【留意事項】と事前の【環境整備】について概要を紹介します。

?治療と職業生活の両立支援を行うに当たっての留意事項
1)安全と健康の確保:現在の就労によって疾病の増悪、再発が生じないように就業上の措置や治療に対する配慮を行う(通院時間の確保、就業場所・作業の見直しなど)
2)労働者本人による取組:労働者本人が主治医の指示に基づき治療することも重要
3)労働者本人の申出:私傷病疾病については労働者本人の申し出から対応がスタートするので、申し出がしやすい環境を整える

4)治療と職業生活の両立支援の特徴を踏まえた対応
5)個別事例の特性に応じた配慮
6)対象者、対応方法の明確化
7)個人情報の保護:疾病に関する情報(症状、治療の状況等)は個人情報なので取扱いに注意を要する
8)両立支援にかかわる関係者間の連携の重要性:必要に応じて、労働者本人、事業者、人事労務担当者、上司・同僚、産業医、医療機関の主治医等との連携が重要

?両立支援を行うための環境整備
両立支援を行うために事前に事業場の環境整備として大切なポイントは以下の4点です。
1)事業者による基本方針等の表明と労働者への周知:取組に当たっての基本方針や対応方法などを、全ての労働者に周知することで、治療と職業生活の両立をしやすい職場風土を醸成
2)研修等による両立支援に関する意識啓発:労働者本人、関係者以外にも周囲の理解を得るために両立支援について啓発
3)相談窓口の明確化:両立支援は労働者からの申し出が原則(労働安全衛生法の健康診断で把握した情報を除いて)となるため、労働者が相談・申出ができるように事業場内の窓口、対応者を明確化
4)両立支援に関する制度・休暇等の整備:休暇制度や勤務制度の整備、対応の手順、関係者の役割等を整理し、実効性のある両立支援を実施

 おそらく多くの事業場で既に取り組まれていたり、配慮していたりする事柄も多いかと思います。今回、紹介したガイドラインでは、そのような取組みの内容が簡潔に示されています。ご興味のある方は下記へアクセスもしくは「治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」とインターネットで検索するとガイドラインを閲覧することができます。


平成28年3月

最近話題の感染症

 国立感染症研究所は2月19日、今年のインフルエンザ流行状況について発表しました。今年のインフルエンザの流行は過去10年間で2番目に多い患者数が推計されたそうです。企業内にインフルエンザが拡散すると業務の停滞や作業効率の低下を引き起こし経済的な損害や取引相手への信用を失う事態も想定されます。
 インフルエンザに罹ると高熱が下がっただけで出社される方もいますが、ウイルスを社内に拡散するおそれがあります。集団生活を行っている学校の場合は学校保健安全法で感染症の伝播を防止するため出席停止の措置を講じることとされ(第19条)学校安全施行令で校長が出席停止の措置をすることと定めてあります。(第6条1,2)これを受けて学校保健安全施行規則では感染症を3種に分けて出席停止基準を規定しています。(第18,19条)それによるとインフルエンザは発症して5日間を経過し、かつ解熱後2日を経過してから登校となっています。学校に適用する法律ですので会社は別ですが社内に拡散させないためには慎重な判断が必要と思います。
 次は最近話題になっているジカ熱(Zika Fever)です。ブラジルや中米での大流行が話題になっていますが、実は多くの日本人が仕事や旅行で訪れるタイ、インドネシア、台湾、シンガポールなども流行地になっています。いままで国内で見つかったジカ熱の患者もタイ、インドネシアからの帰国者でした。ジカ熱はジカウイルスが蚊によって伝染する病気ですが症状が極めて軽く約8割の人は感染に気付かないと言われています。 
 同じく蚊が伝播するデング熱に比べて発熱などの症状は軽微なようです。ジカ熱に対するワクチンや有効な治療法は確立されていません。妊娠中の女性が感染すると[小頭症]という奇形の赤ちゃんが生まれます。
 小頭症は極端に頭が小さく、脳の発育も知能の発達も著しく遅れます。治療法も無い恐ろしい病気です。
 ブラジルでは4,000人の小頭症が生まれたとニュースは言っています。ジカ熱は一度感染すると抗体ができて二度と感染しないと言われています。ジカ熱の拡大が懸念されることから厚生労働省は感染症法の第四類にジカ熱を追加して今年の2月15日からは診断した医師は届け出をする義務が課されました。仕事や旅行で流行地へお出かけの方は蚊に対する予防策を講じてお出かけ下さい。



平成28年2月

インフルエンザの症状、治療、予防

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。保健師の岡部です。
 今年は暖冬と言われつつも突然の天候不良や積雪などが続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 例年ですと11月から流行するインフルエンザですが、今年は1月中旬から東京都内でもインフルエンザ患者発生が報告されています。これから寒さが強まり、空気の乾燥が進むと更に患者数が増える可能性もあるので、今月のテーマはインフルエンザの症状、治療、予防についてです。

