かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) | 羽田鉄工団地協同組合 |
平成29年 | |
1月 | 輸入感染症について |
2月 | 冬の代名詞!?インフルエンザ |
3月 | 性差について |
4月 | 世界の幸福度と健康 |
5月 | 受動喫煙と健康増進法の改正 |
6月 | もしかして熱中症? 熱中症の症状と対処法 |
7月 | 発達障害について |
8月 | 労働時間と健康について |
9月 | 健康寿命の延伸 |
10月 | ウォーキングの秋!! |
11月 | 仕事と育児、介護、治療の両立支援について |
12月 | バランスの良い食生活について |
平成29年12月
バランスの良い食生活について
羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。寒い日が続いていますがいかがおすごしでしょうか。
年末年始が近づくにつれ、会食や宴会などのイベントが多くなり、食生活が乱れてはないでしょうか。「食」は楽しみでもあり、他者交流の機会でもあります。ですが一番重要な「食」の持つ意味は栄養の摂取ではないでしょうか。今月はバランスの良い食生活についてご紹介します。食べ過ぎや栄養バランスが偏りがちになる年末年始に向けて、気に留めておきましょう。
【必要なエネルギー量】
一日に必要なエネルギー量(カロリー)は年齢や性別、体型、活動量によって異なります。内臓機能維持のために必要な基礎代謝エネルギーに、日常の身体活動量で消費される分を加えます。食事で摂取するエネルギー量と体が消費するエネルギー量がほぼ同じになるようにします。(図の必要なエネルギー量の計算方法を参考にしてください。)
例:40歳、男性、身長170cm、日中の活動量レベルUの場合
@基礎代謝エネルギー22.3×A標準体重64×B身体活動レベル指数1.75=2408kcal/日
食事でのエネルギー摂取が多すぎると、肥満やメタボリックシンドロームなどに、少なすぎると栄養不足や筋肉量が減少します。筋肉量が減少すると脂肪を蓄えやすくなり太りやすくなります。過度な食事制限によるダイエットは一時的な減量効果があるかもしれませんが、長期的に考えると肥満に繋がるリスクが潜んでいます。
【食事の基本となる「バランス」】
厚生労働省・農林水産省ではバランスの良い食事をとる方法として「食事バランスガイド」を推奨しています。「食事バランスガイド」は主食、副菜、主野、乳製品、果物など、それぞれの1日に食べる量をコマの形で表します。コマがバランス良く回るような食事の内容と量がポイントです。
他の方法としてアメリカで推奨している「ワンプレートメソッド」があります。直径20cmのお皿を使い糖質、たんぱく質、野菜などの食材の量とバランスを視覚的に捉え易くしています。
【朝ご飯を食べていますか?】
「朝はお腹が空かない」、「時間がない」など朝食を食べない方もいるようです。食事は1日のバランスの良さと定期的に3食食べることが大切です。
朝はお腹が空かない人は前日の夕食を軽めにする、時間がないときは牛乳やバナナ、おにぎりなど手軽に食べられるものにするなど出来ることから始めてみてはいかがでしょうか。
持病のある方は、カロリーや栄養に制限があることがありますので、主治医の先生に確認をしておきましょう。
平成29年11月
仕事と育児、介護、治療の両立支援について
早いもので、もう11月になりました。インフルエンザが流行する季節です。
今年はワクチンの供給が遅れて「ワクチン不足」が問題になっています。人ごみはできるだけ避けて、外出から帰ったらうがい、手洗い、を励行しましょう。室内は乾燥を防ぎ、十分な睡眠時間を確保するように生活習慣を改善しましょう。社内では「咳エチケット」を守ってインフルエンザの社内での蔓延を予防してください。今回は両立支援について書かせていただきます。我が国で少子高齢化が問題になって久しく、学者の方々は総人口の減少にともなって若年層が減少しGDP(国内総生産)も縮小すると解説しています。政治の方では少子高齢化による社会保障費の高騰が問題となり、今回の選挙でも大きな争点となりました。人口の減少で最も問題になるのは生産年齢層の減少です。
