かけはし誌上コラム(かけはし掲載分) 羽田鉄工団地協同組合





労働衛生コンサルタント北條先生
&
岡部保健師
平成30年
1月 国民健康・栄養調査から
2月 2月は全国生活習慣病予防月間です
3月 今年の冬を振り返って
4月 第13次労働災害防止計画について
5月 はしかの流行について
6月 熱中症予防に作業前の水分補給を!
7月 光老化について
8月 過労死防止に関する新たな取り組み、5つのポイント
9月 人生百年時代に備えて
 10月 災害時の健康管理について  
 11月 「新しいタバコ」について
  12月 デスクに座りながら運動できる



平成30年12月

 羽田鉄工団地の皆様、こんにちは。今年も残すところあと僅かですね。年末年始は何かと食べたり飲んだりする機会がありますが、皆さんはその分のカロリーを消費していますか? 昼間は仕事、夜や週末は疲れて運動もできず・・・という方も多いのではないでしょうか。また体を動かさずに、長時間の座位行動(座りっぱなし)は肥満や糖尿病や心臓病の発症リスクを高めると言われています。暮らしが便利になるにつれて、座位時間が長くなったり、体を動かす機会が減っていたりすることが明らかになっています。

【企業で取り組まれる「座位時間」対策】
Baumanらの調査によると、世界20か国のなかで日本人は最も座っている時間が長いことが示されています。世界20か国の平均座位時間は約5時間(300分)に対して、日本人は約7時間(420分)です。オーストラリアで行われた調査では、1日に座っている時間が4時間未満の人に比べ、8?11時間の人の死亡リスクは15%増加、11時間以上だと40%増加することが報告されています。理想としては30分に1回立ち上がることですが、難しい場合は1〜2時間に1回は休憩やトイレに行く、コピーを取りに行くなどして、歩いたり立ち上がったりすることを意識的に取り組まれることをお勧めします。
日中の座り過ぎを予防するために、最近の企業では様々な取り組みがされています。
例1) スタンディングミーティング
立ちながら打合せをすることにより、座位時間を削減し会議の時間短縮化、効率化にも繋がっているようです
例2) 職場レイアウトを見直す
複合機や共有スペースへのアクセスを工夫し、立ち上がる機会を増やす。レイアウトの見直しにより、デッドスペースの活用、複合機の削減などコスト面へのメリットもあるようです。

【デスクに座りながら運動?】
2018年11月にアメリカのアマースト大学は、デスクに座りながら自転車のペダルをこぐことができる一風変わったデスクを開発したと発表しました。開発者であるチップキン氏はこのデスクを「ペダルデスク」と名付け、運動をしたいときはもちろん、気分転換をはかるときにも良いと話しています。また、自転車こぎをしていないときには、通常のデスクとして使用もできます。仕事と運動を同時に行うことができるので、運動不足の解消に役立つアイディアです。特に食事を食べてから、血糖値が上昇しているときに運動や体を動かすことは、血糖値の代謝を担うインスリン感受性と骨格筋代謝に及ぼす影響にし、血糖値の上昇を抑制すると言われています。体調に問題がなければ、食事のあとには軽く体を動かく事がおすすめです。しかし仕事中は昼食後に必ず運動をする時間が取れるかと言うと、なかなか時間の確保が難しい方もいらっしゃると思います。時間に余裕がない、仕事終わりにスポーツジムへ行って運動するのは続かないなど運動不足でのお悩みを解消するための、新たな戦略になるかもしれません。