《インフルエンザの症状》
 インフルエンザウイルスに感染すると、1日〜3日間の潜伏期間の後に次のような症状があらわれます。
・突然の高熱:体温が38度以上の高熱になります。ワクチンを接種している場合は高熱にならないこともあります。
・関節痛、筋肉痛、頭痛:ウイルスの感染により炎症が生じて、体の節々に痛みが出やすくなります。
・全身の倦怠感:発熱や感冒症状(くしゃみ、鼻水、咳など)、全身の疼痛などで体がだるい状態が続きます。
・喉の痛み、くしゃみ、鼻水、咳:感冒(風邪)と同じような症状が初期症状としてでることが多いです。

《インフルエンザの治療》
 病院を受診すると症状やウイルスの検査を行います。
 インフルエンザと診断されると主には抗ウイルス薬という内服薬(例:タミフル、リレンザ)での治療を行います。抗ウイルス薬はインフルエンザに発症してから48時間以内が効果的なので、上記のような症状があるときは速やかに近くの病院を受診することをお勧めします。抗ウイルス薬を服用しなくても一般的に1週間程度で自然治癒しますが、高齢者や乳幼児と一緒に生活している方は、ご自身がウイルスを排出して感染源にならないための対処としても抗ウイルス薬は有効です。
 また、症状が出てから3日〜7日間はウイルスの排出が続きます。熱が下がっても咳・くしゃみが続いている時はマスクをつけて咳エチケットを心がけてください。学校保健法では「解熱後(熱がさがった後)2日を経過するまで」は出席停止と決められています。職域では学校保健法のように法律で明記されていませんが、インフルエンザに限らず、体調が優れない時の出社は控えましょう。事前に社内でのルールを決めている会社もあるそうです。

《インフルエンザの予防》
 インフルエンザはウイルス感染なので、免疫力が低下している時、疲労がたまっているときは感染しやすい状態です。日頃からの健康管理と手洗い、うがいで感染を予防しましょう。さらに高齢の方、心臓や肺、腎臓などに持病がある方、糖尿病、乳児や妊婦さんはインフルエンザから肺炎などの合併症を起こしやすいので、早め早めの対応が大切です。


平成28年1月

がんリスク検診について

 新年明けましておめでとうございます。本年も健康で頑張りましょう。
 近年、高齢化社会を迎えて医療や介護が大きな問題となっています。日本人の平均寿命は世界のトップクラスですが、身の回りのことが自分で処理出来る状態である健康寿命を維持することが大切だと言われるようになりました。医学雑誌「ランセット」によると、世界186カ国のデータ分析で2013年の日本人の健康寿命は男71.1歳、女75.5歳で男女とも世界一でした。 
 健康寿命は世界の大半の国で伸びていますが、感染症対策が進んだ結果だといわれています。日本人の平均寿命は男80.5歳、女86.8歳ですから健康寿命との年齢差は誰かの手助けを必要とする期間になります。介護の人手不足や受け入れ先が見つからない介護難民などもあるようです。
 健康寿命を保つには生活習慣病、感染症、悪性腫瘍の予防が大事です。平成26年の我が国の死亡者数は1,273,020人で第1位は悪性腫瘍(28.9%)、第2位心臓疾患(15.5%)、第3位は肺炎(9.4%)です。死亡者の3.5人に一人は悪性腫瘍(がん)ということになります。平成 27年のがんによる死亡者数の推定値が出ていますが、それによるとがんによる死亡者推定値は370,900名(男219,200名、女151,700名)です。
一方、がんに罹患する人は982,100名(男560,900名、女421,200名)と推定されています。死亡原因となるがんで一番多いのは男性では肺がん、女性では大腸がんですが罹患率で最も多いのは胃がんです。胃がんになるリスクとして萎縮性胃炎とヘリコバクターピロリ菌の感染が注目されています。

 萎縮性胃炎は老化によるものと考えられていましたがピロリ菌の感染によって進展することが分かってきました。ピロリ菌の感染が無いと老人でも萎縮性胃炎になっていないことも分ってまいりました。胃がんリスク健診はピロリ菌の感染の有無を調べるピロリ菌抗体検査と萎縮性胃炎による胃粘膜の萎縮程度を調べるペプシノーゲン検査を組み合わせた検査です。2種類の検査の結果の組み合わせでABCDにリスク度を分類して高リスクのグループには内視鏡検査などの精密検査を行います。この胃がんリスク検診(ABC検診)を胃がん検診の一部として採用する自治体や企業が増えてきました。胃がんの予防には塩分の多い食物を控えめにする生活習慣上の注意も必要です。がんは昔言われたように「不治の病」ではなくなってきたと言われています。それには早期発見、早期治療が肝心です。生活習慣の改善とマメに各種検診を受けて健康寿命を延伸して頑張っていただきたいと思います。


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