生産年齢層とは15歳から64歳を指して、労働市場に参加する大多数の年齢層です。0〜14歳を年少人口、65歳以上を老年人口と呼びますが、製造業やサービス業に従事してモノ、サービスを提供してくれる産業活動を行って年少人口と老年人口を支えてくれるのは生産年齢層の方々です。日本の総人口は2010年頃から減り始めましたが、生産年齢人口の方は10年以上早い1998年頃から減少が始まっています。生産人口の減少を補うには高齢者や女性に労働市場に参加してもらうことが必要です。
1億総活躍社会」が提唱されていることからも高齢者の再雇用、女性の離職防止が課題になってきます。女性が離職していく原因として出産、育児、介護(家族の)の問題が多いと言われています。次に治療就労両立支援ですが病気を治療しつつ就労を継続できる社会の構築を目指しています。治療としては主として「がん」「脳卒中」「メンタルヘルス分野」「糖尿病」が挙げられています「がん」は死亡原因の第1位で3人に1人が「がん」で死亡し2人に1人が罹患する病気です。しかし、このうち6割は5年生存が期待できます。約30%の方は「がん」と診断されただけで離職しています。国立がんセンターの発表では2006年〜2008年に「がん」と診断された人は64万4400人、このうち5年後に生存している場合を示す「5年生存率」は62.1%でした。65歳以上が3割を占めます。
5年生存率の内容は大腸がん71.1%、胃がん64.6%、肝臓がん32.6%、肺がん31.9%でした。全体の生存率は3年前の調査より伸びていて男女別では男性59.1
%、女性66.0%でした。「がん」と診断されると退職する方も多いようですが、今は治療法や薬剤も進歩していて、「がん」はイコール「死」を意味するものではなくなってきました。治療をしながら仕事を続けてもらいたいということで両立支援が注目されています。
平成29年10月
ウォーキングの秋!!
羽田鉄工団地の皆様こんにちは。10月になり秋の訪れを感じる気候になりました。季節の変わり目、体調を崩している方はいらっしゃらないでしょうか。
秋といえば○○と言われますが、皆さんにとって秋はどのような季節でしょうか。私にとって秋はスポーツの季節です。夏は日差しも強く、屋外での運動は熱中症の危険性もありお勧めしませんが、秋は心地の良い気候のなか外で体を動かすことに最適だと考えています。一方で、日本人は世界的にみても「座りすぎ」と言われ一日の座位時間が8〜9時間と統計調査によると世界に2番目に長いそうです。今月は体を動かすことに注目し、健康に効果的な運動量や、活動の見える化の方法についてご紹介していきます。
【健康と運動】
運動と言われて何をイメージするでしょうか?マラソン、ジョギング、ウォーキング、野球やバスケット、サッカー、ヨガや水泳などいろいろな運動があります。ウォーキングに着目して、どの程度健康に影響するのか確認すると、8,000歩/日は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防、7,000歩/日は将来的な骨粗しょう症や筋力低下予防、5,000歩/日は認知症予防になると言われています。さらに10,000歩/日になると、体力強化や健康増進などに寄与します。8,000歩も歩くのは大変だ、難しいなと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本人は仕事や通勤などの日常の活動において5,000歩/日の人が多いそうです。10分で1,000歩と仮定し1日30分程度ウォーキングを取り入れると、1日8,000歩に到達します。
日常的に運動をしない人も8,000歩/日を目標にウォーキングをしてみては、いかがでしょうか。歩き過ぎはかえって健康を害することもあるので気をつけましょう。
【ウォーキングの見える化】