平成30年11月

 鉄工団地の皆さんこんにちは。2020年に開催されるオリンピックを迎えるにあたって喫煙とそれにともなう受動喫煙が喫緊の問題になっています。
 喫煙による様々な健康障害は広く認められていて、肺がんやCOPDだけではなく全てのがん、心臓病、脳血管障害、糖尿病、認知症などの原因になります。数年前から健康保険を使って行う禁煙治療が推奨されています。費用は3ヶ月間で13,000円から19,000円くらいです。喫煙者にとっては大逆風の中にあって救世主のように現れたのが非燃焼・加熱式タバコや電子タバコです。禁煙がなかなか困難な方のなかに害が少ないと言われる電子タバコや非燃焼・加熱タバコに切り替える方がいますが、有害は紙巻きタバコと変わらないという研究結果も出てきています。
 禁煙をしようとした人が、禁煙へのワンステップとして電子タバコや非燃焼・加熱タバコを使用すると禁煙成功率は3分の1程度に下がります。
 電子タバコや加熱式タバコは目に見えて煙を吐き出さないため「健康リスクが少ない」「受動喫煙の危険がない」と誤解されて、中・高校生の間にも拡がっています。厚労省研究班の調査で男子高校の3%、女子の1.5%が電子タバコを経験していると報告されています。
 一方、紙巻きタバコの経験者は大幅に減少しています。加熱式タバコは紙巻きタバコよりもタバコ税が低く抑えられていましたが10月1日から値上げされて2022年までに同じ税率にするそうです。
 電子タバコはタバコの乾燥葉や液体をマイクロプロセッサーで制御された電熱線で加熱し、エアゾル化(霧状化)して利用者に吸引させるもので、アイコス、グロー、プルームテックなどが代表的なものです。電子タバコの主流煙中には紙巻きタバコと同レベルのニコチンや揮発性化学物質(ホルムアルデヒド、マクロレイン)多芳香環炭化水素物(アセナフテン)などが含まれます。周囲の人への受動喫煙の危険も指摘されています。受動喫煙の影響で亡くなる人は肺がん、心臓病、脳卒中だけで年間15,000人もいて乳児突然死症候群の危険も高まります。
 健康増進法の一部を改正する法律が2020年4月1日から施行される予定です。改正の趣旨は「望まない受動喫煙」をなくす、受動喫煙の影響の大きい子供、患者に特に配慮する、施設の類型・場所ごとに対策を実施することです。加熱式タバコについても記載があります。非燃焼・加熱式タバコ、電子タバコは煙が出ないから無害で安心というわけでもないようです。できるだけ禁煙をしてください。



平成30年10月

災害時の健康管理について 

羽田鉄工団地の皆様、こんにちは。
今年は大型台風や豪雨災害、北海道では地震があり自然災害に心悩ます日々が続いていますね。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
災害のときに一番困ることは何でしょうか。電気、ガス、水道などのライフラインへの影響、公共交通機関や道路閉鎖など、日常の生活が困難になることが多くあります。2011年の東日本大震災が発生した直後に厚生労働省より「被災地での健康を守るために」と被災後の健康管理や感染症等の疾病予防について留意事項が周知されています。

【被災地での健康を守るために】
厚生労働省2011年3月18日発信

1. 生活・身の回りのことについて
(1)寒さへの対策
(2)水分について:水分の確保、飲料水の衛生
(3)食事について:栄養をとる、食品の衛生
(4)トイレの衛生
(5)生活環境:室内の環境、屋外の環境、その他(プライバシーの確保)

2. 病気の予防
(1)感染症の流行を防ぐ:感染性胃腸炎や風邪、インフルエンザなどの呼吸器系感染症の流行予防
(2)一酸化炭素中毒の予防
(3)粉じんから身を守る:家屋の倒壊時、解体作業等に発生する粉じん
(4)エコノミークラス症候群にならない
(5)心身の機能の低下予防:筋力低下や関節拘縮を予防するため活動量減少に注意する
(6)歯と口の清潔(口腔ケア)・入れ歯の手入れ

3. こころのケア
突然の自然災害により大変大きなストレスがかかると言われています。不安や心配などの心の反応が表れ、休息が確保できない、不眠になることもあるため、十分な休息や睡眠をとることが大切です。

4. 慢性疾患を治療中の方々
人工透析が必要な慢性腎不全、インスリン等で治療している糖尿病の方は、治療の継続が必須のため、必ず治療を継続しましょう。

5. 妊婦さん、産後まもない親と乳幼児の健康確保

【災害時の栄養摂取について】
先述の周知文にも記載がありますが、災害時にも必要な栄養を摂取することは健康管理の上で重要なポイントです。食事バランスガイドの災害時版には、思うように食料を確保できない、水道やガスが使えない状況下でも日常的な食事内容や栄養バランスのよい食事の摂り方を示しています。備蓄品の参考にしてください。

