かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生

岡部保健師
最新号(平成29年6月)
1月 輸入感染症について
2月 冬の代名詞!?インフルエンザ
3月 性差について
4月 世界の幸福度と健康
5月 受動喫煙と健康増進法の改正
6月  もしかして熱中症? 熱中症の症状と対処法

平成29年6月

もしかして熱中症? 熱中症の症状と対処法

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。今年も春の陽気はあっという間で、例年のように暑い夏となりそうです。毎年のことですが、熱中症により病院へ搬送される人や残念ながら亡くなる方がいらっしゃいます。皆さんの職場における熱中症対策はいかがでしょうか。
 こまめに水分を摂取する、定期的な休憩をとる、暑熱作業を避けるため冷却機器を活用するなど、暑さ対策や脱水予防は熱中症にならないためにとても大切です。職場や個人毎に工夫していらっしゃることと思います。ですが、予防策をとっていても熱中症が発生する可能性はゼロではありません。万が一、熱中症が発生した場合に備えて、熱中症の症状や対処法について確認をお願いします。

1.熱中症とは
熱中症は端的に言うと、身体から汗が出過ぎて、体温を調整するしくみが空回りしたり、身体の水分(主に血液)が不足したりして、身体が脱水症状や高体温になっている状況です。

2.熱中症の症状
・自分で気がつく症状:大量の発汗、体温上昇、頭痛、吐き気、めまい、動悸、こむらがえり、脱力、倦怠感など
・周囲が気がつく症状:大量の発汗、フラフラしている、顔色が悪い、動きが鈍い、言動がおかしい

3.熱中症の対処法
上記2、熱中症の症状にあるような状態で、熱中症が疑われる場合はすぐに対処しましょう。特に水分が飲めるか飲めないかが重要なポイントです。

@涼しい場所へ移動(事務所(室温25℃程度)、クーラーをきかせた車内、日陰など)
A衣服を緩めて靴や靴下を脱がせる
B保冷剤で首、腋の下、足のつけ根を冷やす
C仰向けか横向きに寝かせる
D水分(塩分や糖分も含まれているスポーツドリンクや経口補水液)を摂取する

・水分を摂取できている場合:しばらく休憩をして症状が回復、意識がはっきりしていれば病院受診は不要もしくは必要性は低い状況です。当日の暑熱作業は避けるようにしましょう。
・水分の摂取ができない場合:脈や呼吸が速い、ふらついている、言動や意識がない又はおかしいなど、異変がある時は速やかに受診しましょう(場合によってはためらわずに救急搬送を)

4、医療機関受診時のポイント
病院を受診するときには、下記を医師に伝えていただくと処置がよりスムーズになります。
・持病の有無、治療状況は?
・作業開始前の体調は?(風邪気味、二日酔い、下痢、嘔吐、睡眠不足、朝食欠食など)
・どんな環境で(場所、気温、湿度、風速など)
・何をどの程度(作業強度と時間の長さ)行ったか?
・倒れた時の様子はどうだったか?
・水分や塩分の補給状況は?
・冷却法の程度は?(何を・どこに・どれくらい)
・応急処置をした後に症状は改善?悪化?
搬送に付き添う人は、以上の項目をわかる範囲でメモしておきましょう。


平成29年5月

受動喫煙と健康増進法の改正

 健康増進法は平成14年8月に成立しています。(施行は15年5月)この法律の25条に受動喫煙の防止について定められています。「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これを利用する者について、受動喫煙(他人のタバコの煙を吸わせること)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」と書かれています。この法律が施行されて10年以上が経ちますが受動喫煙防止は十分に進んでいないことや、2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックを控えて国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が「タバコのない五輪」を求めている事情があります。
 2004年以降の開催都市はすべて罰則をともなう防止策を導入しているため、我が国の法律による努力義務には限界があると判断しています。厚労省は昨年10月に改正案を示し、これに沿って法案をまとめています。飲食店、パチンコ店、ホテル旅館業界から一律の屋内禁煙には反対の意見があり特に小規模飲食店には配慮を求めています。受動喫煙による健康障害には肺がん、乳児突然死症候群、虚血性心疾患などが明白になっています。
 受動喫煙防止には5種類程度の区分が想定されています。@敷地内禁煙A建物内禁煙B原則建物内禁煙(喫煙室設置可)C乗り物内禁煙D原則乗り物内禁煙(喫煙室設置可)です。
 オリンピックを開催した都市ではロンドンは建物内禁煙、リオデジャネイロでは敷地内禁煙、平昌(韓国)は原則建物内禁煙(飲食店は喫煙室設置可)となっています。我が国は韓国型になる可能性があります。