1日8,000歩を目安にウォーキングを!と言いましたが、「見える化」をするとより一層に取組みやすくなります。歩数を測定する方法として歩数計が一般的ですが、最近は歩数計に加えてウェアラブルの活動量計なども種類が豊富になりリーズナブルな物も増えてきました。またスマートフォンやパソコンにデータを取り込み、すぐに実績や経過を確認しやすくなっています。
【ウォーキングの注意点】
健康に効果的なウォーキングの注意点のひとつにウォーキング時の姿勢があります。
@視線は遠くに、あごは引く
A肩の力を抜く
B背筋を伸ばす
C胸を張る
D脚を伸ばす
E腕は前後に大きく振る
Fかかとから着地
G歩幅は出来るだけ広くとる
平成29年9月
健康寿命の延伸
8月は雨の日が多く六郷の花火大会も二子玉川の花火も中止になりました。高温多湿の気候は体調を崩しやすいので皆さんも注意が必要です。
今回は健康寿命について書きたいと思います。国立社会保障・人口問題研究所が8月1日に平成27年度の社会保障給付費を発表しました。総額は119兆2254億円(伸び率2.3%)で過去最高でした。国民が長寿になることは喜ばしいことですが、社会保障費(年金、医療、福祉、その他)の増加を抑制する必要があります。
6月に内閣府から発表された「骨太の方針」で「健康寿命の延伸」が提案されています。国民がより健康になって「医療」や「介護」のお世話にならないように努めて欲しいということです。
健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に提唱した概念で「日常的、継続的な医療、介護に依存しないで、自分の身心生命を維持し、自立した生活が出来る生存期間」と定めています。
WHOの発表によれば2016年の健康寿命は男女平均で1位が日本74.9歳、2位シンガポール73.9歳、3位韓国73.2歳とアジアが上位を占めています。最短はシエラレオネの44.4歳でした。統計の無い国もありますが194カ国の集計です。日本人の健康寿命は男性が70.42歳、女性が73.62歳です。県別では男女とも山梨県が1位です。2位は男性が沖縄県、女性は静岡県でした。平均寿命と健康寿命の差は男性が10.36年、女性が13.52年でした。この期間は不健康期間として医療や介護を受けることになります。健康寿命を延ばすにはテクテク、カミカミ、ニコニコ、ドキドキが大切です。
適度な運動(テクテク)3度の食事(カミカミ)心の健康(ニコニコ)感動的な刺激(ドキドキ)です。
男女とも1位である山梨県の特徴は@がん検診や特定健診の受診率が高い、A元気に働き続ける高齢者が多い、Bボランティア活動への参加など社会への関わりを持つことで「運動」「栄養」「社会参加」が出来ているようです。
平均寿命について
厚労省は7月27日、平成28年度の簡易生命表を発表しました。男女とも平均寿命は過去最高を更新しました。男性は前年比0.23歳伸びて80.98歳、女性は0.15歳伸びて87.14歳となりました。男女差は6.16歳で前年に比べて0.08歳短縮しました。悪い生活習慣は排除して健康寿命の延伸に努めてください。
平成29年8月
労働時間と健康について
羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。毎日のように暑い日が続いていますが、お元気にお過ごしのことと思います。近ごろ「働きかた改革」という言葉を耳にされたことはありますか?一部の企業では「働きかた改革」として週休3日制の導入(週4日間、10時間/日の就業)、在宅勤務や副業を認めるなどの試みをしています。労働や労働時間のあり方の変化が進んでいくことが考えられます。労働時間と健康については密な関連があり、厚生労働省は平成18年に過重労働による健康障害防止のための総合対策(平成20年に改訂)を策定し、過労死や脳心血管疾患をはじめとした過重労働とその健康影響の問題への対策を考案しました。最近の「働きかた改革」に伴い、過重労働と健康影響の問題は再び注目されるようになりました。
○過重労働と健康影響について
