ある若い男性A氏が、腰痛のため整形外科を訪れました。すると、検査の結果「今のところ異常はありませんが、
中腰や重い荷物を持ち上げる動作は避けてくださいね。」と言われます。A氏は困りながらも「はい」としか言え ず、帰りました。A氏の職場は部品製造業を営む町工場です。部品の詰まった籠を持ち上げて薬品に漬けるなど、 中腰で重量物を取り扱う作業が多くあります。従業員が少ないため休むこともできず、皆忙しいのに「腰が痛い」 なんて言い出すこともできません。A氏は腰痛を我慢しながら働きました。でもそのうちにだんだん、仕事に行く のが憂うつになってきてしまいました。産業保健師は、作業内容や動作、作業環境を観察した上で、対策を考える のが仕事ですから、職場訪問は欠かせません。その際単に視察させていただくだけでなく、職場の方々とのよい人 間関係を築くことも、共に対策を考えていく上で重要です。 このA氏の例の場合、職場訪問をした上で、作業員全員による会議を開いていただくよう働きかけました。 その結果、腰に負担のかからない動作を皆で心がけるようになり、腰痛体操や温泉旅行も企画されるようになりま した。それ以来A氏の腰痛は徐々に改善していき、それよりも何よりも、生き生きと仕事が出来るようになったの が嬉しいとのことでした。上司や同僚の「健康に対する理解」や「励まし、共感、情緒的支援」が思いのほか効果 的だったという事例です。(写真と文章の例とは関係ありません) |
かけはし誌上コラム(かけはし掲載分)
健康相談(インターネットかけはし特別コラム)