 小規模飲食店には喫煙室設置の場所もないため喫煙を可として、家庭、旅館ホテルの個室、老人ホームの個室は喫煙禁止にしないなど多くの問題があって法案の提出は遅れています。この法律に違反した場合は喫煙者と施設の管理者の双方が処罰されます。電子タバコは規制対象としたうえで健康障害が無いと分かったものは除外していく方針です。法律の施行期日は平成31年9月のラグビーワールドカップに間に合うようにする予定です。安衛法の68条の2や71条で職場の喫煙は努力義務になっていますが整合させるものと思われます。4月7日WHOの事務局次長と生活習慣病予防部長が視察に訪れ、新橋の飲食店で喫煙席と禁煙席に仕切りが無いことに驚き塩崎厚労大臣に苦言を呈しました。皆さんも禁煙に努めてください。


平成29年4月

世界の幸福度と健康

 羽田鉄工団地の皆様こんにちは。桜の咲く頃、いかがお過ごしでしょうか。私は先月ここ最近の夢だった台湾へ出掛けてきました。台北市内に宿泊し、市内の町並みや屋台の食事を楽しみながら、寺院や公園、夜市、九扮、金瓜石などを巡り、短い旅でしたがとても充実したものでした。以前より台湾は親日国のため、日本人の旅行者や移住者も多いと聞きます。確かに今回の旅行中もたくさんの日本人に遭遇しました(特に九扮にいた時は、半数以上が日本人なのではと思うほどでした)。なぜそこまで日本人に人気があり、魅力的な国なのかとずっと疑問に思っていました。今回の旅で感じた台湾の魅力は、日本の原風景や何となく懐かしい雰囲気でした。ただ、その一方で水道やガス、電気、道路や鉄道などのインフラは、日本に比べると開発の途中にあるようです。物の豊かさよりも風土や自然により心の豊かさを得られる旅でした。
 前置きが長くなりましたが、心の豊かさ、つまりは「幸福度」に関する統計が先日発表されました。国連が2012年に「世界幸福度報告(World Happiness Report)」を発表して以降、毎年報告がなされています。経済学や心理学、統計解析、国家統計などを用いて、1人当たりの国内総生産(GDP)、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由度などの視点から各国の幸福度(Well-being)を説明し、ランキング化しています。
 今年の世界幸福度報告1位はノルウェー、2位がデンマーク、3位アイスランド、次いでスイス、フィンランドと北欧の国が上位を占めていました。北欧諸国は社会保障や制度が充実しているため、幸福度も高いと考えられます。一方で日本はどうなっているかと言うと、世界で51位でした。2016年は53位なので大きな変動はありません。(ちなみに台湾は33位だったそうです。)
 上位の国と日本の間で一番の違いは何なのか。ランキングのグラフでは各説明指標の構成を読み取ることができます。グラフを見てみますと「Dystopia + residual」という「貧富の格差」を表す項目で上位の国と日本の間に差が出ているようです。
貧富の格差は、医療や健康においても非常に重要な視点です。現在の日本では一般的に医療費は3割を本人が負担し、残り7割は健康保険組合が負担しています。しかし、医療の高度化や自由診療、医療機関の偏りなどにより、経済的な負担、居住地域による医療格差、さらには健康情報を入手し活用する力(ヘルスリテラシー)の違いにより医療や自身の健康に対する在り方、捉え方には格差が生じているのかもしれません。
 この「かけはし」のなかでは、いろいろな健康情報について産業医の北條先生と私でわかりやすく紹介していきたいと考えていますので今年度もよろしくお願いします。
世界幸福度報告:http://worldhappiness.report/