過重労働を原因に引き起こされる健康問題には、大きく2つに分かれます。身体的な問題として心・脳血管疾患の発症リスクが高まること、もうひとつは精神的な面でメンタルヘルス不調、精神障害の発生があります。メンタルヘルス不調は長時間労働による量的負担に加えて、職場の人間関係や仕事の質、適性度も関連要因と考えられると示唆されています。
○過重労働と心・脳血管疾患について
国内の労働衛生機関の調査報告によると、過去5年間(平成22年1月から平成27年3月)に労災認定された心・脳血管疾患の件数は1,564件、そのうち脳疾患(脳梗塞や脳内出血など)は 61.9%、心疾患(心筋梗塞や心停止、狭心症など)は37.9%でした。
心・脳血管疾患を発症する前の時間外労働の状況は、発症1ヶ月前の平均は99.6時間、6ヶ月平均は86.3時間でした。(驚くべき事に発症1ヶ月前の時間外労働の最大値は360時間でした。この事例の場合は30日稼動したと想定し、時間外労働が12時間つまり1日20時間労働になります。)
○過重労働による心・脳血管疾患の予防
1ヶ月の時間外労働が100時間または2〜6ヶ月の平均時間外労働が80時間以上になると、心・脳血管疾患の発症リスクが高くなると言われています(図)。労働時間の長時間化に加えて、高血圧・脂質異常症・糖尿病があり動脈硬化により心・脳血管疾患の発症リスクは上昇します。先の調査によると、過重労働と心・脳血管疾患の労災認定事例のなかには、頭痛や胸部痛などの前駆症状があった人18.9%、無かった人72.7%と突然発症することが大半です。一方で約2割の人は症状があっても病院を受診する時間も無く過ごしていたことも考えられます。また労働安全衛生法で定められた定期健康診断の実施率は69.1%と約3割の事例では実施していなかったと報告されています。
過重労働と心・脳血管疾患の発症の関連性は明らかですが、予防するためには労働時間を見直すことに加えて、定期健康診断の受診、有所見がある場合は二次検診を受診する、治療を放置しない、体調に心配なことがある時は受診するなどの基本的な日頃からの健康管理も重要です。
引用:過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究(労働安全衛生総合研究所過労死等調査研究センター, 2016年)
平成29年7月
発達障害について
猛暑の季節です。健康に留意して熱中症の予防にも努めていただきたいと思います。
最近の話題として発達障害という言葉がよく出てきます。小児期の身体的な発育や知的な発達の遅延と思われ勝ちですが実は大人の発達障害が問題になっています。発達障害は医学的に用いられる場合と法律上の定義とでは相違があり、社会的な認知度は微妙に異なります。「発達障害者支援法」(平成16年制定)では「てんかん」などの中枢神経系の疾患や脳血管障害の後遺症も対象となっています。知的障害は含まれません。
医学的には自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)を中核とした障害を指します。今までは「少し変わった人」と見過ごされてきた人たちが1980年後半から診断基準が普及して診断されやすくなった背景があります。WHOの国際疾病分類第10版によるとコミュニケーションと社会性の困難さを特徴とする疾患です。統計的には世界的にも国内的にも増えています。日本での頻度はASDで1%、ADHDは小児で5%、大人で2.5%と言われていますが「見えにくい障害」であり潜在的な症例もあると思います。大人の発達障害は得意、不得意の差が激しく他の人に比べて適合する仕事、職種が限られ人間関係が狭くなります。知的障害はともないません。先天的な特性であり抜本的な治療法はありません。しかし、適切な支援があれば症状を軽減することが可能です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴
@伝えたいことが分かっていても言葉にまとめることが苦手。
A会話をする際に相手の目を見て話すことができない。
