かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生

岡部保健師
最新号(平成29年4月)
1月 輸入感染症について
2月 冬の代名詞!?インフルエンザ
3月 性差について
4月 世界の幸福度と健康

平成29年4月

世界の幸福度と健康

 羽田鉄工団地の皆様こんにちは。桜の咲く頃、いかがお過ごしでしょうか。私は先月ここ最近の夢だった台湾へ出掛けてきました。台北市内に宿泊し、市内の町並みや屋台の食事を楽しみながら、寺院や公園、夜市、九扮、金瓜石などを巡り、短い旅でしたがとても充実したものでした。以前より台湾は親日国のため、日本人の旅行者や移住者も多いと聞きます。確かに今回の旅行中もたくさんの日本人に遭遇しました(特に九扮にいた時は、半数以上が日本人なのではと思うほどでした)。なぜそこまで日本人に人気があり、魅力的な国なのかとずっと疑問に思っていました。今回の旅で感じた台湾の魅力は、日本の原風景や何となく懐かしい雰囲気でした。ただ、その一方で水道やガス、電気、道路や鉄道などのインフラは、日本に比べると開発の途中にあるようです。物の豊かさよりも風土や自然により心の豊かさを得られる旅でした。
 前置きが長くなりましたが、心の豊かさ、つまりは「幸福度」に関する統計が先日発表されました。国連が2012年に「世界幸福度報告(World Happiness Report)」を発表して以降、毎年報告がなされています。経済学や心理学、統計解析、国家統計などを用いて、1人当たりの国内総生産(GDP)、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由度などの視点から各国の幸福度(Well-being)を説明し、ランキング化しています。
 今年の世界幸福度報告1位はノルウェー、2位がデンマーク、3位アイスランド、次いでスイス、フィンランドと北欧の国が上位を占めていました。北欧諸国は社会保障や制度が充実しているため、幸福度も高いと考えられます。一方で日本はどうなっているかと言うと、世界で51位でした。2016年は53位なので大きな変動はありません。(ちなみに台湾は33位だったそうです。)
 上位の国と日本の間で一番の違いは何なのか。ランキングのグラフでは各説明指標の構成を読み取ることができます。グラフを見てみますと「Dystopia + residual」という「貧富の格差」を表す項目で上位の国と日本の間に差が出ているようです。
貧富の格差は、医療や健康においても非常に重要な視点です。現在の日本では一般的に医療費は3割を本人が負担し、残り7割は健康保険組合が負担しています。しかし、医療の高度化や自由診療、医療機関の偏りなどにより、経済的な負担、居住地域による医療格差、さらには健康情報を入手し活用する力(ヘルスリテラシー)の違いにより医療や自身の健康に対する在り方、捉え方には格差が生じているのかもしれません。
 この「かけはし」のなかでは、いろいろな健康情報について産業医の北條先生と私でわかりやすく紹介していきたいと考えていますので今年度もよろしくお願いします。
世界幸福度報告:http://worldhappiness.report/


平成29年3月

性差について

 桜の開花が報じられる頃となり一年で一番いい季節になりました。花粉症の方には最悪の季節でお気の毒です。
 今回は男性と女性を比べてみました。まず平均寿命ですが2015年のデータによれば男性は80.79歳、女性は87.05歳でともに過去の最高を更新しました。国際的な比較では2012年以来世界一を守ってきた女性の平均寿命が香港(87.32歳)に抜かれて2位になりました。3位はスペインの85.58歳でした。一方、男性は1位が香港で81.24歳、2位はアイスランドとスイスで81.0歳、日本は前年の3位から4位に転落しました。医療技術の進歩、衛生思想やインフラの普及によって平均寿命はまだのびる余地があると言われています。あまり長生きしても医療や介護の問題がますます大きく浮上しそうです。
 2014年と比べると2015年の平均寿命は男性で0.29歳女性では0.22歳延伸しています。男性が女性よりも短命なのは不健康な食事、喫煙、飲酒、特定健診やがん検診などの健康サービスの不受診、自覚症状があっても仕事優先のため早期受診の逡巡などが挙げられます。また、社会的条件として男性は危険な業務に就いている事情もあります。
 次に健康寿命を比べてみます。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。男性は71.19歳、女性は74.21歳で平均寿命から差し引くと不健康な期間(介護を必要とする期間)は男性が9.13年女性が12.68年となります。
 男女の差は病気の診断や治療についても見直されてきました。これまで医療は成人男子を標準として病態、診断方法、治療法が確立されてきた経緯があります。
 理由の一つとして1977年アメリカで睡眠薬によるサリドマイド事件や流産を予防する薬により生まれた女児が膣がんになる事例があり治験から女性を除外するようになったと言われています。
 薬の能書(説明書)に妊娠中の女性には安全性が確認されていませんと書かれていることが多いのはそのせいかもしれません。同一疾患に対する危険因子や治療法として用いる薬品にも男女差あることが分かってきました。男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)、生活習慣の相違などが考えられます。男性を基準に作成した診断方法や治療法をそのまま女性に適応した場合、最良でない可能性があります。男女差を研究して医療に反映する研究が進められています。解剖学的な理由で生殖器に関する臓器(子宮がん、乳がん、前立腺がん等)を除外しても、男女間でかかりやすい病気の傾向が異なります。痛風は圧倒的に男性に多く、鉄欠乏性貧血は女性に多いことはよく知られている事実です。
 他にも男女比が大きく傾いていて女性に多い自己免疫疾患、骨粗鬆症、うつ病や、発生率はほぼ同じでもその疾患の経過に差のあるもの(心筋梗塞など)も有ります。
 1990年からアメリカで性差による発症率の相違や性差による痛み感覚の相違、骨の構造、薬の代謝など多くの点で研究が進められ、確認された事実も多く存在します。診断も治療もますますオーダーメイド化していく時代になりつつあります。
 このような研究を性差医学と言います。今後ますます詳細なことが分かってくることに期待します。