平成29年3月

性差について

 桜の開花が報じられる頃となり一年で一番いい季節になりました。花粉症の方には最悪の季節でお気の毒です。
 今回は男性と女性を比べてみました。まず平均寿命ですが2015年のデータによれば男性は80.79歳、女性は87.05歳でともに過去の最高を更新しました。国際的な比較では2012年以来世界一を守ってきた女性の平均寿命が香港(87.32歳)に抜かれて2位になりました。3位はスペインの85.58歳でした。一方、男性は1位が香港で81.24歳、2位はアイスランドとスイスで81.0歳、日本は前年の3位から4位に転落しました。医療技術の進歩、衛生思想やインフラの普及によって平均寿命はまだのびる余地があると言われています。あまり長生きしても医療や介護の問題がますます大きく浮上しそうです。
 2014年と比べると2015年の平均寿命は男性で0.29歳女性では0.22歳延伸しています。男性が女性よりも短命なのは不健康な食事、喫煙、飲酒、特定健診やがん検診などの健康サービスの不受診、自覚症状があっても仕事優先のため早期受診の逡巡などが挙げられます。また、社会的条件として男性は危険な業務に就いている事情もあります。
 次に健康寿命を比べてみます。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。男性は71.19歳、女性は74.21歳で平均寿命から差し引くと不健康な期間(介護を必要とする期間)は男性が9.13年女性が12.68年となります。
 男女の差は病気の診断や治療についても見直されてきました。これまで医療は成人男子を標準として病態、診断方法、治療法が確立されてきた経緯があります。
 理由の一つとして1977年アメリカで睡眠薬によるサリドマイド事件や流産を予防する薬により生まれた女児が膣がんになる事例があり治験から女性を除外するようになったと言われています。
 薬の能書(説明書)に妊娠中の女性には安全性が確認されていませんと書かれていることが多いのはそのせいかもしれません。同一疾患に対する危険因子や治療法として用いる薬品にも男女差あることが分かってきました。男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)、生活習慣の相違などが考えられます。男性を基準に作成した診断方法や治療法をそのまま女性に適応した場合、最良でない可能性があります。男女差を研究して医療に反映する研究が進められています。解剖学的な理由で生殖器に関する臓器(子宮がん、乳がん、前立腺がん等)を除外しても、男女間でかかりやすい病気の傾向が異なります。痛風は圧倒的に男性に多く、鉄欠乏性貧血は女性に多いことはよく知られている事実です。
 他にも男女比が大きく傾いていて女性に多い自己免疫疾患、骨粗鬆症、うつ病や、発生率はほぼ同じでもその疾患の経過に差のあるもの(心筋梗塞など)も有ります。
 1990年からアメリカで性差による発症率の相違や性差による痛み感覚の相違、骨の構造、薬の代謝など多くの点で研究が進められ、確認された事実も多く存在します。診断も治療もますますオーダーメイド化していく時代になりつつあります。
 このような研究を性差医学と言います。今後ますます詳細なことが分かってくることに期待します。


平成29年2月

冬の代名詞!?インフルエンザ

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。寒い日が続いていますが体調いかがお過ごしでしょうか。冬場は空気が乾燥し飛沫感染(くしゃみや咳で感染)や接触感染が増える時期です。この数年で冬場に最も注目される感染症のひとつに「インフルエンザ」があります。特に1月下旬にから患者数が激増しているようです。今月は冬の定番ではありますがインフルエンザの症状と職場でできる対処法についてお話します。

1.インフルエンザの症状
インフルエンザのウイルスに感染すると2日前後の潜伏期間を経て症状が出現します。インフルエンザといえば高熱、関節痛が代表的な症状ですが、最近の傾向では予防接種を受けていると症状が軽くなり、インフルエンザにかかっていることに気がつかず過ごしている人もいるようです。
・突然の高熱:体温が38度以上の高熱
・関節痛、筋肉痛、頭痛:全身に炎症が生じて体の節
々に痛み
・全身の倦怠感:発熱、くしゃみ、鼻水、咳、全身の
疼痛などで体がだるい
・喉の痛み、くしゃみ、鼻水、咳:感冒(風邪)と同じような症状