B日常的な業務で予定していたスケジュールに変更が出ると激しく混乱し柔軟に対処することが難しい。
C興味の範囲が限定されて他人の話に無関心。
D体を動かすことが苦手。特に球技(野球、サッカー)は嫌い。
アスペルガー症候群はASDに包括されます。
注意欠如多動性障害(ADHD)の特徴
注意欠如
@後先考えずに行動、決断する。
A人が喋っている時に発言する。喋りが長くなりやすい。
多動性
@何時間も同じ作業をするより10〜20分で作業を変える複数の作業が楽である。
A同じ作業を長時間繰り返すとミスが増える。
B貧乏ゆすりなど体の一部が揺れがちで落ち着きがない。
学習障害(LD)
読解、数学、書き取り、推理などが著しく困難なこと。
発達障害は遺伝的要因が関与しています。生まれつき脳機能の発達のアンバランスやその人が育つ環境、周囲の人との軋轢から社会生活に困難が生じる障害です。人間、誰にでも得手、不得手はありますが発達障害の人はこの差が極めて大きく、物事の感じ方も一種違った感覚で考え方も変わっています。仕事の理解や進め方、注意力、集中力、持続力の偏りや人間関係のすれ違いなどで社会生活に支障をきたしやすい障害です。最近、企業や社員からの相談も増えています。有名人ではスティーヴン・スピルバーグ、トム・クルーズ、黒柳徹子、勝間和代(敬称略)など錚々たる方々がいます。(公開されています)
平成29年6月
もしかして熱中症? 熱中症の症状と対処法
羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。今年も春の陽気はあっという間で、例年のように暑い夏となりそうです。毎年のことですが、熱中症により病院へ搬送される人や残念ながら亡くなる方がいらっしゃいます。皆さんの職場における熱中症対策はいかがでしょうか。
こまめに水分を摂取する、定期的な休憩をとる、暑熱作業を避けるため冷却機器を活用するなど、暑さ対策や脱水予防は熱中症にならないためにとても大切です。職場や個人毎に工夫していらっしゃることと思います。ですが、予防策をとっていても熱中症が発生する可能性はゼロではありません。万が一、熱中症が発生した場合に備えて、熱中症の症状や対処法について確認をお願いします。
1.熱中症とは
熱中症は端的に言うと、身体から汗が出過ぎて、体温を調整するしくみが空回りしたり、身体の水分(主に血液)が不足したりして、身体が脱水症状や高体温になっている状況です。
2.熱中症の症状
・自分で気がつく症状:大量の発汗、体温上昇、頭痛、吐き気、めまい、動悸、こむらがえり、脱力、倦怠感など
・周囲が気がつく症状:大量の発汗、フラフラしている、顔色が悪い、動きが鈍い、言動がおかしい
3.熱中症の対処法
上記2、熱中症の症状にあるような状態で、熱中症が疑われる場合はすぐに対処しましょう。特に水分が飲めるか飲めないかが重要なポイントです。
@涼しい場所へ移動(事務所(室温25℃程度)、クーラーをきかせた車内、日陰など)
A衣服を緩めて靴や靴下を脱がせる
B保冷剤で首、腋の下、足のつけ根を冷やす
C仰向けか横向きに寝かせる
D水分(塩分や糖分も含まれているスポーツドリンクや経口補水液)を摂取する
・水分を摂取できている場合:しばらく休憩をして症状が回復、意識がはっきりしていれば病院受診は不要もしくは必要性は低い状況です。当日の暑熱作業は避けるようにしましょう。
・水分の摂取ができない場合:脈や呼吸が速い、ふらついている、言動や意識がない又はおかしいなど、異変がある時は速やかに受診しましょう(場合によってはためらわずに救急搬送を)
4、医療機関受診時のポイント
病院を受診するときには、下記を医師に伝えていただくと処置がよりスムーズになります。
・持病の有無、治療状況は?
・作業開始前の体調は?(風邪気味、二日酔い、下痢、嘔吐、睡眠不足、朝食欠食など)
・どんな環境で(場所、気温、湿度、風速など)
・何をどの程度(作業強度と時間の長さ)行ったか?
・倒れた時の様子はどうだったか?
・水分や塩分の補給状況は?
・冷却法の程度は?(何を・どこに・どれくらい)
・応急処置をした後に症状は改善?悪化?