【災害時の食事バランスガイド】
主食:米を中心に、アルファ米(水でも炊ける)やカ
 ップ麺など種類と量を多めに用意
主菜:タンパク源となる肉や魚は缶詰を活用。
ふだんから使い慣れておくこと
副菜:レトルト、スープなど好みの物を
果物:震災時は塩分が多い食事が続くので、カリウム
 が多いドライフルーツが活躍
調味料:油も忘れずに
嗜好品:ストレスがあるとき、甘い物は心を「ほっ」
とさせる
水:1人1日3リットル必要
熱源:カセットコンロ 
ガスボンベは3日で6本あると安心


平成30年9月

人生百年時代に備えて
 

記録的な猛暑もやっと終わりました。熱中症に罹った方も多かったようですが皆様は大丈夫でしたか?
最近、人生百年時代が到来したとテレビや出版物で目につくようになりました。少し前までは「人生五十年」と言われた時代もありましたが人生が2倍に延伸されました。60歳や65歳で定年を迎えてから約40年あります。
テレビコマーシャルでは「定年後時間はタップリあるぞ」「どうする」と言ってから資産運用の宣伝になります。
ある職業集団のサイトで「老後を安心して暮らすためにはいくら必要と思いますか」というアンケートが行われ、結果がでていました。35.9%の方が1~3億円未満で26%の方が5,000万円〜1億円と回答していました。
この結果から見ると約半数の方が1億円程度を希望しているようです。平均寿命は今後も延びる予測がなされています。
 国民生活基本調査が昭和61年から3年毎に行われ、保健、医療、福祉、年金、所得等の基礎的なことを調べていますが、その調査によれば(今年3月発表資料から)2016年の「健康寿命」は男性が72.14年、女性が74.49年で平均寿命との差は男性9.02年から8.84年に、女性が12.40年から12.35年に短縮しています。 
 2010年、2013年、2016年と「健康寿命」のデータ
を比べると男性は70.42年→71.19年→72.14年に伸びています。
女性も73.62年→74.21年→74.49年と伸びています。
「平均寿命」との差(不健康な期間)は男性が9.13年→9.02年→8.84年と着実に短縮しています。女性も12.68年→12.40年→12.35年と短縮してます。
ここで示された年数が生活費の他に医療や介護が必要な期間となりますが5,000万円~1億円の貯えが欲しいと答えた方々の心情でしょうか。
「健康寿命」の延伸に寄与する生活習慣が上げられています。
これは宮城県大崎市在住の65歳以上の住民を対象に9年間にわたる調査(東北大学公衆衛生学辻一郎教授の資料による)の結果からのものです。
1) 喫煙しない(又は禁煙5年以上)
2) 身体活動 (1日平均歩行時間30分以上)
3) 睡眠時間 (平均睡眠時間6~8時間)
4) 野菜の摂取
5) 果物の摂取
実行困難な内容ではないと思いますので皆さんもぜひ努力してみてください.



平成30年8月

過労死防止に関する新たな取り組み、5つのポイント

羽田鉄工団地の皆様、こんにちは。
今年は例年にない猛暑、酷暑で、大変な日々ですがいかがお過ごしでしょうか。熱中症には十二分に注意し、作業中は適度な水分補給と休養をとるよう心掛けてください。
今月は「過労死防止に関する新たな取り組み」についてご紹介します。
先月7月24日に厚生労働省労働基準局より「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が閣議決定されたとの発表がありました。勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標を政府として初めて設定したことが今回の注目点です。
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、「過労死等防止対策推進法」(平成26年)に基づき平成27年7月に策定され、以降は約3年を目途に見直すこととなっていました。今年がちょうど3年目の見直しの時期にあたり、厚生労働省では過労死等防止対策推進室を中心に昨年10月から「過労死等防止対策推進協議会」を開催し、大綱案を検討していました。(この時期に厚労省の方が過重労働だったのではないか心配です。)

<新大綱 5つのポイント>
1.過労死等防止対策の数値目標の設定

変更前の大綱に定められた「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」、勤務間インターバル制度の周知や導入に関することなどの数値目標を掲げたこと。
(例:インターバル制度に関する数値目標)
・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。
・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

2.国が取り組む重点対策について
関係法令等に基づき重点的に取り組む対策として下記3点を明記された。
(1)長時間労働の削減に向けた取組の徹底
(2)過重労働による健康障害の防止対策
(3)メンタルヘルス対策・ハラスメント対策

3.過労死等や長時間労働者が多い職種・職業
調査研究により過労死等が多く発生している又は長時間労働者が多いとの指摘がある職種・業種として、建設業、メディア業界を追加した。(従来から、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療が対象になっている)