平成29年2月

冬の代名詞!?インフルエンザ

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。寒い日が続いていますが体調いかがお過ごしでしょうか。冬場は空気が乾燥し飛沫感染(くしゃみや咳で感染)や接触感染が増える時期です。この数年で冬場に最も注目される感染症のひとつに「インフルエンザ」があります。特に1月下旬にから患者数が激増しているようです。今月は冬の定番ではありますがインフルエンザの症状と職場でできる対処法についてお話します。

1.インフルエンザの症状
インフルエンザのウイルスに感染すると2日前後の潜伏期間を経て症状が出現します。インフルエンザといえば高熱、関節痛が代表的な症状ですが、最近の傾向では予防接種を受けていると症状が軽くなり、インフルエンザにかかっていることに気がつかず過ごしている人もいるようです。
・突然の高熱:体温が38度以上の高熱
・関節痛、筋肉痛、頭痛:全身に炎症が生じて体の節
々に痛み
・全身の倦怠感:発熱、くしゃみ、鼻水、咳、全身の
疼痛などで体がだるい
・喉の痛み、くしゃみ、鼻水、咳:感冒(風邪)と同じような症状

2.職場でできる感染症の予防
・手洗い、うがい:朝の出社時や外出から戻ったときは手洗い、うがいをする
・咳エチケット:咳やくしゃみをする人はマスクをつける
咳やくしゃみにより周囲1〜2mにウイルスがとび、それによる感染を飛沫感染と言います
・体調チェック:朝の出社時に体調不良がないか確
認、無理をしない
・事務所の環境:温度・湿度・換気も大切なポイント
 空気が乾燥している環境はインフルエンザのウイルスにとって居心地が良い状況です。室内の湿度は40%〜70%程度、室温は17℃〜28℃を目安に空調や加湿器の調整をしましょう。エアコンの温度を適温に設定しても、人の密度や換気、機械からの放熱で気温が上がっていることがあります。温度・湿度計で測定をしながら調整することをお勧めします。湿度が高すぎるとカビ菌が増殖するので、湿度は高すぎても低すぎても注意が必要です。


平成29年1月

輸入感染症について


 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 いよいよ2020年の東京オリンピックまであと3年となり各種の競技会場建設も加速していくものと思います。前回の東京オリンピックでは代々木の選手村に設けられた診療所でアルバイトしたことを思い出します。三宅選手(重量挙げ)遠藤選手(体操)の時代です。湿布を出した記憶があります。報道によると2020年に向けて外国人観光客が増えていて年間2,500万人と推定されるそうで東京都も受け入れ準備を進めているそうです。オリンピック開催による経済効果が歓迎され大きな期待を集めているようです。外国人入国者は2010年頃から激増していますが、日本人出国者も1990年頃から急増して毎年1,600万人が出国しています。行き先も多様化しています。これだけ大勢の人が出入りしますと輸入感染症対策が問題となります。海外渡航者の健康問題を専門とする渡航医学(Travel medicine)という分野が2000年代から導入されて、出国前の健康診断、予防接種、出国先の情報提供、帰国後のケアも行っています。このような対策がとられてからマラリアの輸入例は激減しました。数年前にはあまり耳にしなかった病気が大きく報道されるようになり驚いています。ブラジルオリンピックで有名になったジカ熱も国内に輸入されています。代々木公園の例が発端となったデング熱も国内感染は減りましたが輸入例は毎年100例を超えています。日本からは大分遠いアフリカのエボラ出血熱も感染疑いのある方が帰国後に発熱で近所の開業医を受診していて、結果は風邪だったようですが周囲の人たちはヒヤヒヤしたようです。その他では少し前になりますがSARSやMERSもありました。輸入感染症は人間だけではありません。2016年(昨年)11月頃からトリインフルエンザの問題があります。トリインフルエンザの起源は中国の北方、ロシアとの国境付近の水鳥が高病原性ウイルスを保有していて周囲の野鳥や家禽に感染させるようです。トリからヒトへの感染は少ないといわれていますが、トリからブタのような家畜に感染するとヒトへの感染が成立するようです。この段階でウイルスが突然変異を起こして新型インフルエンザ(A型)になりヒト→ヒト感染で拡散していきます。水鳥はこの高病原性ウイルスをもっていても病気になりません。元気に海を渡ってきます。
 平成22年→23年のシーズンが最悪で118万羽を処分しましたが今シーズンはこのペースを上回っています。養鶏場に警戒を呼びかけています。感染すると鶏舎から半径10qは移動が制限されます。名古屋の東山動物園のカモが感染し、秋田の大森動物園の黒鳥も感染して殺処分されました。園長さんは子供たちのアイドルを「断腸の思いで殺処分した」とコメントしています。渡り鳥の渡来する水辺は鳥にとっては危険地帯です。インフルエンザは感染力が極めて強く事業所内に発生すると次々に休むことになり業務に支障を来たし、対外的にも信用を失うこととなります。今年も健康経営に務めましょう。




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