搬送に付き添う人は、以上の項目をわかる範囲でメモしておきましょう。
平成29年5月
受動喫煙と健康増進法の改正
健康増進法は平成14年8月に成立しています。(施行は15年5月)この法律の25条に受動喫煙の防止について定められています。「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これを利用する者について、受動喫煙(他人のタバコの煙を吸わせること)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」と書かれています。この法律が施行されて10年以上が経ちますが受動喫煙防止は十分に進んでいないことや、2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックを控えて国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が「タバコのない五輪」を求めている事情があります。
2004年以降の開催都市はすべて罰則をともなう防止策を導入しているため、我が国の法律による努力義務には限界があると判断しています。厚労省は昨年10月に改正案を示し、これに沿って法案をまとめています。飲食店、パチンコ店、ホテル旅館業界から一律の屋内禁煙には反対の意見があり特に小規模飲食店には配慮を求めています。受動喫煙による健康障害には肺がん、乳児突然死症候群、虚血性心疾患などが明白になっています。
受動喫煙防止には5種類程度の区分が想定されています。@敷地内禁煙A建物内禁煙B原則建物内禁煙(喫煙室設置可)C乗り物内禁煙D原則乗り物内禁煙(喫煙室設置可)です。
オリンピックを開催した都市ではロンドンは建物内禁煙、リオデジャネイロでは敷地内禁煙、平昌(韓国)は原則建物内禁煙(飲食店は喫煙室設置可)となっています。我が国は韓国型になる可能性があります。
小規模飲食店には喫煙室設置の場所もないため喫煙を可として、家庭、旅館ホテルの個室、老人ホームの個室は喫煙禁止にしないなど多くの問題があって法案の提出は遅れています。この法律に違反した場合は喫煙者と施設の管理者の双方が処罰されます。電子タバコは規制対象としたうえで健康障害が無いと分かったものは除外していく方針です。法律の施行期日は平成31年9月のラグビーワールドカップに間に合うようにする予定です。安衛法の68条の2や71条で職場の喫煙は努力義務になっていますが整合させるものと思われます。4月7日WHOの事務局次長と生活習慣病予防部長が視察に訪れ、新橋の飲食店で喫煙席と禁煙席に仕切りが無いことに驚き塩崎厚労大臣に苦言を呈しました。皆さんも禁煙に努めてください。
平成29年4月
世界の幸福度と健康
羽田鉄工団地の皆様こんにちは。桜の咲く頃、いかがお過ごしでしょうか。私は先月ここ最近の夢だった台湾へ出掛けてきました。台北市内に宿泊し、市内の町並みや屋台の食事を楽しみながら、寺院や公園、夜市、九扮、金瓜石などを巡り、短い旅でしたがとても充実したものでした。以前より台湾は親日国のため、日本人の旅行者や移住者も多いと聞きます。確かに今回の旅行中もたくさんの日本人に遭遇しました(特に九扮にいた時は、半数以上が日本人なのではと思うほどでした)。なぜそこまで日本人に人気があり、魅力的な国なのかとずっと疑問に思っていました。今回の旅で感じた台湾の魅力は、日本の原風景や何となく懐かしい雰囲気でした。ただ、その一方で水道やガス、電気、道路や鉄道などのインフラは、日本に比べると開発の途中にあるようです。物の豊かさよりも風土や自然により心の豊かさを得られる旅でした。
前置きが長くなりましたが、心の豊かさ、つまりは「幸福度」に関する統計が先日発表されました。国連が2012年に「世界幸福度報告(World Happiness
Report)」を発表して以降、毎年報告がなされています。経済学や心理学、統計解析、国家統計などを用いて、1人当たりの国内総生産(GDP)、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由度などの視点から各国の幸福度(Well-being)を説明し、ランキング化しています。
今年の世界幸福度報告1位はノルウェー、2位がデンマーク、3位アイスランド、次いでスイス、フィンランドと北欧の国が上位を占めていました。北欧諸国は社会保障や制度が充実しているため、幸福度も高いと考えられます。一方で日本はどうなっているかと言うと、世界で51位でした。2016年は53位なので大きな変動はありません。(ちなみに台湾は33位だったそうです。)