4.新たな取り組みについて
勤務間インターバル制度を推進するための取組や、若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取組について新たに記載したこと。

5.職場におけるハラスメント
職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)を包括的に「職場におけるハラスメント」として位置付け、その予防・解決のための取組を記載したこと。

以上の5点が今回の見直しのポイントです。厚生労働省は「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」にすることを目標に掲げています。充実した制度があることに加えて、働きやすい職場環境に整えていくことも大切ですね。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は厚生労働省からプレスリリースされ、Web上でどなたでも閲覧可能です。ご興味のある方はご一読ください。


平成30年7月

光老化について

 羽田鉄工団地の皆さんお元気ですか。 
 大阪北部に震度6弱の激しい地震があり大きな被害がニュースで流れています。登校中の女児がブロック塀の下敷きになり亡くなった悲惨なニュースが大きく報道されています。北大阪地震を契機に各自のB.C.P(Business Continuity Plan)事業継続計画を再確認することも重要だと思います。B.C.P とは災害によって貴重な人材をなくしたり、設備の大きな損壊を受けたことへの対策、事業の継続を目標とした緊急時の計画を指します。帰宅困難者への対応、非常時の食料、飲料水の確保、出勤困難者を想定した勤務体制等のチェックは大事なことです。
 医学関係の出版物に「光老化」という記事が出ていましたので書かせていただきます。「光老化」とは長年にわたり日光にさらされ続けた皮膚が慢性的な紫外線障害によって色素沈着やシワを生じる、太陽光線による加齢現象と定義されています。日焼けやお肌のアンチエージング対策は専ら女性専用のお話のようですが、健康な肌は男性でも必要です。太陽光線は紫外線、可視光線、赤外線の3種類に分類されますが「光老化」に関与するのは紫外線です。
 皮膚の老化は加齢による変化よりも光老化の方が大きいことが最近になって分かってきました。光老化の現れるのは35歳前後から目立ってきます。シミ、深く大きなシワ、皮膚の「くすみ」などが挙げられます。皮膚の保湿機能も低下させますのでザラ付きも出ます。
 皮膚がんを生じることもあるそうです。紫外線にさらされる部分に症状が現れますので手の甲の肌とおしりの肌と比べるとおしりの肌はスベスベしているのに手の甲の肌はシワやタルミが目立つことでも紫外線の影響はわかります。ヒトの皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織に分かれて構成されています。最も波長の長い赤外線は一番深い部分である皮下組織まで届きます。ビタミンDを生成し骨を強くする健康上の大事な働きをする太陽光線ですが、長期間太陽光にさらされることにより皮膚にシミ、シワ、タルミを生み出す原因になります。肌の老化の8割は太陽光が原因といわれるようになりました。無意識に浴びている太陽光も長い蓄積により肌に大きなダメージを与えるようです。
 紫外線の照射量は1年のうち4〜5月ころから上昇し、これからの真夏の7〜8月にピークとなります。
 1日のうちでは正午前から照射量は上昇して午後2時頃にピークを迎えます。熱射病の多発する時間帯とほぼ同じです。紫外線は普通のガラスは通過しますので室内でも紫外線を浴びます。
紫外線対策としては
@紫外線の強い時間帯の外出を避ける。
A日陰を利用する。袖や襟のついた衣服で覆う。
B日傘、帽子を使う。皮膚の薄い眼の周りの保護にはサングラスを使う。
C日焼け止めを上手に使う。
美容の目的とは少し違いますが健康な肌でいつまでも働きたいものです。
 最後にヒアリが今年も2,000匹見つかったと新聞にでていました。虫にも気をつけてください。


平成30年6月

熱中症予防に作業前の水分補給を!