2.職場でできる感染症の予防
・手洗い、うがい:朝の出社時や外出から戻ったときは手洗い、うがいをする
・咳エチケット:咳やくしゃみをする人はマスクをつける
咳やくしゃみにより周囲1〜2mにウイルスがとび、それによる感染を飛沫感染と言います
・体調チェック:朝の出社時に体調不良がないか確
認、無理をしない
・事務所の環境:温度・湿度・換気も大切なポイント
 空気が乾燥している環境はインフルエンザのウイルスにとって居心地が良い状況です。室内の湿度は40%〜70%程度、室温は17℃〜28℃を目安に空調や加湿器の調整をしましょう。エアコンの温度を適温に設定しても、人の密度や換気、機械からの放熱で気温が上がっていることがあります。温度・湿度計で測定をしながら調整することをお勧めします。湿度が高すぎるとカビ菌が増殖するので、湿度は高すぎても低すぎても注意が必要です。


平成29年1月

輸入感染症について


 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 いよいよ2020年の東京オリンピックまであと3年となり各種の競技会場建設も加速していくものと思います。前回の東京オリンピックでは代々木の選手村に設けられた診療所でアルバイトしたことを思い出します。三宅選手(重量挙げ)遠藤選手(体操)の時代です。湿布を出した記憶があります。報道によると2020年に向けて外国人観光客が増えていて年間2,500万人と推定されるそうで東京都も受け入れ準備を進めているそうです。オリンピック開催による経済効果が歓迎され大きな期待を集めているようです。外国人入国者は2010年頃から激増していますが、日本人出国者も1990年頃から急増して毎年1,600万人が出国しています。行き先も多様化しています。これだけ大勢の人が出入りしますと輸入感染症対策が問題となります。海外渡航者の健康問題を専門とする渡航医学(Travel medicine)という分野が2000年代から導入されて、出国前の健康診断、予防接種、出国先の情報提供、帰国後のケアも行っています。このような対策がとられてからマラリアの輸入例は激減しました。数年前にはあまり耳にしなかった病気が大きく報道されるようになり驚いています。ブラジルオリンピックで有名になったジカ熱も国内に輸入されています。代々木公園の例が発端となったデング熱も国内感染は減りましたが輸入例は毎年100例を超えています。日本からは大分遠いアフリカのエボラ出血熱も感染疑いのある方が帰国後に発熱で近所の開業医を受診していて、結果は風邪だったようですが周囲の人たちはヒヤヒヤしたようです。その他では少し前になりますがSARSやMERSもありました。輸入感染症は人間だけではありません。2016年(昨年)11月頃からトリインフルエンザの問題があります。トリインフルエンザの起源は中国の北方、ロシアとの国境付近の水鳥が高病原性ウイルスを保有していて周囲の野鳥や家禽に感染させるようです。トリからヒトへの感染は少ないといわれていますが、トリからブタのような家畜に感染するとヒトへの感染が成立するようです。この段階でウイルスが突然変異を起こして新型インフルエンザ(A型)になりヒト→ヒト感染で拡散していきます。水鳥はこの高病原性ウイルスをもっていても病気になりません。元気に海を渡ってきます。
 平成22年→23年のシーズンが最悪で118万羽を処分しましたが今シーズンはこのペースを上回っています。養鶏場に警戒を呼びかけています。感染すると鶏舎から半径10qは移動が制限されます。名古屋の東山動物園のカモが感染し、秋田の大森動物園の黒鳥も感染して殺処分されました。園長さんは子供たちのアイドルを「断腸の思いで殺処分した」とコメントしています。渡り鳥の渡来する水辺は鳥にとっては危険地帯です。インフルエンザは感染力が極めて強く事業所内に発生すると次々に休むことになり業務に支障を来たし、対外的にも信用を失うこととなります。今年も健康経営に務めましょう。




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