上位の国と日本の間で一番の違いは何なのか。ランキングのグラフでは各説明指標の構成を読み取ることができます。グラフを見てみますと「Dystopia
+ residual」という「貧富の格差」を表す項目で上位の国と日本の間に差が出ているようです。
貧富の格差は、医療や健康においても非常に重要な視点です。現在の日本では一般的に医療費は3割を本人が負担し、残り7割は健康保険組合が負担しています。しかし、医療の高度化や自由診療、医療機関の偏りなどにより、経済的な負担、居住地域による医療格差、さらには健康情報を入手し活用する力(ヘルスリテラシー)の違いにより医療や自身の健康に対する在り方、捉え方には格差が生じているのかもしれません。
この「かけはし」のなかでは、いろいろな健康情報について産業医の北條先生と私でわかりやすく紹介していきたいと考えていますので今年度もよろしくお願いします。
世界幸福度報告:http://worldhappiness.report/
平成29年3月
性差について
桜の開花が報じられる頃となり一年で一番いい季節になりました。花粉症の方には最悪の季節でお気の毒です。
今回は男性と女性を比べてみました。まず平均寿命ですが2015年のデータによれば男性は80.79歳、女性は87.05歳でともに過去の最高を更新しました。国際的な比較では2012年以来世界一を守ってきた女性の平均寿命が香港(87.32歳)に抜かれて2位になりました。3位はスペインの85.58歳でした。一方、男性は1位が香港で81.24歳、2位はアイスランドとスイスで81.0歳、日本は前年の3位から4位に転落しました。医療技術の進歩、衛生思想やインフラの普及によって平均寿命はまだのびる余地があると言われています。あまり長生きしても医療や介護の問題がますます大きく浮上しそうです。
2014年と比べると2015年の平均寿命は男性で0.29歳女性では0.22歳延伸しています。男性が女性よりも短命なのは不健康な食事、喫煙、飲酒、特定健診やがん検診などの健康サービスの不受診、自覚症状があっても仕事優先のため早期受診の逡巡などが挙げられます。また、社会的条件として男性は危険な業務に就いている事情もあります。
次に健康寿命を比べてみます。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。男性は71.19歳、女性は74.21歳で平均寿命から差し引くと不健康な期間(介護を必要とする期間)は男性が9.13年女性が12.68年となります。
男女の差は病気の診断や治療についても見直されてきました。これまで医療は成人男子を標準として病態、診断方法、治療法が確立されてきた経緯があります。
理由の一つとして1977年アメリカで睡眠薬によるサリドマイド事件や流産を予防する薬により生まれた女児が膣がんになる事例があり治験から女性を除外するようになったと言われています。
薬の能書(説明書)に妊娠中の女性には安全性が確認されていませんと書かれていることが多いのはそのせいかもしれません。同一疾患に対する危険因子や治療法として用いる薬品にも男女差あることが分かってきました。男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)、生活習慣の相違などが考えられます。男性を基準に作成した診断方法や治療法をそのまま女性に適応した場合、最良でない可能性があります。男女差を研究して医療に反映する研究が進められています。解剖学的な理由で生殖器に関する臓器(子宮がん、乳がん、前立腺がん等)を除外しても、男女間でかかりやすい病気の傾向が異なります。痛風は圧倒的に男性に多く、鉄欠乏性貧血は女性に多いことはよく知られている事実です。
他にも男女比が大きく傾いていて女性に多い自己免疫疾患、骨粗鬆症、うつ病や、発生率はほぼ同じでもその疾患の経過に差のあるもの(心筋梗塞など)も有ります。
1990年からアメリカで性差による発症率の相違や性差による痛み感覚の相違、骨の構造、薬の代謝など多くの点で研究が進められ、確認された事実も多く存在します。診断も治療もますますオーダーメイド化していく時代になりつつあります。
このような研究を性差医学と言います。今後ますます詳細なことが分かってくることに期待します。
平成29年2月
冬の代名詞!?インフルエンザ
羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。寒い日が続いていますが体調いかがお過ごしでしょうか。冬場は空気が乾燥し飛沫感染(くしゃみや咳で感染)や接触感染が増える時期です。この数年で冬場に最も注目される感染症のひとつに「インフルエンザ」があります。特に1月下旬にから患者数が激増しているようです。今月は冬の定番ではありますがインフルエンザの症状と職場でできる対処法についてお話します。