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。気象庁が5月末に発表した1か月予報では、関東・甲信から九州・沖縄まで6月は気温がかなり高くなると予想されるそうです。例年のお知らせですが、気温の上昇に伴い熱中症のリスクが高まります。熱中症は重症化すると生命の危機がありますし、軽度の症状(めまい、ふらつき等)でも高所からの転落、危険作業の二次災害につながる可能性もあります。職場における熱中症対策について確認いただき、熱中症対策や重症化予防に参考にされてください。

1.熱中症とは
 身体の異常な発汗があり、体温調整のしくみが空回りしたり、身体の水分(主に血液)が不足したりして、脱水状態や高体温(体が熱くなりすぎて汗も出ないことがあります)になっている状況です。

2.熱中症が起こりやすい条件
環境、人、場所のそれぞれの要因が重複すると、熱中症のリスクが更に高まります。
@環境:気温・湿度が高い、日差しが強い、閉めきった屋内、急に暑くなった日
A人:二日酔い・寝不足などの体調不良、糖尿病や肥満の人、高齢者、乳幼児
B場所:長時間の屋外作業、水分補給ができない状況(休憩する暇がないなど)

3.作業時の熱中症対策
@作業前:体調に問題がないことを確認し、作業前から水分をとりましょう。汗をかいてから水分補給をすると、体内の血液量がマイナスになった状態で水分を補給することになるので、前もって水分補給をして、発汗に備えましょう。
最近は冷感作用やファン付き作業着もあるようなので、作業着を工夫することも有効な対策です。
A作業中:屋外や暑熱作業時は、1時間に1回涼しい場所で休憩をとり、汗をかいた分(のどの渇きを感じない程度)の水分補給をしましょう。作業中に「体調がよくない」と思った時は、水分補給と休憩をとり早めに対処してください。
 水分は水、麦茶、スポーツドリンクなどをお勧めします。緑茶やコーヒーなどは利尿作用が強く、水分補給をしてもすぐに排出されます。持病(高血圧、糖尿病、腎臓病など)がある人は、水分や糖分、ナトリウムの摂取が治療に影響する可能性もあるので、前もって主治医の先生に相談をしておくと良いです。

4.熱中症の症状
大量の発汗、体温上昇、頭痛、吐き気、めまい、動悸、こむらがえり、脱力、倦怠感などがあります。顔色が悪い、動きが鈍い、言動がおかしいなど周囲の人が察知できる症状もあるので、お互いに注意し合うことが大切です。

5.熱中症発生時の対応
気を付けていても熱中症になることはあります。熱中症が疑われる場合はすぐに対処しましょう。特に水分が飲めるか飲めないかが重要なポイントです。
@25℃程度の涼しい場所で、衣服を緩め靴や靴下を脱がせ、仰向けか横向きに寝かせる。
A保冷剤で首、腋の下、足のつけ根を冷やす(図参照)
B水分(塩分や糖分も含まれているスポーツドリンクや経口補水液)を摂取する。
 この時、水分摂取ができない場合や脈・呼吸が速い、ふらついている、言動がおかしい意識がないなど、異変がある時は速やかに受診しましょう。(状況によってはためらわずに救急搬送を)
医療機関受診時のポイント
病院を受診するときに、下記を医師に伝えていただくと処置がよりスムーズになります。
搬送に付き添う人は、以上の項目をわかる範囲でメモしておきましょう。
・持病の有無、治療状況は?
・作業開始前の体調は?(風邪気味、二日酔い、下痢、嘔吐、睡眠不足、朝食欠食など)
・作業の内容、作業環境(場所、気温、湿度、風通しなど)
・倒れた時の様子はどうだったか?
・水分や塩分の補給状況は?
・冷却法の程度は?(何を・どこに・どれくらい)
・応急処置をした後に症状は改善?悪化?