1.インフルエンザの症状
インフルエンザのウイルスに感染すると2日前後の潜伏期間を経て症状が出現します。インフルエンザといえば高熱、関節痛が代表的な症状ですが、最近の傾向では予防接種を受けていると症状が軽くなり、インフルエンザにかかっていることに気がつかず過ごしている人もいるようです。
・突然の高熱:体温が38度以上の高熱
・関節痛、筋肉痛、頭痛:全身に炎症が生じて体の節
々に痛み
・全身の倦怠感:発熱、くしゃみ、鼻水、咳、全身の
疼痛などで体がだるい
・喉の痛み、くしゃみ、鼻水、咳:感冒(風邪)と同じような症状
2.職場でできる感染症の予防
・手洗い、うがい:朝の出社時や外出から戻ったときは手洗い、うがいをする
・咳エチケット:咳やくしゃみをする人はマスクをつける
咳やくしゃみにより周囲1〜2mにウイルスがとび、それによる感染を飛沫感染と言います
・体調チェック:朝の出社時に体調不良がないか確
認、無理をしない
・事務所の環境:温度・湿度・換気も大切なポイント
空気が乾燥している環境はインフルエンザのウイルスにとって居心地が良い状況です。室内の湿度は40%〜70%程度、室温は17℃〜28℃を目安に空調や加湿器の調整をしましょう。エアコンの温度を適温に設定しても、人の密度や換気、機械からの放熱で気温が上がっていることがあります。温度・湿度計で測定をしながら調整することをお勧めします。湿度が高すぎるとカビ菌が増殖するので、湿度は高すぎても低すぎても注意が必要です。
平成29年1月
輸入感染症について
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
いよいよ2020年の東京オリンピックまであと3年となり各種の競技会場建設も加速していくものと思います。前回の東京オリンピックでは代々木の選手村に設けられた診療所でアルバイトしたことを思い出します。三宅選手(重量挙げ)遠藤選手(体操)の時代です。湿布を出した記憶があります。報道によると2020年に向けて外国人観光客が増えていて年間2,500万人と推定されるそうで東京都も受け入れ準備を進めているそうです。オリンピック開催による経済効果が歓迎され大きな期待を集めているようです。外国人入国者は2010年頃から激増していますが、日本人出国者も1990年頃から急増して毎年1,600万人が出国しています。行き先も多様化しています。これだけ大勢の人が出入りしますと輸入感染症対策が問題となります。海外渡航者の健康問題を専門とする渡航医学(Travel medicine)という分野が2000年代から導入されて、出国前の健康診断、予防接種、出国先の情報提供、帰国後のケアも行っています。このような対策がとられてからマラリアの輸入例は激減しました。数年前にはあまり耳にしなかった病気が大きく報道されるようになり驚いています。ブラジルオリンピックで有名になったジカ熱も国内に輸入されています。代々木公園の例が発端となったデング熱も国内感染は減りましたが輸入例は毎年100例を超えています。日本からは大分遠いアフリカのエボラ出血熱も感染疑いのある方が帰国後に発熱で近所の開業医を受診していて、結果は風邪だったようですが周囲の人たちはヒヤヒヤしたようです。その他では少し前になりますがSARSやMERSもありました。輸入感染症は人間だけではありません。2016年(昨年)11月頃からトリインフルエンザの問題があります。トリインフルエンザの起源は中国の北方、ロシアとの国境付近の水鳥が高病原性ウイルスを保有していて周囲の野鳥や家禽に感染させるようです。トリからヒトへの感染は少ないといわれていますが、トリからブタのような家畜に感染するとヒトへの感染が成立するようです。この段階でウイルスが突然変異を起こして新型インフルエンザ(A型)になりヒト→ヒト感染で拡散していきます。水鳥はこの高病原性ウイルスをもっていても病気になりません。元気に海を渡ってきます。
平成22年→23年のシーズンが最悪で118万羽を処分しましたが今シーズンはこのペースを上回っています。養鶏場に警戒を呼びかけています。感染すると鶏舎から半径10qは移動が制限されます。名古屋の東山動物園のカモが感染し、秋田の大森動物園の黒鳥も感染して殺処分されました。園長さんは子供たちのアイドルを「断腸の思いで殺処分した」とコメントしています。渡り鳥の渡来する水辺は鳥にとっては危険地帯です。インフルエンザは感染力が極めて強く事業所内に発生すると次々に休むことになり業務に支障を来たし、対外的にも信用を失うこととなります。今年も健康経営に務めましょう。