平成30年5月

はしかの流行について

 5月の大型連休はどこかへお出かけになりましたか。
 大型連休直前に外国からの観光客によるはしかの感染が拡散中で大騒ぎとなりました。東京都や大田区から連日のようにはしかに対する注意報が出されました。
報道によりますと台湾在住の30代男性が3月17日から19日まで沖縄に滞在して沖縄本島内を移動しています。
 那覇市でモノレールを利用、その後レンタカーで糸満市、名護市に向かっています。17日から発熱はあったようですが、19日になって発疹が出て中部保健所ではしかと診断されました。衛生環境研究所が遺伝子解析をして、遺伝子型D-8と診断し台湾からのウイルスと断定されました。はしかは非常に感染力が強く、感染すると肺炎、中耳炎、脳炎等の重篤な合併症を起こします。はしかの患者と接触した場合は、接触後3〜21日の期間健康状態に十分に注意して警戒が必要です。発疹が現れた場合は「はしかかもしれない」と連絡を入れてから医療機関を受診してください。はしかウイルスは約2時間空中で生存しますので、はしか患者に直接遭遇しなくても、はしか患者が居た空間に入ると感染します。空気感染が起きるのです。
 はしかはウイルスによって感染しますが、10日から12日の潜伏期間を経て発熱、咳、鼻水といった風邪様の症状が出て2〜3日後に発疹が出てきます。はしかの予防としては予防接種が行われています。定期予防接種(第1期1歳、第2期小学校入学前)は2回受けることになっています。必ず2回受けさせてください。
 今回の沖縄のはしかは現在70名を超えています。過去にも2016年11月関西空港で中国からの観光客から航空会社の職員などに集団発生した記録があります。
今回も埼玉県の男性、名古屋の男性と少女2名、客室乗務員(女性)に感染したという報告が続いています。仕事や旅行で沖縄に行く方は注意が必要です。
 感染症でもう一つ注目されている感染症があり喫緊の対策が必要とされています。性感染症の増加で、特に梅毒は2004年から増加し始めて2016年には4,575例2017年には5,770例の届け出があり1974年以来42年ぶりで4,000例を超えました。報告数の増加と共に新しい傾向が見られます。男女比で女性の増加が目立ち、年齢分布も男性が20〜40代と幅広く分布しているのに対して女性は年齢分布が狭く20代前半からの報告が増えています。性産業(風俗)従事者に限らず一般家庭の主婦などにも広がっています。都道府県別では東京都が1位、次いで大阪府、神奈川県、愛知県と続きます。
 「君子危うきに近寄らず」と昔の人は言いました。ご用心ください。


平成30年4月

第13次労働災害防止計画について

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。4月になり新しい年度を迎え、お忙しくされている方も多いと思います。2018年度も北條先生とかけはしの健康相談コーナーを担当します。よろしくお願いします。
 2月に厚生労働省より第13次労働災害防止計画が発表されました。労働災害防止計画は昭和33年に戦後の高度経済成長における労働災害や職業性疾病の急増をふまえて策定され、その後は5年毎に社会的な背景をもとに計画内容が検討されています。
 今回は2018年度から2022年度までの5年を計画期間として第13次労働災害防止計画が策定されました。(官公庁からの発信文書では通常は西暦を使いませんが、平成35年は存在しないことが決定しているので西暦で表記されています。)今月号では、第13次計画の内容やトピックスをご紹介します。

主な目標
・2020年までに労働災害による死亡者数を15%以上減少させる(2017年比)
・労働災害による死傷者数、重点業種、メンタルヘルス対策、化学物質による健康障害防止対策、腰痛予防対策、熱中症予防対策について数値目標を設定

重点事項とポイント
1.死亡災害の撲滅を目指した対策推進
建設業における墜落・転落による災害防止、製造業における施設・設備・機械などの作業環境に関連する災害の防止などがあげられています。

2.過労死等の防止等の労働者の健康確保対策
最近の産業保健のなかでは最も大きな話題のひとつでもある過重労働による過労死対策やメンタルヘルス不調の予防・早期発見としてストレスチェックの推進があります。

3.就業構造の変化及び働き方の多様化に対応した対策の推進
多様性「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にしますが、働き方についても多様性が求められています。 
特に高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者、障がい者雇用などが拡大していくことに伴って、「多様化」を意識した労働災害の防止も大切です。

4.疾病を抱える労働者の健康確保対策の推進
2016年に発表された「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」にもあるように、がんなどの疾病を抱える方も治療と職業生活が両立できるような体制づくり、環境整備の重要性が高まっています。過去には病気を理由に働くことを中断せざるを得ない人、会社にとっては貴重な人材の損失を経験されたこともあるかもしれません。医療の進歩や治療方法の拡大などにより、就労と治療を両立できることが多くなっています。職場の環境整備やお互いの理解などハード面、ソフト面の双方からの対応をしていきましょう。

5.化学物質等による健康障害防止対策の推進
化学物質のほかに石綿、電離放射線などによる健康障害の防止対策の推進。産業の現場で使用される化学物質は年々増加し、化学物質の使用による急性の障害もしくは遅発性(慢性の障害)の発生事案もあります。日常の作業で化学物質を取り扱う業務がある事業場では、対象物質のリスクアセスメントを行い、安全に使用するようにご注意ください。

6.企業・業界単位での安全衛生の取組の強化
多くの企業経営では、中長期計画や年間計画などにPDCAサイクル等を活用していると思います。安全や衛生(健康)についてもマネジメントの枠組みでの取り組みにより安全・衛生の体系的な取り組みの強化が求められています。

7.安全衛生管理組織の強化及び人材育成の推進
上記の重点事項には、安全・健康において様々な活動が示されています。この内容は社内の人材で対応可能な部分と社内だけでは対応が困難なこともあるかと思います。社外の専門人材(労働安全・労働衛生コンサルタント等)を活用することも有効な対応策です。

8.国民全体の安全・健康意識の高揚等
最後の項目には、高校や大学などの世代への安全衛生教育の実施、科学的根拠や国際動向を踏まえた対応施策の推進が盛り込まれています。

 第13次労働災害防止計画は上記の目標から8つの重点事項が示されています。詳細は省いていますが、皆様の事業場におかれても労働災害や職業性疾病を予防し、一人ひとりが安全・安心に働くことができる職場づくりの参考にしていただけますと幸いです。


平成30年3月

今年の冬を振り返って

 今年の冬は例年になく寒い冬でした。この原稿を書いている2月13日現在も日本海側の各県には大雪の警報が出ています。先週は日本海側の国道がマヒ状態で、数日車に閉じ込められて疲労困憊の様子で困っている状況がニュースで流れました。また、同時期に台湾の大地震のニュースが流れて傾いたビルの映像と現地の惨状が報道されました。台湾の地震の3日後に政府の地震調査委員会が静岡県から九州にかけての太平洋側一帯に伸びる南海トラフでM8〜9の大地震が30年以内に8〜9割の確率で起きると発表しました。台湾の地震がM7.6でしたから大変な地震です。(ちなみに東日本大震災はM9.0、阪神淡路大震災はM7.3です)今冬はインフルエンザも統計を取り始めた1997年以来の最多となる大流行でした。報告の多かった都道府県は鹿児島県、宮崎県、福岡県、大分県、佐賀県など九州が多い傾向がありました。B型インフルエンザが多かったのも今年の特徴でした。
 B型は症状も重く、数年おきに大流行して猛威を振るいます。
 今年はワクチンの不足にも悩まされました。インフルエンザは毎年、流行するウイルスの型が少しずつ変化しやすいため毎年ウイルスの型を微妙に変える必要があります。他の定期接種のワクチンと異なる点であり、インフルエンザワクチンは毎年接種する理由です。
インフルエンザワクチンは毎年、国の指示によって国立感染症研究所がその年の型を選定して指定します。ワクチンのメーカーはその指示に従ってその年のワクチンを製造します。
 ところが今年の型に決められたAH3型のウイルスは培養して増やすことが大変に困難で生産効率の悪いウイルスでした。その結果、型の変更が出てしまい、製造に遅れが出てワクチンの不足に陥ってしまいました。皆さんが接種を受けているワクチンはA型が2種類、B型が2種類入っている四価ワクチンです。
 世界的に見ますとアメリカでも今までに例を見ない過去最高の患者数を記録する大流行です。地区によっては診断キットの不足も伝えられています。今シーズン、インフルエンザによる小児の死亡は53名となり一層警戒を強めています。フランスも大流行と伝えられています。海外出張の方は事前に調査してお出かけください。地震も噴火も怖いことですが元気に頑張ってください。


平成30年2月

2月は全国生活習慣病予防月間です

 羽田鉄工団地の皆さんこんにちは。本年、最初の掲載になり、今年もよろしくお願いします。1月は降雪や記録的寒波でとても寒い日が続きましたがいかがおすごしでしょうか。毎年2月は全国生活習慣病予防月間です。どこかで生活習慣や生活習慣病に関するコマーシャルやポスターなどを見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
全国生活習慣病予防月間は基本テーマの「“一無、二少、三多”で生活習慣病予防」と、その年ごとのテーマが設定されています。2018年のテーマは「少食」だそうです。

生活習慣病とは?
 ご存知の方も多いと思いますが、基本をおさえておきましょう。生活習慣病とは文字通り生活習慣に起因してもしくは関連して発症する病気です。代表的なものに高血圧症、脂質異常症(以前は高脂血症といいました)、糖尿病があります。血圧や悪玉コレステロール、中性脂肪、血糖値が高い状況では、特に痛くも痒くもなく、ほとんど自覚症状がありません。ただこの状況を放置していると、血管が硬くなったり詰まりやすくなったりする動脈硬化、さらに心筋梗塞や脳卒中など命に関わる状態になる可能性があります。(糖尿病については1月号に掲載があります。あわせてお読みく
ださい。)

一無、二少、三多で生活習慣病予防
 生活習慣病は体重や食事、タバコ、お酒などの普段の生活習慣が発症に関わっているということが明らかになっています。そのため重症になる前に体に良い生活として「一無、二少、三多」が大切です。

「一無」:無煙・禁煙の勧め
 タバコにはタールやニコチン、一酸化炭素などの有害物質が含まれています。喫煙している本人はもちろんですが、受動喫煙があると周囲の方にも有害物質が体に運び込まれているかもしれません。

「二少」:少食・少酒の勧め
 食事の量は多すぎず、少なすぎず腹八分目にしておきましょう。食事の量が多くなると自然と塩分や脂質、糖分のとり過ぎになります。
またお酒は百薬の長ともいいますが、飲みすぎは禁物です。目安としては1日1合、休肝日をつくるようにしましょう。(もちろん、飲めない人は無理に飲む必要はありません)

「三多」:多動・多休・多接
 体を多く動かす(多動)、しっかり休養をとる(多休)、多くの人・事・物に接する生活(多接)で三多です。特にしっかり休養をとるために1日6〜8時間の睡眠をとることや仕事中の休憩、長期休暇でのリフレッシュなどの多休や、趣味を楽しんだり、多くの人と交流したりする多接は体の健康以外に心の健康にもお勧めです。

 「一無、二少、三多」を全て実践する事は大変かもしれませんが、自分自身のできる範囲や興味のあるものを今日からやってみませんか?きっとこれからの健康に役立つことと思います。


平成30年1月

国民健康・栄養調査から

 新年明けましておめでとうございます。今年も健康で元気いっぱい頑張りましょう。
 厚労省は平成28年の国民健康・栄養調査の結果を昨年9月に発表しました。この中で糖尿病について報告が出ています。それによると糖尿病に罹っている方は1,000万人いると推計されています。推計値は5年毎に出ていますが平成9年は670万人、平成14年が740万人、平成19年890万人、平成24年950万人と増加し続けています。そして平成28年は遂に1,000万人の大台に乗りました。同時に糖尿病予備軍の人数も1,00
0万人となっています。糖尿病予備軍は平成19年、1,3
20万人、平成24年1,100万人、そして平成28年が1,000人に減りました。予備軍の減少は特定健診の受診が進み生活習慣病といわれる高血圧、脂質異常、肥満などに対する健康教育が浸透した結果だと言われています。それに対して有病者の増加は加齢と特定健診による有病者の掘り起こし効果だと分析されています。
 糖尿病はインスリンの作用不足によって血中の糖分が高い状態、即ち高血糖状態によって起こる病気です。高血糖が続くと血管の劣化が進み大きい血管では狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを発症しやすくなります。細小血管の損傷では糖尿病性網膜症や眼底出血で失明する場合もあります。糖尿病性腎症では腎糸球体血管が傷ついて腎透析になる場合も少なくありません。また、糖尿病の方は感染症に罹りやすく肺結核や尿路感染、皮膚感染症、水虫などが多く見られます。下肢では感染が原因で壊疽になり下肢切断になるケースもあります。認知症になる方も多いと言われ、糖尿病は合併症の多い本当にイヤな病気です。
 糖尿病にはT型糖尿病とU型糖尿病、その他薬剤によるものや感染症によるもの等があります。T型糖尿病は主として自己免疫により膵β細胞の破壊により発症し小児や思春期に多く見られます。まれに遅発性で中高年に見られることもあります。糖尿病の95%以上はU型糖尿病ですが、U型ではしばしば家系内に糖尿病の方が見受けられて遺伝的色彩があります。40歳以降に多く発症し肥満や大量飲酒など生活習慣の改善が必要な場合が多い病気です。診断は血液検査で血糖、HbA1C、グルコアルブミン、1.5AGなどの検査指標を使います。治療薬は近年、次々に開発が進み数種類の内服薬があります。
 注射剤はインスリンやGLP−1があり、病状によって組み合わせて使い血糖をコントロールして合併症を防ぎます。健診で血糖が高いと言われたら放置せずに近所の内科を受診してください。